りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治 一門会(練馬)

2月14日、練馬文化センターで行われた柳家小三治 一門会に行ってきた。
一般発売が始まってかなり時間もたっていたので、席は限りなく天井席だったのだが、生の小三治師匠の落語が聞けるということでうきうきわくわく。オペラグラスを持って出かけて行ったのであった。

【演目】
・三之助「道灌」
・〆治「池田大助」
〜仲入り〜
・三三「転宅」
小三治甲府い」

三之助師匠はインターネット落語会でもおなじみ。なぜか勝手にかなりのベテランの人と思い込んでいたんだけれどまだ真打になって3年目だったんだね。なぜにそんな思い込み…。
きちんとした落語だなぁという印象だったが、なんとなく少し固い感じがあったかなぁ。

「池田大助」は、知ってる噺だった。「佐々木政談」だ!
〆治師匠は小三治師匠の総領弟子なのだね。小三治師匠がこの間読んだ「ま・く・ら」に載っていた真打口上で、最初の頃の弟子にはかなり厳しくしてしまい、今思うと申し訳なかったな…という気持ちでいっぱい、と語っておられたが、きっと〆治師匠なんかはその最たるものなのだろう。
私がこの噺を知ったのが志の輔師匠の落語でだったせいか、それに比べると地味に感じてしまった。

出てくるなりまくらもなしに話し始めた三三師匠。うおー、なんか華があるっていうか惹きつける力があるっていうか私の好きなタイプの噺家さんだ。
女性の艶っぽさとどろぼうのお人よしぶりの対比がとても楽しい。そして本格派と呼ばれているらしいが、何気ないくすぐり(「うちは由緒正しいんですよ。桃月庵なんかとは違います」)が面白かった。

そしてついに待ってましたの小三治師匠。
楽しみにしていたまくらはなしで声もかすれ気味で体調がよくないように見受けられ少し心配…。
甲府い」という噺は初めて聞いたのだが、ネットで調べてみると最近小三治師匠がよく高座でかけている噺のようだ。

豆腐屋の店先でおからを盗み食いした若者をお店の若いものが袋叩きにしているのを見つけた主人は、「いくら店のものに手を出されたからと言って殴ったりしたいかん」と若者をかばう。
何か事情があるのだろうと主人が聞いてみると若者は善吉と名乗り、両親を失って叔父叔母に育てられてきたのだがあまりに世話になるのも悪いと思い、甲府から出てきたばかりなのだという。
3年は帰らない覚悟で出てきたのだが、浅草でお参りをしていたら有り金をすべて擦られてしまい、なすすべもなくさまよっていたが、あまりにお腹がすいて我慢できずにおからに手を出してしまったという。

気の毒に思った主人は善吉に夕飯をごちそうした上に、「うちで働かないか」と持ちかける。
善吉は毎日「豆腐ィ、胡麻入り、がんもどき」と豆腐を売り歩き、近所のおかみさんや子どもにまめに声をかけ重いものがあれば持ってやりと気が利くのでたちまち評判になり、売り上げはうなぎのぼり。
3年たったある日、主人とおかみさんは働き者で宗旨も合う善吉を娘の婿に…と考えて話をもちかけると、善吉も快諾。

それからある日善吉が甲府にお礼参りとお墓参りに行きたいと言うので、主人とおかみさんは娘のお孝も一緒に里帰りに送り出す。

盗み食いした善吉を責めるでもなく話を聞いてやる店の主人。こういうところが落語で一番好きなところだなぁ。
今だったら「盗みをした」というその一点で理由なんか聞くことなく犯罪者扱いするところだが、落語の世界では必ず理由を聞いてやる。そして話を信用して「それは気の毒だったな」と言って、家にあげて「食べたいだけ食べろ」とごちそうする。

笑いどころは少ないし地味な噺なのだが、小さな豆腐屋や頑固だけど人情味あふれる主人の顔が浮かんできて、じんわりあたたかい気持ちになる。
この日の小三治師匠は声もかすれていて、さらに途中「善吉」の名前を言い間違えるなんてこともあって、往年のファンの方の中には不満を感じられた人もいたようだったけれど、なんといっても私にとったらはじめての生小三治!その姿をこの目で見られたことがなによりもうれしかった。

また生小三治師匠が見られますように!!