なんらかの事情
- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/11
- メディア: 単行本
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「ああもう駄目だ今度こそ本当にやばい、というとき、いつも頭の片隅で思うことがある」第23回講談社エッセイ賞受賞『ねにもつタイプ』より6年。待望の最新エッセイ集。
前作よりさらに妄想度が上がり、これはすでにエッセイというジャンルではない気が…。川上弘美のエッセイを彷彿とさせる日常と非日常の境界の危うさは、読んでいてぞくぞくとして楽しくて癖になる。
プーチンの演説について、まだ気にしている自分がいる。
「同志ボリス・エリツィンと私は無二の親友でありました。何となれば、二人の間には”髪型が木彫りっぽい”という共通点があり」
ああもう駄目だ今度こそ本当にやばい、というとき、いつも頭の片隅に思うことがある。
今の自分とあの宇宙人と、どっちがよりやばいだろうか。
私も相当なぼんやりでどうでもいいようなことをいつまでもいつまでも考えているわけだが、それを職業にして昇華している岸本さんはすごい、えらい、うらやましい。
翻訳を極めていくと言葉に敏感になるのだろう。岸本さんはこういう領域に入ってしまったのかと、げらげら笑いながら少しだけ嫉妬した。
それにしても、すべてを興醒めにする「ごわす」は魔法の言葉…。