りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

2011年・年間ベスト

2012年元旦に2011年の年間ベストをアップするという例年にはない気合いの入りよう。

2011年はたくさん読んだ。数えてみたら159冊。
私にとって読書というのは、何かを勉強したり得たりすることを目的としているのではなく、心の栄養。 飽きっぽい私だけれど、多分読書だけは一生やめることはないと思う。
などと言いながら2011年のベスト。
今年はちゃんと順位をつけてみようと思う。

まずは国内。

1位:「地のはてから」 (乃南アサ

地のはてから(上) (100周年書き下ろし)

地のはてから(上) (100周年書き下ろし)

地のはてから(下) (100周年書き下ろし)

地のはてから(下) (100周年書き下ろし)

乃南アサといえばちょっといやなミステリーを書く人という私の今までのイメージを覆した作品。
過酷な自然の中、家族を守って生き抜いていく主人公の姿に胸を打たれた。

2位:「ツリーハウス」 (角田光代

ツリーハウス

ツリーハウス

読み終わった後、これはなんかよくわからないけどすごい傑作なのでは!と思ったのだが、時がたつにつれその想いがさらに強くなった。
物語のもつ吸引力と説得力がすごい。日本版「大地」と言っても過言ではないのでは。

3位:「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」 (奥泉光

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

これを3位にしてしまうと、このあとに並ぶまじめな小説たちに失礼という気がしないでもないが、でもでも好きなんだもん。面白いんだもん。ばかばかしいことが大好きなんだもん。

笑いというのは結構難しくて、ツボをはずすと「イタイ」といわれてしまったりするのだけれど、芥川賞作家なのに臆せずこのような作品を書いてしまう奥泉さん…イエス、フォーリンラブ(←古)。

4位:「オーダーメイド殺人事件」 (辻村深月

オーダーメイド殺人クラブ

オーダーメイド殺人クラブ

「中2病」などと聞くとなんとなく胡散臭く思えて反発を感じるけれど、この年頃の雰囲気、空気をきちんと上手に伝える小説だと思う。
私を殺してと同級生に依頼するというショッキングな物語なのだが、読んでいるうちに彼らのことが愛しく思えてくる。
希望を感じさせるラストがとても良かった。

5位:「神様 2011」 (川上弘美

神様 2011

神様 2011

礼儀正しいクマとのピクニックは以前と同じなのに、決定的に変わってしまっている「世界」。
川上さんの怒りが伝わってくる作品だった。

6位:「ひそやかな花園」 (角田 光代)

ひそやかな花園

ひそやかな花園

生むことについて深く考えさせられた作品。
今まで読んだ角田作品の中で一番好きだったな。

7位:「旅のラゴス」 (筒井康隆

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

海外の小説に比べると日本の小説はなんか小粒かも。そんな私のクソ生意気な感想を吹き飛ばすような圧倒的な物語。
こんな小説を書いてしまうなんて、筒井康隆ってやっぱりすげぇ。(←おばかな感想)

8位:「きつねのつき」 (北野勇作

きつねのつき

きつねのつき

SFとかホラーとかミステリーとか、はっきりと「このジャンルが好き」というようなものはないいのだが、日常の中にひょいっと異常が混じっていたり、異常の中に何かしっかりした日常があるような、そんな物語が大好きなのである。
これはまさにそういう小説で、読み終わって日にちがたっても、風景や絵が頭に焼き付いている。

9位:「小銭をかぞえる」 (西村賢太

小銭をかぞえる

小銭をかぞえる

何年も前から読んでみようと思ってメモしつつ、なんとなく手を出せずにいたのは、この人の描く主人公が本当にどうしようもないクズのような男だと聞いていたからだ。
そんなろくでなしの男の話をわざわざ読みたくないやと思っていたのだが、読んでみるとこれがもうクセになる面白さ。
圧倒的な惨めさと人でなしさがなぜか愉快という不思議。

10位:「カキフライが無いなら来なかった」 (せきしろ, 又吉直樹

カキフライが無いなら来なかった

カキフライが無いなら来なかった

又吉が好きだ。
本好きと聞くとそれだけで好感度が30ほどぴゅーっと上がってしまうのだが、この人の書くエッセイや自由詩がこれまたとっても素敵。
深いところで「あるある」なのが、たまらない。

つぎは海外。
海外は10冊に絞れず13冊。

1位:「オリーヴ・キタリッジの生活」 (エリザベスストラウト)

オリーヴ・キタリッジの生活

オリーヴ・キタリッジの生活

大きな物語だとか小さな物語だとかそういうことを一切抜きにして読んだ小説の中で一番好きーー!と思ったのはなんだったか?と考えたら、これが私のNo.1だった。
気分屋で独断的で強烈なオリーヴのことを、読んでいるうちに大好きになってきて、もう忘れがたい主人公になっている。
中年から老年に差し掛かる孤独、不安、やるせなさがとてもリアルで苦い物語なのだが、それでもやはり人間っていいなぁ、長く生きてるのは悪いことじゃないな、と思える。
これは本当に大好きな作品。

2位:「メモリー・ウォール」 (アンソニードーア

メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)

メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)

年末最後にすごい作品を読んでしまった。
記憶をめぐる短編が6作収められた短編集なのだが、これがもう本当に想像以上の素晴らしさだった。

人は孤独と絶望の中でもやさしくなれるし、どんな悲劇も私たちからすべてを奪うことはできない。
自分の記憶に大きな不安を抱えているからこそ、心にしみる物語だった。

3位:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 (ジョナサン・サフラン・フォア)

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

イカしたタイトルから凝った装丁から何から何まで好みだった作品。
重いテーマなのだが、そこかしかに散りばめられたユーモアとぐっとくる言葉たちに、何度も笑い何度も泣いた。
これからも翻訳されたら絶対読もうと思っている作家だ。

4位:「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」(ジュノディアス)/ 「チボの狂宴」 ( マリオ・バルガス=リョサ

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

チボの狂宴

チボの狂宴

これは最初に「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」を読み、そこで言及されていた「チボの狂宴」を続けて読んだので、セットで4位。
オスカー・ワオのほうは、ジャンキーを装いながら実はドミニカ版「百年の孤独」。これでもかこれでもかと畳み掛けるストーリーにくらくらしながら、読み終わるとなんだか人間の根本的な優しさや善良さを信じられるという内容。
そして読みにくいんだろうなぁと敬遠してきたリョサに手を出すことが出来たのはオスカー・ワオのおかげ。

いやそれにしても南米ってほんとにすげぇ…。

5位:「ノアの羅針盤」 (アンタイラー)

ノアの羅針盤

ノアの羅針盤

アンタイラーは好きすぎる作家なので自分の中ではもはや「別格」なのだが、とにかく今回は順位をつけてみようということで、このあたり。
この作品を読むとアンタイラーも老年の域に入っていったのだろうということがわかる。
人生の折り返し地点を過ぎて老年に差し掛かってきた主人公の孤独と焦り。苦いけれど、くすっと笑えて最後はちょっぴり希望も持てる。
アンタイラーが前を歩いていてくれたら大丈夫。そんな気持ちにさせられる。

6位:「蛙鳴(あめい)」 (莫言

蛙鳴(あめい)

蛙鳴(あめい)

面白いと聞きながらも読むのに体力が必要そう…と敬遠していた莫言
初めて読んだこの作品で度肝を抜かれて大好きになった。

一人っ子政策の先頭にたって堕胎を行う産婦人科医である叔母さんが主人公。
ものすごく強烈で悲惨な物語なのだが、過酷な現実を必死に生き抜こうとするところに、善悪では計れない生命力のようなものを感じる。
中国ってすごい…。

7位:「アニマルズ・ピープル」 (インドラシンハ)

アニマルズ・ピープル

アニマルズ・ピープル

とてもヘヴィな物語だ。特に昨年の震災を考えると今の日本とシンクロして読むのが辛い…。
人間の無力さを見せつけられるけれど、生きていくことの意味を考えさせられる作品だ。

8位:「無垢の博物館」 (オルハン・パムク

無垢の博物館 上

無垢の博物館 上

無垢の博物館 下

無垢の博物館 下

これがまた最低の男の人生を描いた作品なのだが、面白かったんだよなぁ。
全く共感できず好きにもなれない主人公でもこんなにも夢中になって読めるという代表のような小説。 そして愛っていうのはいろんな形があるのだな、と思う。間違っていも歪んでいてもはた迷惑でも、これは確かに愛の形だ。

9位:「忘れられた花園」 (ケイト・モートン

忘れられた花園 上

忘れられた花園 上

忘れられた花園 下

忘れられた花園 下

これはどこからどこまでも好みの作品だったのだが、「このミス」で上位にランキングされていてちょっぴり驚いた。これってミステリー?
英国好き、英文学好き、ちょいミス好き、ちょいロマンス好きにはたまらない作品だ。
甘すぎるという声も聞いたけど、いいんです!こういう小説は、甘いくらいがちょうどいい。

10位:「二流小説家」 (デイヴィッド・ゴードン)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

私は多分自分で思っているほどミステリーファンというわけではないのかもしれない。
命を狙われたり次々人が死んでいったり陰謀に巻き込まれたりする小説を何冊か続けて読むと「ああ、また殺人…」とうんざりするから。
そんな私でもこれは面白かった。魅力的な登場人物に次々襲い掛かる危機にジャンル小説を物語の中に挟み込むというつくりにタイトルに対しての落とし前のつけかたに。
すべてにおいてtoo muchで楽しいエンタメ小説。

11位:「英雄たちの朝」/「暗殺のハムレット」/「バッキンガムの光芒」 (ジョー・ウォルトン)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

これはとにかくスケールが大きくてミステリーとしても面白さもあり歴史改変ものの面白さもありの3部作。 こういうすごーく面白い小説を年に1,2冊は読みたい!と思う。

12位:「待ち暮らし」 (ハ・ジン)

待ち暮らし (ハヤカワ・ノヴェルズ)

待ち暮らし (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ハ・ジンも2011年に読んで大好きになった作家だ。 劇的なストーリーが展開しなくても、魅力たっぷりな登場人物が走り回らなくても、面白い小説というのはあるのだなぁ。

13位:「時の地図」 (フェリクス J.パルマ

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

これが13位かよ!と自分で自分に突っ込みつつ。
いやでも2011年は結構思い入れの強い本が多くてそういう中であえて順位をつけるとこうなったのだ、って感じかしら。
読んだのが4月だったからちょっと感動を忘れてしまっている、というのもあるかも。

…ぜいぜい。
と、なんだかんだと書いてみたんだが、まぁ好きなものは好き、そうじゃないものはそうじゃない!その一言に尽きる。
2012年も素敵な本に出会えますように!