りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家喬太郎みたか勉強会【夜の部】

3/9(土)、三鷹市芸術文化センターで行われた「柳家喬太郎みたか勉強会 夜の部」に行ってきた。
少し前に同じ三鷹市芸術文化振興財団主催の喬太郎師匠の独演会のチケットを買おうとしたときに、まさに開始と同時に売り切れ!という経験をして、ムキー!!となった私。
会費もそれほど高くなかったのでこちらの有料会員になったのである。おかげで会員優先予約で無事にチケットを入手できた、というわけ。
会員になろうと電話をしたとき、係の人に「どちらの公演が目当てですか?」と聞かれて「3月の喬太郎師匠の独演会です」と言ったら、「でしたら1月に入ってから会員になられた方がいいですよ。チケット売り出しが1月ですから」と言ってくださった。なんて親切なんだろう…とちょっと感激したのだが、いやほんとに感じのいいホールだった。

受付にはクロークがあって、荷物やコートを預かってくれる。
そして開演前に公演についての注意があるのだが、これがとても気が利いていて。
「携帯電話の電源をお切りください」はどこの会場でもあるけど、「音を出さずにメールチェックをしていても文字が光って案外気になるものです。」「コンビニの袋や本屋の袋は公演中に思わず触ってしまうとカサカサと音がして意外と響きます」「あれこれうるさいことを申して申し訳ございません」と、ユーモアたっぷりの語り口に会場からは思わず笑いが漏れていた。
喬太郎師匠も「公演前のアナウンスもそうですけど、本当にどこからどこまでも気を使ってくださる素晴らしい会場なんです」とおっしゃっていた。
素晴らしい!

開口一番 柳家喬太郎まんじゅうこわい
柳家喬四郎「厩火事
柳家喬太郎「提灯屋」
〜仲入り〜
柳家喬太郎「雉子政談」

幕が開いていきなり登場したのが喬太郎師匠。
プログラムにはさん坊と書いてあったのになぜ??と思っていると、「今日はさん坊は出ませんよ」と言う喬太郎師匠。
「あのね。頼んだつもりでいたんだけど頼んでなかったんです、前座。昨日の夜に”あしたはよろしくね”ってメールしたら、血相変えて電話してきて、”聞いてません!!”って言われて。だから前座は私がやります。」
これに会場は大拍手!すると「なんでもかんでも拍手すりゃいいってもんじゃないんですよ」と苦笑いの喬太郎師匠。
この日は昼と夜の2部構成だったので、なんと今日一日で6席やることに。スゴイー。

喬太郎師匠の「まんじゅうこわい」はこの間BS11の芸賓館で見たのだが、あの時より面白かった。
こういう噺って案外難しいような気がする。筋が見えてるだけに丁寧にやりすぎるとだれるし、あっさりやりすぎると「だからなに?」になりがち。
まくらでホワイトデーやコンビニのありがちなケーキや若い頃に亀谷でバイトした話をされたのだが、そのまくらとからめながら爆笑ネタにしていて見事だった。、

喬四郎さんは今度真打になるらしく、そのあと出てきた喬太郎師匠が一門あげて応援していきますとおっしゃっていた。
厩火事」はもともとあまり好きな噺じゃない。なんか女房を働かせて昼間から酒飲んでる亭主も嫌だし、そんな亭主と毎日けんかをしながらも実は惚れていて、「別れたい」と大家に相談しながら大家が「私はあの男は好きじゃなかった」と言われると途端に亭主をかばいだす女房もめんどくさい。
しかも結局のところ、亭主が今でも自分に惚れているかを確かめたいって…けっ、ばかばかしい。

という噺自体が好きじゃないってこともあるんだけど、正直あんまり面白くなかったなぁ…。ちょっとテンポが悪かったんじゃないでしょうか…ってわかりもしないのに失礼!でも周りの人も集中力が途切れている感じがした。

喬太郎師匠の「提灯屋」は、町内の若い衆にどんどん提灯を持っていかれてすっかり柄が悪くなった提灯屋さんがおかしかった。
でも私はこれは、若い衆がなんともいえず可愛かった小三治師匠の方が断然好きだな。

そして仲入り後の喬太郎師匠の「雉子政談」。小泉八雲作品を喬太郎師匠がKAAT式らくごの会〜文学しばり〜のために落語に仕立てたものらしい。
前半の貧乏だけどコツコツ働いて仲睦まじく暮らしていた夫婦の情景が、雉が家に間違って入ってきてしまった後の夫の行動からがらっと変わっていくところが見事で、それまで小さなくすぐりに笑っていた会場がシーンと静まり返った。
開き直って「呪ってやる」とすごむ男の狂気の視線が心底恐ろしく、見ているこちらまで呪いをかけられるよう…。
素晴らしかった。今まで見た喬太郎師匠の中で一番よかった。