りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ことり

ことり

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★★★★★

世の片隅で小鳥のさえずりにじっと耳を澄ます兄弟の一生。図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて歩く老人、文鳥の耳飾りの少女との出会い…やさしく切ない、著者の会心作。

とても静かで寂しいのに不思議な多幸感に包まれた作品。読んでいる間ずっとひたひたと幸せだった。
人間の世界は音が多すぎて刺激がありすぎて、鳥の声に耳をそばだてる兄弟には非常に生きづらい世界。ただただ息を潜めて兄の想い出や密やかなさざ波のような誰かとの接触を宝物に慎ましく暮らしてきたことりのおじさん。
怪我をしたメジロはそんな彼への神様からの贈り物だったのだと思った。とてもとても良かった。