りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

19分間

19分間 上 (イソラ文庫)

19分間 上 (イソラ文庫)

19分間 下 (イソラ文庫)

19分間 下 (イソラ文庫)

スターリングは平穏な町だった――3月のある日、高校で銃乱射事件が起こり、多数の生徒の未来が損なわれるまでは。
校内で人気の女子生徒ジョージーは、目の前で恋人を殺され、事件が起きていた19分間の記憶を失う。犯人は、幼少時にはジョージーと親友だった同級生のピーター。なぜ彼は凶行におよんだのか? どうしてジョージーは銃を向けられながらも射殺されなかったのか? 町中が悲嘆に沈むなか、裁判がはじまり、事件の背景が明らかになってゆく。
ベストセラー『私の中のあなた』の著者が、友人や恋人、家族の絆を描く感動作。

ある日、高校で銃乱射事件が起こり、多数の生徒が殺されケガを負う。
犯人はいじめられっ子のピーター。
ピーターがそのような犯行に至るにはいったいどういう経緯があったのか。そしてピーターの幼馴染で恋人を射殺されたジョージーは何を見たのか。
凶行の行われた19分間とそれ以前それ以降の出来事を、ピーター、ジョージー、そして彼らの親の視点から描いていく。

いやもうとにかくヘヴィな物語だった…。
日常的に行われていたあまりに残酷なピーターへのいじめ。
そしてピーターを理解しながらも「そちら側」にいることを恐れて自分を偽って生きるジョージー。
そんな彼らのことを愛しながらも全く理解できずにいる彼らの両親。

彼ら4人の苦悩は全く遠いものではなく、自分が誰にでもなり得るのだということがわかるだけに、読んでいてそれはもう恐ろしい。
こんな辛い物語をわざわざ読まなくてもいいじゃないかと思いながらも、ストーリー展開の巧さにページをめくる手を止められず、「うう…」「ああ…」とうめきながら、最後まで一気に読んでしまった。

ジョディーピコーは「わたしのなかのあなた」「すべては遠い幻」の2冊を読んでいて、巧いけれどあざとい作家、という印象があったんだけど、これを読んでものすごく巧くなったなぁ…と思った。(←上から目線)
徹底して当事者の視線で描いているんだけど、物語の展開にも無理がないので「フィクション」としての違和感を感じさせない。

辛い物語だし、こたえは出ないのだけれど、読んでよかった。