寝盗る女
- 作者: マーガレットアトウッド
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 単行本
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- 作者: マーガレットアトウッド
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 2001/09
- メディア: 単行本
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マーガレット・アトウッドは大好きな作家だけれど、この題名とこの厚さに躊躇し続けた何年間。
既読は「侍女の物語」「ダンシング・ガールズ」「浮かび上がる」 「昏き目の暗殺者」「青ひげの卵」「食べられる女」「闇の殺人ゲーム」。おお、そうか。ほとんど読んでいたのだな。これでもう読んでいない長編はなくなってしまったのか。うわーん、さみしい。
「寝盗る女」っていう題はどうよ?とずっと思っていたけれど、原題はThe Robber Bride。そうか。それを直訳したらますます「????」だもんな。うーむ。確かにすごくうまいタイトルかもしれない。
死んだはずの“魔性の女”が再び現れた…苦い経験を持つ三人の中年女性が、若き日を回想しながら新たなる人生の危機に立ち向かう。鋭い感覚で照射する女たちの肖像。2000年ブッカー賞受賞作家の長編小説。
ズィーニアというものすごい悪女と、彼女に男を奪われた3人の女たちの物語。
トニー、カリス、ロズの3人は、ズィーニアとは大学の同級生。トニーは大学で歴史を教えていて戦争を研究している聡明な女性で、カリスは祖母の神秘の力を受け継いだ浮世離れした女性で、ロズは会社を経営する大金持ち。大学時代は全く接点のない3人だったのだが、中年になった今、ズィーニアに男を奪われたという一点で3人は強く結びついている。
ズィーニアが死んで3人が葬式に出るところから物語は始まる。
そしてズィーニアがどのように自分の人生に入り込んできて大切にしていたモノ(男)をどのようにして奪っていったかを、3人の女性一人ひとりにスポットを当てるようにして物語は進んでいく。
とにかくいつもアトウッドを読むと思うのは、この人の物語力というのはものすごいということだ。線が幾重にも重なりあって完璧な物語になっていて、退屈させたり薄っぺらに感じさせるところが一点もない。物語の進めかたが本当に巧みで、ミステリーを読んでいるようなスリルとサスペンスがあって飽きさせない。
そして読み始めるときに覚悟するより、ずっと軽妙でユーモアがあって読みやすいのだ。
内面を深く深くえぐっていくのではなく、ストーリーでどんどん読ませていくのだが、物語の中から浮かび上がってくる別の真実とか感情というのがあって、登場人物の気持ちの変化と同じに読んでる側の気持ちも変化させていく。これがアトウッドのすごいところだと思う。
そしてここまで嫉妬と憎悪を描きながらも、登場人物たちがとても魅力的であるというのが、この小説を気持ちの良いものにしている。
後味が決して悪くないのが素晴らしい。