りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

悪童日記

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

★★★★★

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

かなりヘヴィなのだろうと覚悟して読んだのだが、思っていたのとは違う後味だった。
子供の日記という体裁で、どこまでも感情を廃した文章で綴られるのは、過酷な戦争で人の優しさのベールが剥がれ落ちてしまった世界だ。

生き延びるために人を殺めることも辞さない彼らは、子供だからこそのシンプルさと頑なさがあって、それがこの小説を独特なものにしている。
作者アゴタ・クリストフハンガリー生まれの作家で、フランスに亡命してからフランス語を学び、母国語ではなくフランス語でこの物語を書いている。そのこともきっとこの物語を説明の一切ない圧倒的なものにしているのだろう。

私のようなものがこの物語について語るのは腰が引けるのだが、とにかくものすごい力を持った小説。ブラボー(にもほどがある…)。