りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

Mt.RAINIER落語会「春風亭一之輔 独演会」

4/15(月)Mt.RAINIER落語会「春風亭一之輔 独演会」に行って来た。待望の一之輔師匠の独演会!
Mt.RAINIERは方向ド音痴の私でも地図を見て「ああ、あそこね」とわかるくらいわかりやすい会場だ。
会社からも近くてありがたい。
さらにワンドリンク付きってことで落語の前にビールが飲める!うほほーい!

会場はオサレなミニシアター風。
入口でコインを渡されて飲み物を取りに行くなんてまるでライブのようじゃないか。
しかしライブと違うのは飲み物を持って会場に入っちゃいけないと。なので入口付近の人通りの多いところで立ったままビールをぐびぐび。ちょっと落ち着かない。
まくらで一之輔師匠が「ワンドリンク付きで座席にはドリンクフォルダーが付いているにも関わらず会場内飲食禁止って!!」と言っていたが(わははは)たしかに…!

・一力「牛ほめ」
・一之輔「茶の湯
・一之輔「不動坊」
〜仲入り〜
・一之輔「子は鎹」

開口一番は一力さんの「牛ほめ」。
紀伊国屋ホールで見たのと全く同じだったのだが、あの時は結構ウケていたのにここではいまいちな反応?
ほんとに落語会ってもちろん噺家さん自身の噺自体も毎回違うけれど、お客さんによって雰囲気もまるで違う。特に前座さんへの反応って極端に違う気がする。
私はせっかく笑いに行ってるんだから惜しげもなく笑いたい方なんだけどね。ま、そもそも面白くなければ笑えないけどさ…。

一之輔師匠、第一席目のまくらはタイへ行った話。
生まれて初めてゴルフのコースへ出たと。直前に一度打ちっぱなしに行っただけの超初心者。
キャディさんが寺島しのぶに似た感じの「美人…?」って「ん」が上がる感じの女性。連れが一之輔師匠のことを「スーパービギナー」と紹介すると、しのぶが「ちっ」と舌打ち。いきなりチップをよこせという。よこせばそれなりに相手をしてやるぞという意味らしい。仕方なくチップをあげてコースをまわる。
なにせ初めてなので一之輔師匠が打つ玉打つ玉すべて右へ曲がっていく。それをしのぶが取りにいき、ほいっと投げてよこす。
打つ。右へ曲がる。しのぶが取りに行きなげてよこす。その繰り返し。
5ホールぐらい行ったらしのぶがさすがにイライラしてきて、打とうと構えていると「××××ニチカライレロ!」と叫ぶ。よく聞くと「チン○ンに力入れろ」と言っている。
言われたとおりにやってみると確かに上体がぶれずにまっすぐ飛ぶようになった。

もう面白すぎて会場も大爆笑。こんな話からどう落語に入っていくのだろうと思っていたら、「最近どうも噺に入るのが難しくて…真打になってからどうやって噺に入っていいかわからなくなって」って。
そんなこと言ったらますますハードル上がっちゃうよ、と思っていると、「根岸に…」と話し始めて「ああ、茶の湯!」と思った瞬間、客席からも同じ声が。それを聞いて「今、また茶の湯って言いましたね?またって…?」と一之輔師匠。

確かに私もこの間紀伊国屋ホールで「茶の湯」を見たところだったので「また」だったのだが、それだけに前回との違いが見えて面白かった。
って、なんか楽しみ方が通っぽくなってきたなぁ。なんちって。
一之輔師匠の「茶の湯」は、ご隠居がどこまでも品が良くて穏やかなのに反して定吉が極悪化していくのが面白い。
最初に「定吉や」と呼ばれたときはいかにも小僧らしく「へ〜い」ってやってきていたのが、回が進むごとに「へいっ!」って声が低くなっていく。
どこまでもばかばかしくておかしくて大好きだ。

2席目は「不動坊」。
私が初めて聞いた一之輔師匠の落語がこの「不動坊」だったので、こうして生で見られてうれしい。
大家にお滝さんとの縁談を持ち込まれた男が最初はぶすっとしていて冷静に見えたのに、大家が帰った途端、うれしくて浮かれ出すのがとてもおかしい。
湯へ行ってきれいにして来よう〜と出かけてみれば手に持ってるのは手拭いじゃなくてやかん。風呂でも浮かれて独り言に一人芝居。それを見ていた子どもが父親にといちいち報告するのがおかしい。
また自分たちの悪口を言われて怒ったお滝さんファンの3人衆が、近所に住んでる万年前座の落語家に応援を頼んで、幽霊の真似事をしようとするのだが、この前座が幽霊の恰好をして出ていくときに「お先に勉強させていただきます」と前座らしい挨拶をするのがたまらない。
一之輔師匠のふてぶてしさとスピード感がこの噺にぴったりマッチしていると思った。

仲入り後に登場した一之輔師匠、前半結構な熱演だったから少々お疲れ気味?
「私は人情話っていうのが苦手で」とまたまたぶっちゃけモード。「だいたいそううまくいくかよ?と思っちゃうんですよね。そりゃそうだったらいいなとは思いますけど、そうはいかないでしょう、現実的には。これもいい噺だなぁとは思うんですけど、ねぇだろうなぁと思っちゃうんですよ。だから何回かやってますけど毎回これが最後になるかもしれないなぁと思いながらやってるんですけどね」。
また自分でハードルあげてるよー。こういうところがふてぶてしいと言われる所以なのだろうが、いつも逃げ腰な私からすると男らしくて素敵!って感じだ。

ネタ出しされていた「子は鎹」。
一之輔師匠の金坊は生意気だ。生意気だけどかわいい。
かわいくて生意気盛りのお子さんがいるせいなのだろう。とてもリアルでかわいい。
お父さんに会ってお小遣いをもらって黙っていようと思っているのだが、お金が見つかっておかあさんに誰からもらったのか言えと責められる。責められた時に「おいらは言わないんだ」としか言わないのだが、頑なに言わないと決めている子ども心が伝わってくる。そこがとてもいい。
鰻屋で久しぶりに奥さんと再会して「面目ないけどもう一度やり直したい」と涙を浮かべるくまさん。あんなにまくらで「苦手」と言っていたのに参ったなぁ…思わずもらい泣き。

今まで雲助師匠、文左衛門師匠の「子は鎹」を見てきたのだが、一之輔師匠のもとてもよかった。
苦手と言わず、こういう噺もやってほしいもの。

3席たっぷり見られて大満足だった。
「Mt.RAINIER落語会」は広瀬和生さんプロデュースの落語会。第一回が一之輔師匠で、第二回が白鳥師匠&喬太郎師匠。こちらももちろん行くつもり。

お。「不動坊」あった。あと一之輔師匠の「あくび指南」。これも大好き。