りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

新春 落語教育委員会 柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎 三人会

1/25(金)渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで行われた落語教育委員会に行ってきた。
人気公演ということもあって席がとっても天井…。これは落語をやるにはあまり向かないホールだなぁ…。しょぼん…。

柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎「コント〜刑事殉職編」
・春風亭一蔵『猫と金魚』
柳家喜多八『やかんなめ』
〜仲入り〜
柳家喬太郎『小政の生い立ち』
・三遊亭歌武蔵『胴斬り』

・コント〜刑事殉職編
落語教育委員会名物のコント。犯人(歌武蔵師匠)を追ってきた刑事(喜多八師匠)が銃で撃たれ、モップを片手に倒れこむと、それに遅れて後輩刑事(喬太郎師匠)が。
「先輩!!先輩!!」喜多八刑事に覆いかぶさる喬太郎刑事。そこに携帯の着信音。
いきなりすっと立ち上がった喬太郎刑事。携帯に出ると「あーーおれ。うんうん…。そんなことねぇって。そんなことねぇよ」と話し始める。
足をバタバタさせて苦しむ喜多八刑事を尻目に携帯でべらべらしゃべる喬太郎刑事。

「携帯を切ってね」と伝えるためだけのぐだぐだのコント。
喜多八師匠がひっくり返って足をバタバタさせてる姿が面白いやら気の毒やら…。

・春風亭一蔵さん
「二つ目になりました〜!」とうれしそうに報告されて拍手拍手。
「みなさんはもうさすがにお正月気分は抜けられた頃でしょうね。でも僕はまだ正月気分です。だって正月あけてようやくこれが二回目のお仕事ですから」。

それを聞いてこの間聞いた喬太郎師匠のまくらを思い出した。
「前座から二つ目になるっていうのはうれしいんですよ。すごい解放感で。でもね。喜んでいられるのはいまだけです。これからは仕事のない地獄が待ってますから。へっへっへ」。
何かのインタビューで喬太郎師匠が、断ったら二度と仕事がもらえなくなるんじゃないかと思うと、来た仕事を断ることがどうしてもできない、と言っていた。
そうなんだろうなぁ…。これからが勝負なんだろうなぁ。がんばってほしいもの。

柳家喜多八師匠
向島に遊びに来ていたら奥様が癪を起して倒れてしまう。癪を起したときこの奥様はやかんをなめればすぐに治るのだが、ここにはやかんなどない。あわてた女中がどうしたらいいかとあたりを見渡していると、お供のものを従えて談笑しながら歩いてきたお侍。見事な坊主頭でまるでやかんのよう。これをなめさせてもらえば奥様の癪が治るのではないかと思った女中は恐る恐る侍に話しかけて…。

気のいいお侍が女中に「お願いがございます」と言われ、「おお、わかった。みなまで言うな。俺に任せろ」とあれこれ言うのだが、そのたびに女中に「いえ、そういうことではないのです」と言われ、「はて…では?」となるのがおかしい。

よろよろっと登場して脱力系のまくら。しかしいざ噺に入るとよく通るメリハリのある声。なるほどこのギャップに女性はころりといってしまうわけだな。
私もきっところりといってしまうだろうと思っていたのだけれど、あまりにも遠くてころりといきそびれた…。今度はもう少し近くで見てみたい。

柳家喬太郎師匠
コントの時に「あれ?声?」と思っていたら、やはり風邪をひかれてしまったらしい。
まくらで、この日の昼間には幼稚園寄席をやってきたといって、これがおかしかった。
最初はおかあさんたちの前で一席、それから園児たちが入ってきてもう一席やったのだが、おかあさんといってもまだ若くてきれいな人妻。それがおしゃれしてかわいい顔して座っている。中には落語が好きで楽しみにしてきている人もいるけど、そのうちの何割かは「はぁ?落語?なにそれ?」みたいな人たち。
その人たちにうけなきゃいかん!と軽い小話みたいのをやったら、どっかんどっかんうける。
落語も最初は「ええ?」みたいな顔をしていた人たちがだんだん前のめりになってきて大笑いしている。
その姿を見て「落としてやったぜ」と内心ガッツポーズ。「いや落としたわけじゃなくて笑ってもらっただけなんですけどね」と。

それからいったん引っ込んで子どもたちが入ってきて先生が「さーみんな、昨日先生が言ったこと覚えてるかなぁ?」「おぼえてるーー」。
「練習したこと覚えてるかなぁ?」
「おぼえてるーー」。
「じゃあ、喬太郎さんが出てきたらなんていうのかなーできるかなぁ
「できるーーー」
「じゃ、やってみようか。せーの!」
「待ってましたーー!」

ぶわはははは。もう大爆笑。
まくらでさんざんやんちゃを言ったあとは、なんと人情噺。声がかすれていたのが少し残念だったけれど、小生意気だけど生命力のある「小政」は実に魅力的だった。

・歌武蔵師匠
今回一番面白かったのが歌武蔵師匠の『胴斬り』。
湯帰りの男が辻斬りにあうのだが、よっぽど上手に斬ったらしく、上半身が天水桶の上に乗っかった状態で元気に生きている。
もともとぼーっとした男なので下半身に「おーいこっちに来いー」と声をかけ、知り合いが通るのを待っていると、そこに兄貴分通りかかる。
兄貴分は驚きながらも上半身はおんぶし、下半身は褌を引っ張って家まで連れ帰ってくれる。
次の日家に来た兄貴分は男の上半身を湯屋の番台に、下半身には蒟蒻屋で蒟蒻玉を踏む仕事を紹介してくれる。
こうして男は上半身、下半身が分かれた状態で生きていく…。

私が好きな奇想小説のような内容で「これは新作?」と思ったのだが、まさかの古典。
やーー、古典落語侮れん!こんなシュールな発想があったなんて。ブラボーだ。

最初のコントも含めてとても素晴らしい会だった。
だけどこの会場はなぁ…。声が聞き取りにくいところもあってちょっとさみしかったなぁ。