りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

チェスをする女

チェスをする女

チェスをする女

★★★★

伝統的な考えや暮らしを当然と受け入れてきた女性が、突然目覚めて才能を開花させ、外の世界に歩き出していったらどうなるのだろう。エレニは自分で最悪の事態を覚悟する。数々の読者賞を受賞し、映画化されたフランスの小説。

まるでミニシアターで見る映画のよう。
映像がものすごく美しくて印象的で、登場人物もわずかで、セリフは少ない。

42歳のエレニは、愛する夫と2人の子どもと平凡な暮らしを送っている。
全員が顔見知りのような小さな島で、日々の暮らしに疑問や不満を感じることもなく暮らしていたのだが、ある日勤め先のホテルの部屋でチェス盤を見つけ、心の中に憧れの気持ちが沸きあがる。
愛する夫の誕生日プレゼントにチェスを送ったエレニは、その美しい姿や複雑なルールにいつしか激しく魅せられていき、平和だった家庭生活に亀裂が入ってしまう。

奥さんがチェスにはまったくらいでこんな騒ぎに?とも思うけれど、でも私たちの今の社会でも多かれ少なかれこういうことはあるわけで。
できれば妻には外の世界を何も知らないでほしいと願う夫というのは案外多いのかもしれない。

自分の殻を破って一歩を踏み出す主人公の女性が起こした小さな反乱に、思わず「がんばれ」と応援したくなる。
彼女にチェスを教える先生と、その先生が絶交したチェス仲間のエピソードがとても味があってよかった。