りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ミスフォーチュン

ミスフォーチュン

ミスフォーチュン

★★★★★


うああ。久しぶりに「好きだー」と叫び出したくなるような小説を読んだ。
題名といい表紙といい好みだったのだが、何より惹かれたのが「ディケンズ風サーガ」というキャッチコピー。
ディケンズが大好きなのだ。と言っても私がディケンズを夢中になって読んだのは10代の頃。あの頃読んで「面白い!」と思ったものを、今読んで同じように面白いと思えるかどうかは甚だ疑問だった。年をとって感受性が鈍くなったから?あの頃よりもっと刺激的な小説を沢山読むようになってしまったから?いろいろ原因はあるのだろうが、あの頃読んで面白かったと思ったものを今読んで面白いと思うことがとても少ないのだ。大好きだった「大いなる遺産」も今読んだら同じように大好きなのかどうかわからない。そして「現代版ディケンズ」を今の私が面白がれるかどうかはさらに疑問なのだ。

と、前置きが長くなったが、結論から言うと、とにかくもう最初から最後までどこまでも好みの作品だった。確かに「現代版ディケンズ」と言われるのもうなづける。私の思うところの「ディケンズっぽさ」が随所にあって、それが私にはツボだった。

1820年、ロンドンの町外れに捨てられていた男の赤ん坊は、名門ラブオール家の当主に拾われ、娘として育てられるが…。19世紀英国の領主館を舞台に描くディケンズ風サーガ。

ストーリーが「大いなる遺産」っぽいのだ。それに、優しくてデリケートで傷つきやすい父ジェフロイ、生真面目で聡明な母アノニマ、財産目当てで悪意に満ちた親戚たち、その一方で同じように名家でありながら心優しく手を差し伸べてくれる人たち、そしてゴミ溜めに捨てられた所を拾われ「女」として育てられる主人公ローズと、登場人物たちもディケンズっぽい。
何も知らず何不自由なく過ごした少女時代のローズ。召使の子どもであるスティーヴンとサラとともに育ち、穏やかで優しい父に溺愛され、聡明な母に教育され、幸せであるということに何の疑問も持っていなかったローズ。しかし彼女が捨て子で男の子であったということは秘密だ。この秘密がいつ暴かれるのか、ローズがどんな風に転落していくのか。前半は、幸せな時代の描写があればあるほど、先が怖くてドキドキする。

そして転落してからの後半は、ミステリーのようなあっと驚く真実や大どんでんがえしがあって、ページをめくるのももどかしいくらい。

めくるめくストーリーに、魅力いっぱいの登場人物たち。そしてこのこってり加減。物語を読む楽しさがここにはある。ちょっと唐突に感じられるところや、「??」となところもあるけれど、私はこういう小説が好きなんだー!大好きなんだー!こういう小説が読みたくて本を読み続けているんだー!と叫びたい気持ちでいっぱいだ。いやこれはほんとにいいもんを読んだー。大満足。