りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

腰痛探検家

腰痛探検家 (集英社文庫)

腰痛探検家 (集英社文庫)

★★★★

他人の行かないところへ行き、他人のしないことをする、が信条の辺境作家。なんと腰痛に!地獄からの生還を期して地図なき旅が始まった。カリスマ治療師からも見放され、難病の可能性まで急浮上。画期的な運動療法で自力更生ルートを選んだり、はたまた獣医や心療内科の扉も叩き…。腰痛という未知の世界に迷い込み、腰痛治療という密林で悪戦苦闘。とことん腰痛と向き合った、前代未聞の体験記。

イスラム飲酒紀行」を読んで好きになった高野秀行さんのエッセイ。

腰痛はほんとにツライ。初めてギックリ腰になったとき、立っても座っても寝てても痛くて、もうオレはおしまいだ…と生きる気力を失いかけたことを思い出す。
腰は要と言うけれどほんとにそうなのだ。

前向きで凝り性でバイタリティのある高野さんは長年腰痛に苦しんできたのだが、ある時「よっしゃ!こうなったら評判の名医を徹底的に訪ね歩いて究極の治療を見つけ出そうではないか!」と本気で腰痛治療に立ち向かっていくのだが、そこにはまさに辺境の密林に入って行くのと同じぐらいワイルドで混沌とした世界が待っていたのである。

このままならなさはたしかに辺境探検に通じるものがある。
元気いっぱい前向きパワー全開の高野さんが徐々に鬱ともノイローゼともつかない状態に陥っていくさまが非常にリアルだ。
大胆でいて小心、頑強に見えてデリケート、そして下らなそうでいて案外本質をついているのが、高野さんのすごいところ。とても面白かった。