りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

クリスマス・プレゼント

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

★★★★

スーパーモデルが選んだ究極のストーカー撃退法、オタク少年の逆襲譚、未亡人と詐欺師の騙しあい、釣り好きのエリートの秘密の釣果、有閑マダム相手の精神分析医の野望など、ディーヴァー度が凝縮されたミステリ16作品。リンカーン・ライムとアメリア・サックスが登場する「クリスマス・プレゼント」は書き下ろし。

いやぁ。ジェフリー・ディーヴァーというのはつくづく「面白い」のツボを心得ている作家なのだなぁと思った。どれも面白いじゃないか!そしてとにかく作者による前書きが面白いと思った。

作家は読者に責任を負っている。時間とお金と感情を長編小説に注ぎ込んだあげく、苦く皮肉に満ちたエンディングにがっかりさせられるなどという経験は、ぼくの読者には絶対にさせたくない。
しかし、長さ三十ページの短編となると、事情はまるでちがってくる。

善が悪に勝利するというのが彼が長編を書く時の鉄則だと、それは長い時間とお金と感情を注いだ読者に対する礼儀なのだと、言っているのだ。そして短編はそこまで注がせていないからどう書いてもいいだろ?と言うのである。こう言い切るというのはある意味すごい。
そしてそう言っただけのことはあって、ここに収められた短編は、著者が思うがままに好きなように書いたんだろうなぁとほくそ笑みたくなるようなものばかりだ。

特に好きだったのは「ジョナサンがいない」「ウィークエンダー」「ビューティフル」「釣り日和」「クリスマスプレゼント」「パインクリークの未亡人」。普通に考えたら悪いんだけど、まあこれはこれでいいかー?!今まで酷い目にあってきたんだし。常に正義が勝つわけじゃないんだから。と思う類の物語が多いかな。
楽しかったー。でも殺人ばっかりだったから、次は殺しじゃない小説が読みたいわー。