りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

話の終わり

話の終わり

話の終わり

★★★★

年下の男との失われた愛の記憶を呼びさまし、それを小説に綴ろうとする女の情念を精緻きわまりない文章で描く。「アメリカ文学の静かな巨人」による傑作。

こういう、ああでもないこうでもないって思考をほじくりまわす小説って苦手だ。
さらにこの小説は、渦中にいる私、それを遠くから見ている私、それを小説に書こうとする私と視点がころころ入れ替わるから、より入り込みにくい。 でもこれが案外面白かったのだ。

終わった恋をいつまでも引きずっている「私」。
ストーカーまがいの行為をしてしまったり、「彼」が自分の見える範囲からいなくなってしまってからも、思い出すことや考えることをやめることができない。
それはもう未練とかではなく執着ともいえなくなってきて、思考そのものに近くなってくるのだ。

あまりにいつもいつも思い出しているものだから、だんだん焦点がぼやけてきて、現実味を失ってしまう。
だけど思い出すこと、考えることをやめることができない。
このぐるぐるした感じはなんかすごーく理解できる。
もやもやもやもやと描きながら、すごくどうでもいいような細部を克明に描きながら、自分が経験したことのある「その感じ」を味わわせてくれる。 なんか変な小説だー。

難しいことはわからないけど、リディア・デイヴィスってなんかすごそう。 岸本さんの翻訳との相性もよさそうだなー。
でも私は「ほとんど記憶のない女」のほうが断然好きだった。