桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/05
- メディア: 単行本
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オヤジギャグが大好きなのである。
というか、面白くもなんともないのに、ビョーキのようにダジャレを連発するオヤジや、思わず脱力してしまうようなギャグを飛ばすオヤジが好きなのである。
そんなオヤジギャグに「また始まったよ〜」「はいはい、もう休んでていいから!ちょっと黙ってて!」と突っ込むのが好きなのである。
仕事を円滑に進めるためにとか、自分をおとすことで部下を油断させるためにとか、そういう計算なしに、ただもうクセで面白いことを言わずにいられない。そんなオヤジが好きなのである。
そして奥泉さんは前からそういうオヤジなんじゃないか、と私は勝手に思っていてラブ(はーと)なのである。
そんな私が期待をこめて読んだこの本。
日本一下流の大学教師は今日もまた自虐の詩をうたう。
これまたなんと味もそっけもない説明…。どうした?「BOOK」データベースよ?
あーもうめんどくせぇ、これはあれだ、じじいの自虐だ、以上!はい、次!そんな感じか?
それこそクワコーにふさわしいのかもしれないけれど、いやそれにしても、もう少し内容に触れてくれ…。
日本一偏差値の低い大学「たらちね国際大学」に赴任したクワコーこと桑潟准教授が、いろいろな事件に巻き込まれ、それを彼が顧問を務める文芸部の女子たちが解決していく、という物語。
いやもう疲れた身体にオヤジギャグがしみわたった〜。
もういちいちツボなんだよね。でもきっとこれって好き嫌いが分かれるっていうか、どこが面白いの?という人には最初から最後まで全然面白くないんだろうなー。
そういう意味では読む人を選ぶ作品かもしれない。
そういう意味では私は選ばれた人間ってわけね。ふふん!
さすが奥泉さん。現役大学教授だけのことはあって、イマドキの若者の生態に詳しいのである。
クワコーの研究室を部室代わりに集う文芸部のメンバーたち。
部屋の主であるクワコーを置き去りにしてなんやかんやと会話をするシーンが非常に多いのだが、この若者言葉がもう最高なんである。
特に笑ったのが、たらちね大学唯一の男子学生モンジの登場シーン。
この独りよがりな自己完結しちゃってる語り口調が最高!あるあるある!わかるわかる!笑った笑った!
そしてクワコーが楽な方楽な方に流されていくこの感じ。
最低のさらに下まで落ちていっても、のぼろうともせずすぐに慣れていくこの感じ。
なんだか他人事とは思えない。
それにしてもクワコーの月収はすごい…。まさか現実にはここまでじゃないだろうけど、これはまさにワーキングプア。
でも実は今の日本は、こういうやる気がなくて向上心がなくて「おれの今やってる仕事をお金に換算するとこんなもんか?」とあきらめてしまうクワコーたちによって、支えられているのかも?
ということはもしかするとこれはユーモアミステリーと見せつつ、現代社会の歪みを写し出した問題作!?
いや、まさか…。
とにかく最初から最後まで笑えて癒された一冊だった。