りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

きのうの神さま

きのうの神さま

きのうの神さま

★★★★★

『ゆれる』で世界的な評価を獲得し、今、最も注目を集める映画監督が、日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。『ディア・ドクター』に寄り添うアナザーストーリーズ。

タイトルを見た時から、これはもしかしてものすごく私好みな小説なのでは?という予感があったんだけど、いやぁよかった…。すごく好きだった。
甘すぎず辛すぎずバランスが良くて、映像の人だからなのだろうか、描写がくどくないのに1つ1つのシーンがとても印象的だ。

5作入っていて、どれも他愛もない話のようでいて、日常に潜む闇みたいなものをちらっと見せつつも、そこにあえて踏み込まないでちょっと離れたところからぼーっと見ているような距離感があって、なんとも言えない味わい。
一番好きだったのが「ディア・ドクター」。これ、いいなぁ…。父と子のすれ違う感じと兄弟の距離感がとてもリアルで胸に迫ってくる。
僻地で働く医者を描いた「ありの行列」「満月の代弁者」もすごくよかった。決して理想や熱意だけでは越えられない壁がそこにはあって、そこで葛藤しながらも最後は希望をつないでいくところが良かったなぁ…。

この人の映画も見てみたくなった。