りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

風が強く吹いている

★★★★★

風が強く吹いている

風が強く吹いている

奇跡のような出会いから、清瀬灰二と蔵原走は無謀にも陸上とかけ離れていた者たちと箱根駅伝に挑む。それぞれの「頂上」めざして…。長距離を走る(=生きる)ために必要な真の「強さ」を謳いあげた、超ストレートな青春小説。

おんぼろの竹青荘に住む寛政大学の学生9人。竹青荘の主とも言うべきハイジがある日万引きをして逃げる1年生の走を竹青荘の10人目の住民として迎えいれるところから物語は始まる。
この10人で箱根駅伝に出るぞと宣言したハイジ。有名な陸上選手だった走を除けばほぼ素人に近いこのメンバーで本当に箱根駅伝に出ることができるのか?
最初は戸惑うばかりだった一同だったが徐々に走ることに目覚め、走ることに対してわだかまりを持っていた走も徐々に変わっていく…。

ちょっと照れてしまうくらいストレートな青春小説なんだけれど、それでいいじゃないか!と言いたくなるような気持ちよさ。
なんといってもこの10人が個性的でとても面白い。お調子者の双子。万年大学生。王子な漫画オタク。クイズ王。紳士な黒人。はちゃめちゃなメンバーだけど、それぞれのバックグラウンドや性格を上手に操るハイジによって、全員がいっぱしのランナーになっていく姿は、ちょっと漫画みたいだなと思いながらも、気持ちよく清清しい。

しかしなんといってもハイジと走の魅力的なことよ。特に時々正直すぎてしまうハイジには、くーーまいるね、こりゃ!出来過ぎクンじゃないところがリアルでいいわ〜。
最後の駅伝のシーンで、それぞれの視点で語られているのがとても良かったなぁ。ああ、そういう気持ちで走っていたのかとか、そんな風に思っていたのかとか。

私はほんとにスポーツと無関係なところで生きてきた人間だけど、時々まじめにスポーツ観戦をしていて妙に胸を打たれるときがある。
駅伝もたまたまテレビをつけて見始めると、もう目が離せなくなって、ゴールのシーンで一緒に涙したり、走っている人たちの気持ちを考えたりすることがある。
この小説はもちろんフィクションだけれど、真剣に走りを追求している人の気持ちはちょっとわかったような気がして、なんか久しぶりに今年の箱根駅伝は真剣に見てみたいなぁなんて気持ちになっている。(まだまだ先だけど)