りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

サーカス団長の娘

サーカス団長の娘

サーカス団長の娘

★★★★

これも誰のブログを読んで「面白そう」と思ったのか記憶がないのだが、いつからか自分のメモに書いてあった本。読み始めてから知った。「ソフィーの世界」「カードミステリー」の作者なんだ?!(ちなみに「ソフィーの世界」は「わかりにくい」という噂だったので読んだことがない。)

これは絶対ネタバレ禁止な本だなー。私はほんとに真っ白な状態で読んでとても楽しめた。だからぜひこれ真っ白な状態で読んでほしい。








ペッテルは、天性の才能をもつストーリーテラーだった。幼いころから、湧き出る物語のアイデアをもてあましてさえいた。やがて彼は、それらのアイデアを創造力の行きづまった作家たちに売って生計を立てる、闇のビジネスに手を染めていった。獲物は向こうからやってくる。ペッテルは張りめぐらした巣の中心に陣取る蜘蛛だった。しかしあるとき、彼は自分自身がその蜘蛛の糸に絡めとられていることに気づいた…。自分の生み出した物語に翻弄されたある男のたぐいまれなる人生。


物語の中で語られる物語というのは結構微妙だ。たとえばドラマなんかで「天才的なピアニスト」という設定なのに、ピアノを弾くシーンで流れるピアノが素晴らしくなかったらドラマ自体の魅力も半減してしまう。この小説では天才ストーリーテラーであるペッテルの湧き出る物語がキーになっているのだが、これが確かに面白い。うん。ここがすごく大事なところだなー。彼が唯一愛した女性マリーアは彼の語る物語に魅了されながらも彼の語る物語が怖くなったのだと言って去っていくのだが、これは彼がマリーアに語ってきた物語を読者が「ああ、確かになんとなくぞっとするなぁ」と感じられなければ、この小説の面白さは半減すると思うのだ。

この小説でキーになっているのがペッテルによって語られる「サーカス団長の娘」の物語。いやーこの物語の挟み方がものすごくうまい。最初にちらっとこの話が出てきて。それからペッテルがマリーアと「かわいい子」に語る物語として出てきて。そして最後に彼がベアテに語る物語として出てくる。
それで、ああ、そうか…と。私のように「鈍い」読者も気付くような仕掛けになっているのだ。いやーたまらん!!

一生読むことはないだろうなと冷ややかに思っていた「ソフィーの世界」。ちょっと読んでみようかな、という気持ちになっている。