りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

道楽亭　瀧川鯉昇独演会「・・・・・・(ムムム？)」

落語

４／１８（木）、新宿道楽亭で行われた瀧川鯉昇独演会「・・・・・・(ムムム？)」に行ってきた。
会場は小さな飲み屋さん。そこに高座をこしらえて、小さな丸い椅子を並べている。
こんなに近くで見られるのは初めてで、席に着いてからつい顔がにやけてしまう。こんなに近くで見られるなんて。うれしい…。

・武助馬
・辰巳の辻占
〜仲入り〜
・宿屋の仇討

出てくる鯉昇師匠の邪魔にならないようにと身体をちょこっと左に寄せる。それぐらい近い。
天井を気にしながら高座に上がった鯉昇師匠。それだけで笑いが起きる。

売れっ子の談志師匠や小三治師匠は新幹線のドアが閉まるか閉まらないかのところを駆け込むというようなことを好んでやっていたようですけど、自分は還暦になってますます無理をしなくなりましたと。
もう階段を駆け上がったり焦ったりしたくないから何でも早めに出かけるようになった。
おとといは喬太郎師匠のＢＳ１１の番組の打ち合わせがあって行ったけど打ち合わせはほんの２０分ぐらいで終了。そのあと飲みに行って８時間。明るい店や暗い店やいろいろ行ったけどもう記憶ももやもや。
ものの順序っていうのも最近わからなくなってきて、昔は飲み屋に行ったりするとまずおしぼりで顔やなんかをこうして拭いて、それからしばらくして宴が進むとそのおしぼりでテーブルを拭いたりしていたんだけど、どうもおとといはテーブルを拭いたあとに顔を拭いてしまったらしい。次の日起きると目が真っ赤に腫れている。眼医者に行って理由を聞かれたけど恥ずかしいから言えなかった。
そういう目だとお客さんが心配をしてくれて聞いてくるけど、心配してるけどそんなに親身になってるわけじゃない。この距離感がいい。

自分が子どもの時分はヒーローと言ったら月光仮面。
風呂敷をマントにして顔をかくして目だけ見せて。最初から自分の事は自分でよくわかっていたから主役をやれるような人間ではないと自覚していたんだけど、月光仮面みたいに目だけ出すと妙に似合うって言われて自分でもそうかなーって思って。
高校で演劇部に入ってそれだけじゃ飽き足らずオーディション受けて劇団みたいのに入って。受かったけど役は「ガヤ」ってやつでね。後ろの方で「そうだそうだ！」とかいうだけ。それを２年間やって。

ゆるい感じで話しているんだけど、本気で聞いているとシャレだったりして、そのさじ加減がたまらない。
そうやって転がされているうちに、まくらから噺に入っている。そしてまくらがちゃんと噺の助走になっている。さりげないけどちゃんとしてて気持ちいい。

１席目は「武助馬」。初めて聞いた噺。
気が利いていてお気に入りだった奉公人の武助が役者になって帰ってきて訪ねてくる。
旦那は喜んで鰻弁当を差し入れた上に、知り合いを連れて（脅して？）大勢で芝居小屋を訪れる。
役者になったといっても下っ端中の下っ端の武助。役は馬の後ろ足。前足役の先輩が昼間に酒をくらって酔っぱらっていて馬の張り子の中で放屁。狭い空間でおならは勘弁してくださいよ！なんて言いながら舞台に立つのだが、旦那が武助を応援して声をかけてくれる。
今まで舞台で声をかけられたことなんかなかったので喜んだ武助は…。

落語らしい脱力系のばかばかしい噺でもう楽しい楽しい。
鯉昇師匠は声を張ったりオーバーアクションをしたりはしないのだが、話し出すときにちょっと間を置いたり目をぎょろっとさせるだけで空気ががらっと変わる。素晴らしい。
お気に入りだった武助を応援してやりたい旦那の優しさや、それがうれしくて張り切る武助の気持ちがこちらにも伝わってきてなんともうれしい気持ちになる。

サゲのあと、そのまままた普通に話に戻る鯉昇師匠。
いやぁなんかほんとに落語っていうのは話芸なんだなぁ、としみじみ思う。そしてやっぱり落語は小さな会場でこうして顔を突き合わせて聞きたいなぁと思う。

２席目は「辰巳の辻占」。これは雲助師匠のを聞いたことがある〜。
この明らか愛のない女が面白い。あーはいはい、心中したいのね。もうメンドクサイわねぇ。まあいいわ、やっておきましょ。みたいな。
まぬけで間の悪い男が、雲助師匠版では結構ちゃっかりしていたけれど、鯉昇師匠版はどこまでもお人好しで、その違いがまた面白かった。

　 １０分ほどの休憩の後は「宿屋の仇討」。これは大好きな噺なのでこうして見られてうれしい！
私は志の輔師匠のが大好きでＣＤを何度も聞いていたんだけど、鯉昇師匠のもとても面白かった。
隣のお侍から「うるさい」と苦情が出ていると聞いて静かにしなくちゃとびびりながらもついついはしゃいで騒いでしまう弦べえさんたちがかわいい。

３席たっぷり目の前で見られて大満足だった。
この後希望すれば打ち上げにも参加できるという夢のような会だったのだが、人見知りなのでささっと帰った。
いつか打ち上げにも参加してみたいなぁ…。

鯉昇師匠の動画はあんまりアップされてないのね…。
本当に面白いんだよう！