りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

存在の耐えられない軽さ

★★★★★

存在の耐えられない軽さ

存在の耐えられない軽さ

苦悩する恋人たち。不思議な三角関係。男は、ひとりの男に特別な感情を抱いた。鮮烈でエロチック…。プラハの悲劇的政治状況下での男と女のかぎりない愛と転落を、美しく描きだす哲学的恋愛小説。

この本の表紙を見た次女(小1)が言った。「うわー裸だ!」
しょうがないなぁ、この子はほんとにもう!ぶわはははは…と笑いながら、でも自分も同じようなものだったかもしれないと思った。
あまりにも有名なこの映画の1シーン。何も知らず、ひたすらエロな物語なのだろうと思っていた。おしゃれでエロなだけの物語だと思い込んでいた。そんな自分が恥ずかしい…。

こんなに難しい小説だとは思っていなかった。

哲学的で理知的で実験的な小説。物語の軸になるのは確かに男女の性愛なのだが、それだけにとどまらず、歴史や政治、宗教、そして人間の過ちや愛情そして存在そのものにまで話は及び、正直「え??どういうこと??何が言いたいの?」と頭が?でいっぱいになることもあったし、今も十分理解できたとは言いがたい。
解説や読んだ人の感想を読んで「ああ、あのシーンにはそういう意味があったのか」と気付かされたり、「そんな重要なことが書いてあったんだ?」と驚いたり。
でもその程度のもやっとした理解でも十分楽しめる懐の深さがあるのだ、この小説。

いやそれにしてもよくこの小説を映画にしたよなぁ…。ちょっと見てみたくもなったぞ…。
きっと小説とは別物になっているだろうとは思うけれど、それでもこれを映画にした意欲を買いたい(←えらそう)し、この小説の面だけを切り取ったような映画になっているような気はするけれど、それはそれで見てみたいような気もする。

印象的なシーンやはっとする言葉も多かった。
弱さが強さでもあるということ。運命は変えられないということ。幸福は繰り返しの中にあるということ。
全てを理解できたとはとてもじゃないけど思えないけれど、それでも食わず嫌いをしないでよかった、と思える小説だった。読めてよかった。