地のはてから
- 作者: 乃南アサ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/16
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生き残れるものなら、生きてみろ。物心ついたとき、寒さに震えながら毎日を生きていた。昭和初期、開拓民一家の末娘の人生は、「地の果て」から始まった。直木賞作家、渾身の書き下ろし大作!
借金を抱えた夫に連れられ夜逃げ同然で福島を出て、北海道知床に開拓民として入植したつね。
水道どころか道さえもないような原生林に掘っ立て小屋を建てて、ひたすら伐採を行うも、痩せた土地ではたいして作物も育たず、さらに異常発生したバッタにその小さな畑さえ全滅させられてしまう。
根無し草のような夫は出稼ぎに行き、幼子2人を抱えてどうにか日々を暮らしていくつね。
気が優しくてひ弱な長男直一は福島に帰りたがり、福島の記憶がほとんどない妹のとわは明るく元気で母を必死に助けようとする。
物語は母つねと娘とわ、2世代を中心に描かれる。
人が暮らしていくのもままならないような過酷な自然と格闘して、少しでもまともな暮らしをしようと頑張っても、それをあざ笑うかのように次々と苦難が襲い掛かる。
とわのように明るくたくましく気骨があれば、もっと自分で運命を切り開くこともできたのでは?と歯がゆくも思うけれど、この時代にこの場所で生まれ育った女性としては、とにかくこうやって生きていくことが出来る全てだったのだろう。
戦争のことも政治のこともよくわからないけど、とにかく家族を守りぬくことを決めて生き抜いていく女性の強さに胸を打たれた。
それにしても乃南アサ。こんな本格的な小説を書くような人だったんだ? 私の中では、女の嫌な部分をぶわっと漂わせたミステリーを書く人、っていうイメージしかなかったので、ちょっとびっくりした。