木でできた海
- 作者: ジョナサン・キャロル,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/04/20
- メディア: 文庫
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フラニー・マケイブ。クレインズ・ヴューの警察署長で、元不良少年。目の前で死んだ三本脚の犬を埋葬して以来、彼の周囲で奇妙な事件が続く。美しい羽根を残して忽然と家から消えた夫婦。なぜか戻ってくる犬の死体。その上変死した女子学生のスカートから同じ羽根が見つかる。いったい誰が、何を企んでいるのか?そして彼のもとに、使命を携えて謎の男が訪れる。鬼才の新たな傑作。
あーなんか久しぶりになってしまったー。夏休み中ほとんど本を読めなかったからなぁ…。
大好きなキャロルの新作。
3本足の老犬が死んでそれを埋葬したらなぜかその死体が戻ってきて、死んだ女子学生が自分のことを絵に描いていたり、謎を追ううちにどんどん摩訶不思議なことが起こってきて、足元がぐらぐらしてきたと思ったら安全な場所を探す間もなく、ものすごーく危機的な状況に追い込まれて行って…こういう展開はキャロルの真骨頂だよなぁ。
この現実と幻想の境目がぶわっとなるところがたまらなく好きだ。
そして元不良少年で今は警察署長のフラニーがまたいいんだわ。
いかにも厭世的で投げやりみたいなんだけど、危機的状況に陥るほどに自分の現在に愛おしさを覚えるあたり、実にチャーミングだ。
負い目を感じている死んだ父親との再会のシーンには思わず涙が…。
それでもなんかラストの方にいくほど、私はちょっと乗り切れないものがあったんだなぁ。
読むのに時間をかけすぎたせいもあるかもしれないけど。ちょっと理屈っぽく思えてしまったというか。もうちょっと情に走ってくれたほうが私好みではあったな。