りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場正月二之席・夜の部

1/16(水)会社を休んで鈴本演芸場の正月二之席・夜の部へ行ってきた。
夜の部は17時開場。1時間前ぐらいに行って並べば大丈夫かなと行ってみると、心配していたような行列はできていない。おじさんが一人立っていたのでこの人の後ろに並べば大丈夫だね!と並んでみた。
するとそのおじさん、携帯が鳴ったと思ったらすぃ〜っとその場を離れてしまうじゃないか。あれ?並んでたわけじゃないの?
おーーい!おれを置いて行かないでー。

1人で並んでいるのもバカみたいだと思い、となりのTSUTAYAに入る。本屋にいれば時間なんかあっという間にたっちゃうさ、と思ったのだが、置いてある本や売り場の感じがなんともシュミに合わなくてイライラ。なんか腹立つ本屋だなぁ。
仕方がないのでTSUTAYAを出て向かいのBOOK OFFへ。
演芸場が近いから落語のCDやDVDがたくさんあったりして?と期待したのだが、そうでもない。
また演芸場から少しだけ離れているので、こうしている間に行列がどんどん伸びていたらどうしよう、となんだか心配になってきた。
そそくさとBOOK OFFを出て見てみたが、まだ行列はできてない。
仕方なくファッションビルのようなものの中に入ったのだが、置いてある服のギャル度が高い上にさびれ感が…。
うろうろ見る気力もわかず、そそくさとビルを出て、クレープでも食べて時間をつぶすか…と思っていると、演芸場の前に初老のすてきおじさまが二人たたずんでいらっしゃる!
おおっ、あきらかに常連!ついに集まりだしたか!

うはうはと演芸場に戻ってみると、おじさま二人は入口に並ぶとはなしにたたずんでおられる。
この方たちを差し置いて並ぶのもなんだか…よねぇ…。と思い、おじさま二人の後ろにさりげなく立ってみる。
こ、これで並んでることになる?いやでもちょっと場所的に違う感じ?
もう少しこの人たちがフレンドリーな感じだったら話しかけてみても…なんて思ってチラチラ見ていたのだが、明らかに私のことはアウトオブ眼中。ちぇっ。

するといかにもまた常連げな女性が入口前にいた若い男性の後ろに並んだ。
おお、やっぱり行列はそこに作っていくのか!じゃ私はその後ろに付こう。
並んで本を読んだり携帯をいじったりしていると、いきなり頭上でどんどんどんどんどんどん!!!!!
ひぃーーなにーー?と見ると、いなせなお兄さんが太鼓をたたいているのである。
こ、こんなところにいつのまに!!
と思っているとドアが開いてお客さんが次々出てきた。
そうか。昼の部が終わってハネ太鼓ってやつだ!

そうこうしている間にいよいよ入場。
おおおお、3番目に入場しちゃった。どこでも座れちゃう。どうしよう。
今までホールの後ろの方しか座ったことがないから、これはやっぱり真ん中の真ん前で見たいよね。
と思い、2列目のど真ん中に座る。

携帯の電源も切ってどきどき待っているといよいよ開演。
前座で出てきたのは、おおっ!さっき太鼓をたたいていたいなせなにーさんじゃないか。若いしイケメンだし声もいい。
花どんという方で「金明竹」。おおっ、知ってる噺だ。
前座でこんなに楽しいってことはこれからもっと上手な人が出てくるってことだね!とうれしくなる。

【演目】
・花どん「金明竹
・さん弥「権助提灯」
・ダーク広和「奇術」
・左龍「粗忽長屋
・さん生「亀田鵬斎
・にゃん子・金魚「漫才」
・彦いち「長島の満月」
・馬石「干物箱」
〜仲入り〜
・小菊「粋曲」
・琴調「度度平住み込み」
・ホームラン「漫才」
喬太郎「うどん屋」

さん弥さんの「権助提灯」。この噺は前に喬太郎師匠の芸賓館で見たことがある。権助の間が抜けているようでいながら的を得た毒舌がなんともいえずおかしい。

ダーク広和さんは愚痴っぽいのが芸風なのかやたらとこぼしながらのカード奇術。ネガティヴなトークとは裏腹に手さばきはとても見事だった。
1列目のお客さんが指名されてピストルを撃っていたけど、いやぁ…1列目に座らないでよかったよ〜。私がやったら絶対当たらないよ〜。ってそれもマジックなの?

前から見たかった左龍師匠。
なんといっても様子がいい。出てきただけで「面白い」オーラが出ている。
話し始めたらとても穏やかな口調なのだが、えも言えぬおかしさが漂っていて、おおおっとなる。
しかも「粗忽長屋」。私は熊さん八さんが出てくる噺に目がないのだ。こういうバカバカしい噺が一番好きだなぁ。

さん生師匠の「亀田鵬斎」。これがとても良かった。
名人とうたわれながらも偏屈なため貧乏暮らしをしている書家の亀田鵬斎
そんな鵬斎の家に迷子になった孫を助けて連れてきてくれたのがおでん屋の平治。亀田鵬斎がどんなにすばらしい書家かということも知らない平治に、お礼がしたいと言って鵬斎は屋台の提灯に「おでん燗酒 平治」という書を書いてやる。
書の価値などはわからないのだが、この提灯をぶらさげて商売をしていると客入りがよく、ある日「これは亀田鵬斎の書じゃないか!いただいてくよ!」と1両置いて持って帰った客がいた。
おでんは売ってるけど提灯は売ってないからもらったお金は返すよと鵬斎の家に1両を払いに行くと鵬斎は「あれはお前にやったものだから」と受け取らない。押し問答の末、鵬斎はお金と引き換えにまた書いてあげるのだが、今度は屋台ごと持ち帰られてしまい…という噺。

提灯を奪って行った武家が、この提灯を軸に仕立ててお客さんに自慢するのがおかしい。
そして名人の気難しいけれど実直な人柄と、おでん屋の柄は悪いけれど正直な人柄がにじみ出て、とても後味がいい。
こういう噺は落語ならではでとても好きだ。

彦いち師匠は前に昇太師匠の独演会で見たことがある。
大学時代にコンパに行って同世代あるあるで盛り上がる中自分だけはあまりにもど田舎で育ったため話に入って行けなかった、という新作落語
給食で揚げパンが出たとか牛乳に入れるコーヒーの粉が出たとかいう話にまるで交われず、おれのところでは漁師さんが大漁だと刺身を差し入れてくれたんだけどそんなこと言えねぇ…と黙ってしまうとかいう話で、「いやでもそっちのほうが面白いからコンパで話せば良かったのに」なんて普通に思ってしまったのだった。

隅田川馬石師匠の「干物箱」
桃月庵白酒師匠を見たかったので代演と聞いて少しがっかりしたのだが、初めて見る馬石師匠が品が良くて丁寧な落語で好みだったので良かった!

粋曲ってなに?と思っていたのだが、三味線を弾きながら歌を歌い、お客さんのことも少しいじって笑わせて…ということらしい。
こういう風流なものは苦手なんだよーと思っていたのだが、とてもきれいな女性でお客いじりも上手でうっとり。
そしてさすがに講談はあたしには無理だよーと思っていたのだが、それも十分楽しんでしまった。そもそも私は「お話」が好きなわけで、そこにもってきて魅力たっぷりに語られたりした日にゃぁ「うんうん、それでそれで?」とあっという間に引き込まれてしまう。
続きを聞きたい!と思わせる終わり方も見事だなぁ。
そしてホームランの漫才。これが爆笑ものだった。

そしてトリは喬太郎師匠。
出囃子が流れると、うぉぉぉぉ!!とうれしくなる。大好きな喬太郎師匠をこんなに間近で見られるなんて!なんたって前に見た時は限りなく2階席に近い1階席だったからね。
まくらではこのあいだとあるチェーン定食屋でチゲ鍋定食を食べたんだけど、メニューの写真には味噌汁が付いていたのに実勢には味噌汁が出てこなかった。別に鍋だから味噌汁はいらないんだけどでもなんか納得できない。だけど鈴本でトリをとってお世辞でも楽屋で「師匠」って呼ばれてるのにそんなちいせぇことで苦情言うのもいやだ。結局黙ってたけどくやしかった。なんて話。
もうずっとしゃべっていて!って思うぐらい面白い。

まくらが「なべ」ってことはもしかして?と思っていたらやっぱり「うどん屋」。かーっ、あたしもずいぶん喬太郎師匠に詳しくなったねぇ!と1人悦に入る。
最初の酔っ払いのくどいのと、ちょっとしたことで気を悪くしたかと思うと「いいんだいいんだ」といきなり笑うというような感情の振れ幅の大きさがおかしい。私も酔っ払うと何度も何度も同じ話をするらしいから、こんななんだろうな…。
そしてなんといっても鍋焼きうどんを食べてる姿がもう本当においしそうで…。お腹もすいてきてるからもう見ているだけでよだれが…。 明日のお昼は絶対鍋焼きうどんにしよう!と決める。(そしてほんとに食べた。)

というわけで、初めての寄席はそれはもう楽しくて大満足だったのだった。
しかしあれだね、席はもう少し後ろの方がいいかも。
とにかく演者の人とばしばし目が合うので気の弱い私はもうそれだけでキンチョーしちゃって疲れちゃった。
大好きな喬太郎師匠が近くで見られてミーハー心は満足したのだが、その鋭い眼光に「す、すみません」と謝りたくなる瞬間も…。
私の後ろに並んでいた玄人かほりぷんぷんの素敵おにいさんは、前の方の左側の席に座っていた。多分あそこだと出待ちしているところも見られるし、目がバチバチ合うこともないのだろう。
次からはそうしよう。(と言いながらゴーツクバリなのでいざとなるとやっぱりもったいない!とど真ん中に座ってしまうかもしれない)