終点のあの子
- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/05
- メディア: 単行本
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プロテスタント系の私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と森ちゃんは、通学の途中で見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から入学してきた奥沢朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた彼女が希代子は気になって仕方がない。一緒にお弁当を食べる仲になり、「親友」になったと思っていた矢先…。第88回オール讀物新人賞受賞作「フャーゲットミー、ノットブルー」ほか全4編収録。
この本に出てくる子たちが痛々しいのは、自分は他人とは違う、特別な人間なのだと思う気持ちと、自分が人と違っていて恥ずかしいと思う気持ちを、コントロールすることができていないからなんだろうか。
奔放に振舞う有名カメラマンの娘朱里、彼女に憧れ近づく希代子。
希代子の朱里に対する感情が徐々に歪み始めていく様は、なんて勝手なんだ…とあきれながらも、自分にも覚えがないわけではなくて、なんだか苦い。
4作収められているんだけど、私はこの中で三作目の「ふたりでいるのに無言で読書」が一番好きだった。
ださくてオタクで本の虫の女の子と、クラスの中心で女王様をきどっている美人の子のひと夏の思い出。これ、いいなぁ。
清清しさを感じたのは、本の虫の女の子が、ちゃんと自分というものを持っていて揺るがない部分があるから。だけどそれでいながら、クラスの中心にいる女王様が自分に声をかけてきて本の話をしたり少しだけだけど理解しあえたことがとてもうれしくて、その瞬間をちゃんと自分のモノにしているところ。
人の目が大事なこの時期。2人の友情は長続きしなかったとしても、間違いなく2人の人生にちゃんとした点を打っていて、きっともっと大人になった時、この時間がどんなに大事だったかに気付くのだろう。そしてそのとき2人は真の友達になれるのかもしれない。
そんな未来を予感させるところが、すごく好き。
私にはちょっとウェットすぎるように思えたところもあったけれど、でも全体的に結構好きだった。