りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

七夜物語

七夜物語(上)

七夜物語(上)

七夜物語(下)

七夜物語(下)

★★★★★

小学校四年生のさよは、母さんと二人暮らし。ある日、図書館で出会った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。大ねずみのグリクレル、甘い眠り、若かりし父母、ミエル…七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は。

面白かった〜!
子どものころこういう物語が大好きで、リアルでは勇気の欠片もないくせにいざ冒険となったら自分は思わぬ力を発揮できるという妄想に耽っていたことを思い出した。

上巻の方は子ども目線でファンタジー色が強く、上巻で広げた風呂敷を下巻ではきちんと折り畳んだ印象もあって、もう少しファンタジー押しで行って欲しかったなぁとも思うけれど、でもきちんとおさまっていてそれはそれでよかった。

人間は白黒全然はっきりしてなくて、善悪の判断も結構曖昧で、好きと嫌いも実は裏表で絶対的なものではない。でもそのぐちゃぐちゃこそが人間なのだ。
こんなにすごい冒険をして並大抵ではない絆を深めたふたりがそれっきりになってしまうのは読んでいてちょっと寂しくなったけれど、それでも全てを失ってしまったわけではなく根っこになにか残っていてきっと味のある大人になれるのだろうと思う。

装丁も挿絵も素敵だし、川上さんの文章がとにかく読みやすくて美しくて素晴らしい。
家の本棚に置いておいて、いつか子どもらが読んでくれるようになったらいいなぁ…。