りつこの読書と落語メモ

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オーダーメイド殺人クラブ

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★★★★★

中学二年のふたりが計画する「悲劇」の行方
親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱く「リア充」少女の小林アン。普通の中学生とは違う「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子、徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する。

中学2年生というのはなかなか生き辛い年齢だ。
教室内に存在する階級。いつ自分がはずされるかわからない緊張感に満ちた友達関係。恥ずかしい存在でしかない母親。尊敬することなんかできない教師。
自分は「特別な存在」だと思いたいけれど、友だちにはずされれば動揺するし、正義を貫くこともできなければ利己主義に徹することもできない。
だから自分を特別な存在とするために、今の自分を今の状態で凍りつかせてしまえばいいのだと考え、同級生の「昆虫系」男子に自分を殺してくれと依頼する…。

私自身は中学時代、あんまり人とうまくやることに力を注いではいなかったから、ここまでの緊張感や閉塞感はなかったけれど、それでもやっぱりあの頃はきつかった。もう一度やり直していいよ、と言われても中学生には戻りたくない。
大人になってからもしんどいことは多いけれど、あの不自由感と無力感は、やはり年齢によるものなのかもしれないなぁ…。
辻村さんは本当にこういう空気を描くのがうまいなぁ。

最初は主人公のことを苦い気持ちで見ていたのだが、物語が進むにつれて、だんだん「母の気持ち」になってきた。
ほんとの自分をそこまで隠さなくていいんだよ。今うれしいと思ったその気持ちを大事にすればいいんだよ。ベクトルを「死ぬ」じゃなく「生きる」に変えてごらん。
かっこ悪くたって、余生だって、いいじゃないか。

希望を感じさせるラストが良かった。
思いのほか、よかった。