りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

九月が永遠に続けば

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

★★★★

高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。

「痺れる」「ユリゴコロ」と読んで、これが私にとってのまほかるちゃん三作目。 これがデビュー作とはあなおそろしや…。

夫に捨てられた佐知子は高校生の息子と2人暮らし。
ある日、別れた夫・雄一郎の娘の彼氏・犀田が自分の通っている教習所の教官をやっていることを知り、興味を持つ。
偶然が重なって犀田に近づくことができた佐知子は、いつしか彼と情事を重ねるようになる。
自分のそんな行動を不可解に思いながらもやめることができない佐知子。
そうしている間に、ある日息子の文彦が失踪する。
自分のせいで文彦は失踪してしまったのか?息子の行方を追っているうちに、明るく能天気に振舞っていた息子の別の顔が見えてきたり、次々と不幸が起きて…。

いやまぁとにかく一言で言えば嫌な話なのだ。
ストーリーもショッキングなのだが、細部に渡ってぞわぞわと嫌〜な感じが行き渡っているのである。
嫌なものを見てしまったときに感じるざわざわした感じ。ぞっとする肌感覚。だけどこれだけ嫌なのに、深いところで覚えがあって「わかる」んだよな…。そこがこの作家のすごいところだなぁ。
多分文章が細部に渡ってものすごくちゃんとしているからなんじゃないだろうか。 無茶な話なのだが妙に説得力があって、とにもかくにも物語の吸引力があるのだ。

好き嫌いが分かれる作品だと思うけど、私は案外嫌いじゃなかった。