りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ブルーもしくはブルー

ブルーもしくはブルー (角川文庫)

ブルーもしくはブルー (角川文庫)

★★★★

二人の男とつきあっていて、悩んだ末に、広告代理店に勤める洗練された男と結婚した蒼子。でもその結婚生活は幸せなものではなかった。
不倫してる夫に対抗するように自分も年下の恋人と不倫するものの満たされない。
そんなとき思い出すのは、自分が捨てた方の男。掛け値なく自分を愛してくれていた板前の彼と結婚していれば幸せになれたのではないか。
そんな未練がましい気持ちで彼のいる街を歩いていると、自分とそっくりの女と歩く昔の恋人に出くわす。

なんと彼と一緒にいたのはまさに自分自身だったのだ。どうやら二人の男の間でどちらと結婚したらいいか迷った時に、自分から影のようにもう一人の人間が分かれてしまったらしい。
そんな蒼子Aと蒼子Bが、期間限定で入れ替わって生活してみることを決意する。

SFチックな内容なんだけど、とってもリアル。
こんなことってありそうだなあ、と思ってしまう。

自分が選ばなかった方の相手への未練。
あちらを選んでいたら幸せになれたのではないか。自分ははずれを引いてしまったのではないか。できればもう一度あの人とやり直したい。
そんな思いを抱くことは少なからずあるのではないかと思うのだが、実際選んだ相手が違ったらどういうふうになっていたのか。
この物語に語られているのは、決して甘くない2つの結婚生活だ。

面白いなあと思ったのは、自分の分身をお互いに好きになれないってところ。そしてお互いに最初は相手を羨ましく思うのだ。だからこそ「交換」を受け入れてしまうわけである。
まるで正反対に思える二人なのだが、実際は同じ人間から派生(?)しているなわけで、恋愛感情がす〜っと冷めていく瞬間が同じだったり、とる行動が一緒だったりする。

自分の「影」であると思っていた蒼子Bが、自分との約束を次々と破って勝手な行動をとり、その存在が脅威に思えてくる。しかも自分の方が「影」になりつつあると気がついたときの恐怖、、。

お互いに相手を身勝手ないやな女と思い、お互いに殺意を抱く。
しかし最終的には憎みきれないというところに、一抹の希望を見たような気がした。 利己的で相手に求めてばかりの蒼子を、最初はあまり好きになれなかったのだが、読みすすむうちに、だんだん感情移入してしまい、最後は涙してしまった。