りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小満ん・喬太郎の会

2013/2/20 銀座ブロッサムで行われた小満ん・喬太郎の会に行ってきた。
楽しみにしていた会だったのが、この日は自分の体調が最悪。
お昼に食べた天丼がまずかったのか、その後に飲んだ胃薬が古かったのが悪かったのか、会場に着いてトイレにこもる…。お腹が痛いのも辛かったけど、なによりも吐き気が辛かった…。
楽しいはずの落語がいっきに苦行の時間になってしまい、最後のほうは「早く終われ」と願う始末。
ほんとに演者の方には申し訳なかった。でもとりあえず粗相をしなくて良かった…(そんなレベル…)。

そんな体調最悪の状態だったっていうこともあるのだろうが、どうも楽しみにしていた喬太郎師匠が精彩を欠いていたような気がしてしまった。
私のような落語を見始めて数か月のど素人がこんなことを言うのもなんなんだが、忙しすぎるんじゃないだろうか…なんて余計なお世話ですね、ほほほ。

・開口一番 柳家さん坊「つる」
柳家小満ん 「夢金」
柳家喬太郎 「錦の袈裟」
(仲入り)
柳家喬太郎 「白日の約束」
柳家小満ん 「寝床」

・さん坊さんの「つる」。
これは前にどこかで前座さんがやった気がするんだけど、これってすごーくわかりやすい間違いの話だから、ゆったりやられるとなんか眠くなってくるっていうかだるくなってくるっていうか…。体調がいまいちだったこともあって(いやそれが大きかったとは思うが)、もっととっととやらんかい!と思ってしまった。
こういう噺で爆笑させられたら逆にすごいよなー。

・小満ん師匠の「夢金」。小満ん師匠は前にテレビで見たことがあるんだけど、爆笑系というよりは粋って感じで、まだまだ私にはハードルが高いなぁ…と思っていたのだ。
しかし実際に見てみたら、かっこいい!
力の抜けた佇まいがものすごくかっこよくて、声がまたなんともいえず少し低くて艶っぽくて素敵。

「夢金」というのは初めて聞いた噺だった。
船宿で働いている熊五郎はいつも金を欲しがっていて今夜も「100両!」と大きな声で寝言を言っている。
あんな大声で寝言を言われたら、お金があると思われて危ないったらないよと主人が心配していると、戸を叩くものがいる。
恐る恐る開いてみるとそこには侍がいて、妹と旅しているのだが船を出せと言う。
こんな雪だから金ははずむと言われて喜んで船頭を買って出た熊。
2人を屋形船に乗せて船を漕ぎ出すのだが、なかなか金を出してくれない侍に苛立ってぶつくさ独り言。
そうしているうちに侍に呼ばれいそいそと行ってみると、実はあれは妹ではなく赤の他人だという。たまたま助けたのだが懐に200両の金を持っていることがわかったので、二人で殺して金を山分けしようと持ちかけられる…。

知らない噺だったのでどういう展開になるかわからずドキドキしながら耳を傾けていると、思わぬ展開でうぉーー。そしてさらにオチが最初に戻るという私の大好きなパターン。
ところどころ聞き取りににくいところもあったのだが、雪が降る中屋形船を漕いでいる男、訳ありそうな男女の姿が目の前に浮かんでくるようで、落語を聞いているということをしばし忘れた。すごかった。

喬太郎師匠の「錦の袈裟」。これは大好きな噺。
この与太郎のおかみさん、好きだなぁ、といつもこの噺を聞くと思う。
吉原に行くって言われて喜んで送り出すかみさんがどこにあるかい!って叱りながらも、これで行かさないとあたしの了見が狭いって言われるんだろうよ、悔しいねぇ!と言って、じゃあいいよと送り出すのが面白い。
さらに錦の袈裟を自前で用意しなきゃいけないと聞いて、じゃあ坊さんのを借りてきな!と算段するのもおかしい。
こういうのを聞くと、昔の人はおおらかだったんだなぁ…と微笑ましくなる。

喬太郎与太郎バカボンみたいでかわいいんだよなぁ。
でも私がこの噺で一番おかしいのが、女郎の頭みたいな女が「あれはお殿様だよ」と訳知り顔でに説明するところ。なんかこういう勘違いが本当にかわいい。
大爆笑で満足だった。

喬太郎師匠の「白日の告白」。これはなぁ…うーん…。確かにホワイトディ近しってことでタイムリーなのかもしれないけど、喬太郎師匠の新作の中でこれはなんかそんなに好きじゃないんだなー。
なんかせっかく新作なんだから、もっとぱーーーっとはじけてほしい、個人的には。私の大好きな諜報員メアリーぐらい…。
って小満ん師匠との二人会で諜報員メアリーはありえないけど。
なんとなくコンパクトにまとめられちゃったかな、っていう寂しさが…。

・小満師匠の「寝床」。
これも大好きな噺。
これっていわゆるジャイアンリサイタル(笑)。
義太夫に凝った大家の旦那が長屋の住人を集めて自分の義太夫を聞かせようとするんだけど、それが酷い義太夫なもんでみんながあれこれ理由をこしらえて断る。
最初は「仕事じゃしょうがない」「具合が悪いんじゃしょうがない」と言っていた旦那も、あまりに誰も彼もが断ってくるのでさすがにこれはみんな聞きたくないのだなと気付いて気を悪くして「だったら長屋を出て行ってもらう!」と怒り出す。
これはまずいとみんながのそのそ集まってきて、どうしても旦那の義太夫が聞きたいんだ、ちょっとだけでも聴かせてくれ、と頼み込むと、すっかり気を良くした旦那が義太夫を披露する…。

この噺の大家がとてもいい人なのだ。
みんなに聞かせるためにちゃんとお酒や食事やお菓子を用意して振舞う。
自分の義太夫が上手だと思っているわけじゃないんだけど、自分が大好きなのでみんなも好きだろう、聞きたいだろうと思っている。
そして長屋の人たちもそういうところはちゃんとわかっているのだ。
小満ん師匠は長屋の住人たちに「ほんとにいい人だよねぇ、この大家は」「なのに義太夫だけはねぇ…。これはこの家に憑いてるんだな。」なんて言わせていて、笑ってしまった。

そして私の吐き気も実はこの噺の時に最高潮に達してしまい、大家さんの義太夫早く終わってーーーと祈っていたのであった…。ある意味私も長屋の住民気分を味わえたってことで…。

ところでこの会の時、私の隣に座ったおじさんがもう最初から最後までずーーーっとスマホをいじっていてそれが不愉快だった。
さすがにしゃべったり音を出したりはしていなかったけれど、5分おきぐらいにスマホを取り出してメールチェック。あかりがちらちらするのが気になって気になって…。
そんなにスマホいじりたいなら落語に来ることねぇだろうが!!と血管切れそうになった。
途中から気分が悪くてそれどころじゃなくなったけど…。
ほんと、いろんな人がいるもんだ。