りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

天国旅行

天国旅行

天国旅行

★★★★

そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。

心中がテーマの短編集ということなので、かなり構えて読んだんだけど、暗い話ばかりではなく、バラエティに富んでいて、とても面白かった。

読んで、生と死は案外近いところにあるのかもしれないなぁと思った。 ひょいっと超えられる線。だけど一度行ってしまったら帰ってくることができない線。
そして夢を見ているときというのは、生きている自分が最も死に近づく瞬間でもあるのかもしれない。

死に損なったおじさんが樹海で自衛隊の青年に出会う話と、焼身自殺した憧れの上級生の話と、死んだ恋人がなぜか見えてしまう話が、特に好きだった。
死をテーマにしているのに、読後感は爽やかささえ残るというところが不思議。