りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

チボの狂宴

チボの狂宴

チボの狂宴

★★★★★

1961年5月、ドミニカ共和国。31年に及ぶ圧政を敷いた稀代の独裁者、トゥルヒーリョの身に迫る暗殺計画。恐怖政治時代からその瞬間に至るまで、さらにその後の混乱する共和国の姿を、待ち伏せる暗殺者たち、トゥルヒーリョの腹心ら、排除された元腹心の娘、そしてトゥルヒーリョ自身など、さまざまな視点から複眼的に描き出す、圧倒的な大長篇小説。

面白かった!!「オスカーワォ」を読んだ後なだけに余計に!
トゥルヒーリョの暗殺を企てる者たち、徐々に下り坂に差し掛かってきたトゥルヒーリョ本人、トゥルヒーリョの側近の娘ウラニア、この3人の視点で語られる物語がそれぞれに面白く、夢中になって読んだ。

それぞれの感情や背景に思いを寄りそわせながらも、歴史が刻まれていく瞬間に立ち会えたような満足感。
これはもうすごいですよ、ほんとに。
なんかよくわからないけど、すごいもん読んだ!っていう満足感でいっぱい。
みんな、読んだほうがいいよ、これ。(←無責任な勧め方)

なかでもトゥルヒーリョの描き方が非常に興味深かった。
強烈な独裁者であることは間違いないのだが、妻が強欲だったり息子たちの出来が悪かったり自分自身も下半身の衰えがあったり。弱い部分も結構あって、でもそれがまたねじれた残虐性となってあらわれてきて…。
その彼の気まぐれの犠牲者となったのが、ウラニアの父とウラニア自身だ。
もちろん被害にあったのは彼らだけではなく、踏みにじられたり踏みつけられたりした人たちの代表者として、彼の暗殺者たちがいるわけで。
そういう個人的な事柄と国の歴史とが絶妙な語り口で語られているところが、この物語のすごいところだ。