りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

いつか眠りにつく前に

いつか眠りにつく前に

いつか眠りにつく前に

★★★

あなたが最期に呼ぶのは、誰の名前ですか?死に面した母の口から語られた物語は、娘たちが知らない40年前の想い出だったすべての女性の人生が、美しい一瞬を持っている。至極の感動作、映画原作!

いかにも私が好きそうなタイトル。
あれ?前に同じタイトルの本を読んだことがなかったっけ?ああ、あれだ。エリザベスバーグの「永い眠りにつく前に」。 この手のタイトルにとことん弱いんだな、私…。

スーザン・マイノットといえば「モンキーズ」。ミニマリストの作家だったと記憶していたんだけど、その後結構映画の脚本も手がけていたようだ。この作品もメリルストリープ主演で映画化されている。
というより映画の評判がよかったから原作が翻訳されたのかもしれないな。

死の床についた女性アンが混沌とした意識の中で思い出しているのが、叶わなかった昔の恋。
親友ライラの結婚式で出会った男性ハリスと運命的な恋に落ちるのだが、この恋は悲劇的な結果に終わってしまう。
こん睡状態に近い状態で、現在と過去が入り乱れ、思考がさえぎられながら、封印していた過去が蘇っていく。死を前にして思い出すのはいつのことなのか。最期に呼ぶのは誰の名前なのか。
映画の方はドラマティックに作られているようだが、小説の方は、アンの意識がさまようように、現在と過去が入り乱れ、朦朧としたアンの思考を体現するように、句読点のない文章が延々と続き、とりとめがないような感じですらある。

いかにも私の好みそうな小説ではあったのだが、う、うーん…。
アンもそうだけど、ハリスに全然魅力を感じられなくて。その部分に全然共感できなかったんだよなぁ。
運命の恋とか、この1夜で自分が別の自分になったとか言うけど、そんなたいしたことだったの?と冷ややかに思ってしまう自分もいて。
句読点のない文章や、会話の間に自分の声が混じってきてわけがわからなくなってしまうところなんかも、うまいといえばうまいのかもしれないけど、ちょっと鼻についてしまって…。

ただ、あとがきに書いてあった作者の言葉を読んで、ああ、そういうことだったのか…と納得したし、それならそれもありだな、と思ったのだけれど。これを書くと完全にネタバレになってしまうので、改行あけます。









婚約者がいながら、自分の欲望のままに振る舞い、アンを夢中にさせ、結局は去って行ってしまうハリス。
結局それだけの男だったんじゃん!と思ってしまい、それがその後の彼女の人生に陰を落として、3度も結婚したけれど、どれも「愛」と呼べるものではなく、死の床で思い出すのはハリスのこと。
なのであれば、なんか人生棒に振っちゃったんじゃないの?それってどうなのさ?と思ったのだ、私は。

でも作者はこう言う。
「アンは実際にその人のことを忘れてしまったんだと考えています。(中略)
だから彼女奈そういう女性になった。そういう女性になって、子供たちを育てていったんです。」

ああ、それならなんかわかるなぁ…とようやくここまで読んで腑に落ちたんだよね。
でもできればこの小説の中でそのことに気付かせてほしかったなぁ…。解説読まないと腑に落ちないっていうのは小説として不完全なのではないかしらん。
と自分の理解力を棚にあげて言ってみたくなる。