部屋
- 作者: エマ・ドナヒュー,土屋京子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/07
- メディア: 単行本
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今日はジャックの5歳の誕生日。ジャックはママと部屋に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。テレビを見るのが大好きで、アニメの主人公が友だちです。でもジャックは知っています。テレビに映るモノはホントのことではないことを。自分とママと部屋だけがホントのことです―ママが外の世界があることを教えてくれるまでは。誘拐され、監禁された少女に、子供ができてしまったら…。極限状況を生き抜こうとする人間の勇気と気高さ。
「部屋」で生まれ、それ以外の世界を知らないジャック。そんな5歳のジャックの視点から語られるので、前半はとても読みづらかった。
しかし中盤からは一気読み。まさかこんなふうに物語が進んでいくとは…。
監禁されていたときの生活はまさに地獄そのものなのだが、ママは懸命にジャックを守り、異常の中でできるだけきちんとした日常を送り、ジャックをきちんとしつけ、たっぷりの愛情を与える。
そのおかげでジャックは知的レベルも高く、優しくてとてもいい子に育っている。
そんな2人が「部屋」から出て行く日は来るのか?解放されるのか?
以下、ネタバレ。
ジャックの頑張りと幾つかのラッキーが重なって、無事に解放される二人。
外の世界に戻ってきて、フツウに考えればメデタシメデタシのハッピーエンドなのだが…。
外の世界は決して楽園ではなかった。それはもちろん解放ではあったのだが、何もかもから自由になることはできないのである。
人々の好奇の視線にさらされ、心無い言葉に傷つけられ、自分を見失っていくママ。
初めて知る「外の世界」に戸惑いを隠せず、「部屋」のなかでのママとの濃密な時間を恋しく思ってしまうジャック。
犯人は、監禁していた時間だけではなく、彼らの未来さえも傷つけてめちゃくちゃにしてしまったのだ。そう考えると本当に怒りがこみ上げてくる。
傷を負った彼らが完全に自由を得ることはできないのだろうと思う。
外の世界はうるさくて煩雑で面倒くさくて傷つけられもするけど、そうやって傷をおいながら、本当に大切な人を大切にしながら、生きていくのだろうと思う。
ラストがとてもよかった。