りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

デッドライン

 

デッドライン

デッドライン

  • 作者:千葉 雅也
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

 修士論文のデッドラインが迫るなか、「動物になること」と「女性になること」の線上で煩悶する大学院生の「僕」。高校以来の親友との夜のドライブ、家族への愛情とわだかまり、東西思想の淵を渡る恩師と若き学徒たる友人たち、そして、闇の中を回遊する魚のような男たちとの行きずりの出会い―。21世紀初めの東京を舞台にかけがえのない日々を描く話題沸騰のデビュー作。第41回野間文芸新人賞受賞、気鋭の哲学者の初小説。

主人公は大学院で哲学を学び修士論文に苦しみ、友人と映画を撮り音楽を作り、夜毎性交をする相手を求めてハッテン場をさまよう。

自分と他者との境界や差異を考え自分は何を「言祝ぐ」のだろうかと思考する「僕」と、友人たちと映画を撮ったり音楽を聞いたり家でリラックスする「僕」と、男を漁る「僕」。

慣れ親しんでいる「小説」とは違う回路で進んでいくような…不思議な感覚。
哲学的なのか敢えて物語らしさをそぎ落としたのか正直私にはよく分からない部分もあったけれど、面白かった。

これはゲイの人たちにとったらリアルな小説なんだろうか?

ザリガニの鳴くところ

 

 

ザリガニの鳴くところ

ザリガニの鳴くところ

 

 ★★★★★

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

置き去りにされたカイアがあまりにも可哀そうで前半は読むのが辛かった。

湿地の自然、鳥たちを唯一の友だちとして知恵を絞ってどうにかして生き延びようとする少女カイア。
彼女に手を差し伸べてくれたジャンピン夫婦、そして彼女に文字を…学ぶことを教えてくれたテイト。

彼女がどれだけ助けを必要としていたか、友だちを、自分に寄り添ってくれる人を求めていたかと思うと胸がつぶれる想い。
それでも圧倒的に不利な裁判の時に駆けつけてくれた人たち。それは彼女が何も求めず崇高に生きたことの証だったのかもしれない。

「ミステリー」の範疇には収まりきらない感情や知識が詰め込まれた作品。
とても面白かった。

たおやかに輪をえがいて

 

たおやかに輪をえがいて (単行本)

たおやかに輪をえがいて (単行本)

  • 作者:窪 美澄
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: 単行本
 

 ★★★

風俗に通う夫、不実を隠した父、危険な恋愛に耽る娘…夫の心も、娘の顔も、今は見たくない。結婚20年、主婦・絵里子の人生は穏やかに収束するはずだった。次々つきつけられる思いがけない家族の“真実”。大きな虚無を抱えた絵里子に、再び命を吹き込むのは整形した親友、乳癌を患った老婦、美しい風俗嬢…?人生の中盤、妻でも母でもない新たな道が輝き出す傑作長編。 

 夫と娘のために献身的に専業主婦をやっていた絵里子が、夫と娘の秘密を知り自分がなによりも大事にしてきた「家族」というのはなんだったんだろう、自分は何か間違ってしまったのだろうかと、自分の人生を見つめなおす。

前半はヒリヒリするくらいリアル。

後半、一人旅のエピソードや自分の母親と語り合うシーンはグッときたけど、絵里子が変わっていくストーリー展開はちょっと安直に感じてしまったなぁ…。安いテレビドラマじゃないんだから。ちょっと残念。

十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会

7/17(金)、「十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会」に行ってきた。

・まめ菊「狸札」
・馬治「鮑のし」
・さん助「二十四孝」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・馬治「猫の災難」


馬治師匠「鮑のし」
数か月に及んで全く仕事がなくなって家にこもりっきりの生活。
師匠からは「とにかく今は歯を食いしばって耐えて落語の稽古をしろ」と言われたのでやってみたけど落語っていうのは本来歯を食いしばってやるものじゃないっすね、と言う言葉に笑う。噺家なんていうのは皆様方と違っていろんなことを考えたりしないもんですから。私なんか頭の中は競馬と落語のことだけ。それが競馬も落語もなくなっちゃうとほんとに何もなくなっちゃって退化する一方。

この間久しぶりに人前で落語をやる機会があって「紙入れ」をやることになっていたんです。
前日やってみたら大丈夫そうだったので、いけるだろうと思っていたんですが。
まくらの「町内で知らぬは亭主ばかりなり」の「町内」が出てこない。あれ、なんだったっけ、なんか他の言葉で同じ意味になるように…と考えた挙句「世界中で知らぬは亭主ばかりなり」。…なんだよ世界中でって。

…ぶわはははは。
噺家さんってみんなこのコロナ禍で同じような反応なのが面白いなぁと思う。
もちろん困ってないわけじゃないんだけど、まぁもとから仕事ない時は家にいたし…こういう時こそ稽古しろって言われるけど披露する場もないのに稽古って言われてもなかなかねぇ…。
寄席も人数を制限しなくちゃいけなくて大変っていうけど、俺らが前座の頃は10人入ってないなんてざらだったし…いまさら何を言う?
やせ我慢も入っているのかもしれないけど、でもぎゃあぎゃあ言ったりじたばたしないでぼんやりしているっていうところに、噺家の矜持を感じるのだった。

そんなまくらから「鮑のし」。
甚兵衛さんがぼんやりしていて呑気なんだけど真剣なのが独特ですごくおかしい。口上の稽古をして「これが言えねぇと持続性給付金がもらえねえんだな?」なんてセリフが出てくるのも馬治師匠らしくておかしい。
大家さんのところに行ってからのやりとりも、甚兵衛さんが大真面目なのがおかしくて笑った笑った。
楽しかった!

 

さん助師匠「二十四孝」
暇なもんですから映画を見に行きました、とさん助師匠。ハッピーエンドで見終わった後「明日もがんばるぞ」と前向きになるような映画は好きじゃない。
かといって人が死んで涙を流すような感動ものも嫌い。
私が好きなのは、黒板を爪でひっかくような…見終わっていや~な気持ちになるような…そんな映画です。今お客さんが引いて行くのをひしひしと感じましたけど。いいんです。
で、私が見ようと思ったのが「アングスト」です。これはもうあまりにも過激なので長年上映禁止になっていた…DVD化することもできない問題作ということで。いったいどんな残虐なシーンがあるのかと期待に胸をふくらませて見に行ったんですが…。おそらく劇場は映画マニアみたいのが来てるのかと思いきや、若いカップルが多い。
で、見てみた感想なんですが…。あの…。ええと…。予告編、うまく作りやがったな、です。今も見られると思うので見てみてください。そんなでもなかったです…。

…相変わらず説明下手なさん助師匠。いったいどういう映画なのか、どういう映画を期待して見に行ったのかイマイチ伝わってこない(笑)。
そもそもホラー映画好きとも思えないし…。
想像するに人間の残酷性とか人間性の破壊とかそういうものを描いた作品とかそういう後味の悪い…見終わってモヤモヤするような映画が好き、と言いたかったんだと思うんだけど…。

それから東京の感染者が毎日増えていることについて。ある人数を超えると母親から電話がかかってくる。「お前、大丈夫なのかい?」と。で、必ずその後に言う言葉が…いったい私を…芸人をどう思ってるんですかね。「お前も芸人だからしょうがないのかもしれないけど…でも今はホストクラブには行っちゃいけないよ」。…ホストクラブなんかに行くわけないのに。まぁ幾つになっても親にとっては子どもってことなんでしょうか。

そんなまくらから「二十四孝」。
大家さんを訪ねてきたくまさんが存外へらへらしていて大家さんにもペコペコしているのが独自。
でも二人の会話からくまが乱暴者で母親を「どこかのばばぁ」呼ばわりして蹴とばしていることがわかる。大家さんはそんなくまを諫める気持ちで「お前にいい話を聞かせてやろう」と二十四孝の話をするんだけど、これをまぜっかえすくまがおかしい。「またばばぁが何か食いたがるんだろう?!唐のばばぁは食いたがるねぇ!」
「わかった!孝行の徳で感ずったんだろ!またよく感ずりやがったな!」さんざんバカにしていたくまだけれど、親孝行したら小遣いをやると言われて「じゃ孝行するわ!」と家へ。

聞いてきたとおりに鯉が食いたいか?タケノコが食いたいか?と母親に聞くも「川魚は泥臭いから嫌い」「歯が悪いからタケノコは食べられない」。

訪ねてきた友だちに聞いてきた「二十四孝」の話をするけどこれもめちゃくちゃ。
最後は酒を自分の体に吹き付けて蚊を自分におびき寄せて母親に蚊が行かないようにしてやろうと思うんだけど、酒を注ぐとぐびぐび飲んでしまう。
この飲みっぷりが本当に美味しそう~。

どたばたしてるくまさんとさん助師匠が重なって面白かった!

 

さん助師匠「胴斬り」
胴斬りにあっても平然としているのもおかしいけど、そう聞いて「だからお前はいつも酒ばっか飲んでるから」と説教を始める兄貴分もおかみさんもおかしい。
こんな姿になっちゃって一人で帰れないから家まで連れて帰ってくれよと頼んだくまが「抱っこ」と腕を差し出すのも笑ってしまう。

下半分の働きぶりを見に蒟蒻屋に行って、話し出すときの指の動きが…(笑)。これほんとバカバカしくて好き。
サゲを2パターンやるっていうのもなんか面白かった。

 

馬治師匠「猫の災難」
お隣のおかみさんにもらった鯛のおあまり。3枚におろした後で頭と尻尾の間に骨がつながってる(?)って初めて聴いた!なるほど!!
あと兄貴が訪ねてきて「鯛があるじゃねぇか!」と喜んだ時に、くまが「いやこれは違うんだよ」「いやこれはさ」と言いかけるのも面白い。くまはだますつもりはなかったけど兄貴が早合点して言えなくなっちゃった、っていうのがわかりやすく伝わってくる。
兄貴が酒を置いていなくなちゃってから、酒の方をじーっと見るのが…酒飲みの卑しさが出ていておかしい!
それも一杯飲むとますます飲みたくなっちゃうの、わかるなぁー。飲んでいくうちにどんどん気が大きくなっていくのも、どうでもよくなってぐうぐう寝ちゃうのも、なんか憎めない。

めちゃくちゃお酒が飲みたくなる「猫の災難」だった。よかったー。

むらさきのスカートの女

 

むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女

 

 

★★★★

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。 

 本人にそんなつもりはないのだろうが世間からはみ出して人目を引いてしまうむらさきのスカートの女。
彼女から目が離せなくて執拗に観察して距離を縮めようとする黄色いカーディガンの女である「わたし」。
同じ職場で働きだしたむらさきの女が意外にも職場で信頼を得るようになり、上の人たちともうまくやり、果てには上司と不倫…?

むらさきの方がどんどん世間に寄せていくほどに黄色の方は疎外感を感じて裏切られたような気持になっていったのだろうか。

直接描かれているわけではないのに、黄色い方の生活の苦しさや孤独感、居場所のなさが伝わってきて身につまされる。

安全な場所から冷静に見ていたはずの自分がいつか、むらさきのスカートの女になっているかもしれない。
あるいはむらさきの女など最初からいなくてそこにいたのは孤独で誰からも顧みられない黄色いカーディガンの女だけだったのか?

淡々としているけれどどこか歪んでいて寂しくて怖い。
芥川賞受賞、おめでとうございます。

フライデー・ブラック

 

フライデー・ブラック

フライデー・ブラック

 

 ★★★★

新人作家としては破格の注目を集め、一躍アメリカ文学界の最前線に立つ一人となったナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー。その視線は、ローカルな日常から近未来的なディストピアを照射し、全人類に根源的な問いかけを挑む。

音楽の世界ならケンドリック・ラマー(ラッパー初のピュリッツアー賞受賞者)やチャイルディッシュ・ガンビーノ(2019年度のグラミー賞受賞者)、映画・テレビの世界ならばジョーダン・ピール(『ゲットアウト』『アス』)やドナルド・グローヴァー(テレビドラマ『アトランタ』。チャイルディッシュ・ガンビーノと同一人物)など、新世代のアフリカ系アメリカ人クリエイターたちの感覚と呼応する、アメリカ文学界からのパワフルでシニカルでスリリングな一撃。

「ブラック・ライヴズ・マター」の過酷な現実に生きながら、日常SFともいえるようなシュールでストレンジな展開を生み出す想像力の豊かさやその筆力は、一度足を踏み入れた読者を引きずり込むような圧倒的な引力をもつ。

映像や音が浮かんでくるような臨場感のある物語体験と、根底に流れる強く深いメッセージ性を、身体で感じてください。

いまもまだこんなに差別があるの?と一昔前なら思ったかもしれないがBLM運動も記憶に新しくまぎれもなくこれが「今のアメリカ」なのだろう。

正義とは?人権とは?と憤りを覚えるが、コロナ禍で差別やヘイトがさらに激しくなってきていることは日本も同じ。
差別される側は悪目立ちしないように常に丸腰であることを周囲にアピールしつつ生きていかなければいけない。しかしそれが我慢の限界に達した時…。
表現がロックというかポップなので、残虐なシーンも過激な音楽とともに流れる映像のよう…。表現の仕方が見事だと思う。

「フライデー・ブラック」は消費社会に渦巻く暴力性をリアルに描き出していてぞくぞくした。「ジマー・ランド」のおぞましい光景をじっと見つめる子どもの視線が怖い。

辛い物語が多いけれどポップでブラックユーモアいっぱいなのでそれで浄化されてる部分もあるように感じた。
面白かった。

アコーディオン弾きの息子

 

 ★★★★★

1999年、カリフォルニアで死んだ男が書き残した「アコーディオン弾きの息子」という回想録。親友である作家は、バスク語で書かれたこの手記を元に、彼ら二人の物語を紡ぎはじめる。死んだ幼なじみが、家族にも読めない言葉で綴り、向きあおうとした過去とは何だったのか。故郷の美しい自然、朴訥で生気あふれる人びと、名士として知られた幼なじみの父のもう一つの顔…。スペイン内戦とフランコ独裁、そしてテロの時代へ。暴力の歴史にさらされた若者たちの震える魂、痛ましい記憶を力強く繊細に描きだす。多彩な人物が躍動する、バスク語現代文学の頂点。 

バスクに生まれ育ったダビがカルフォルニアで亡くなる。幼馴染で作家のヨシェバが彼の妻からダビが生前バスク語で書いていたという回想録を受け取り、それを元に二人の共著として物語を書く、それが本書(という設定)。

前半はダビの幼少時代、少年時代が丁寧に描かれる。
自分の属している階級の子どもたちと遊ばせようとする父親に反発しながらも、学校の友だち(裕福な家庭の子どもたち)とも遊び、叔父の農園でそこに住む農民の子に馬の乗り方を教わったり森を探検したり秘密の鍾乳洞を教えてもらったり。
しかしそんな無邪気な日々の中で、遠くはない過去に内戦があり父と地元の名士になっている友だちの父親が非道な行動をとったことを知る。そのことを彼は「彼の第二の目」と表現している。今まで見えなかったもの、見ようとしてこなかったものが見えるようになっていく…。
父への反発と友だちの農民ルビスが父にされたことを知り、独立闘争に係わっていく。

ダビの物語とヨシェバの物語という多重構造が物語に深みを与えている。
ダビの物語で語られなかった部分、ぼかして描かれていた部分が、ヨシェバの言葉で補完され真実が見えてくる。


過激化していく政治活動で人間性が奪われていく過程、二人が最後に行きつく境地に胸を打たれる。
政治を変えることも大事なことだけれど、自分の人生を生きなければいけない、というメッセージが伝わってきた。
素晴らしかった。

6月配信で見た落語会、ライブ

【6月に配信で見たもの】

6/2(火)道楽亭
だるま食堂がやってきた!『だるま天国~新宿二丁目の巻』
はちゃめちゃに面白かった!アーカイヴも2回見た。最高。

 

6/9(火)道楽亭
柳家はん治 独演会「はん治ひとり」
はん治師匠ももちろんなんだけど、二ツ目になったばかりの小はださんを見られたのも嬉しかった。

 

6/12(金)道楽亭
林家きく麿 独演会■第27夜「二丁目の夜はふけて」
めちゃくちゃ楽しかった。配信は新作の方が有利だなぁという印象。

 

6/13(土)
第四回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)
ぶっこわれた「茶の湯」に、ええええ?と思ったけど、その後期間限定で公開されていた本番前に録画した「茶の湯」を見て、なんとなく納得。
二回やると壊したくなるんだな、と(笑)。

 

6/25(木)
androp×Creepy Nuts「SOS! 2020」
最近はまりにはまってるCreepy Nutsライブ配信
andropというバンドとの2マンだったんだけど、2バンドが同じ場所にいて交互に曲をやるという珍しいパターン。楽しかった。


6/28(日)
Creepy Nuts Online One Man Live 」Vol.1
●ライブ本編
●アフタートーク
こちらはCreepy Nutsのワンマンライブ。ライブ後のアフタートークあり。
アーカイヴの公開期間が長かったので何度も何度も見た。かっこよかったーーー。
これを見てさらに燃え上がるCreepy Nuts熱。ぼぉぉおーーー。

喬の字改メ五代目柳家小志ん真打昇進襲名披露公演

7/11(土)、横浜にぎわい座で行われた「喬の字改メ五代目柳家小志ん真打昇進襲名披露公演」に行ってきた。

 

・左ん坊「子ほめ」
・さん助「黄金の大黒」
・喬之助「夏泥」
・さん喬「笠碁」
~仲入り~
・口上(さん助、小志ん、さん喬、喬之助)
・和助 太神楽
・小志ん「千両みかん」

さん助師匠「黄金の大黒」
おめでたい会にふさわしく「黄金の大黒」。
家賃を払ってない長屋の連中。子どもが3歳になったけどこの子が生まれて以来一度も払ってない、越してきた時に一度だけ入れたなどというツワモノたちの中、「すみませーーん。家賃ってなんですか?…まだもらってませーん」に笑う。腰は低いけど図々しいな、おい。

そして家賃の催促じゃない、ごちそうしてくれるらしいって聞いて、「すみませーん。ごちそうっていうとなんですか?普段食べられないものが出てくるんですよね?」
「そうだよ」
「ふだん食べられないっていうと…あつあつのおまんまの上にかつおぶし乗っけておしょうゆを垂らして…」
ねこまんまじゃねぇかよ!」

…何度か聞いてるフレーズなんだけど、なんかおかしくてゲラゲラ笑ってしまう。
そして長屋の連中のくだらない会話の中でぼそっと「今日は口上の司会なんだよ!人生で二回目なんだ!もう緊張して昨夜は一睡もできなかった!それどこじゃないんだ!」。

え、えええ?口上の司会をさん助師匠が?!それは嬉しい!!

大家さんのお宅に上がって飲み食いする場面の前で切ったけど、なんかとても楽しい「黄金の大黒」だった。

 

さん喬師匠「笠碁」
つまらないことで喧嘩をしちゃって出かける場所がなくなってしまったご隠居二人とコロナ禍で家にこもりっきりになってた日々が重なって、うっとなる。
私はこうしておそるおそる出かけて行ってはいるけれど、寄席や落語会に来る人の数は明らかに減ったし、特に老人の姿が減ったなぁと感じる。
そりゃそうだよね…。

おじいさんたちの意地の張り合い。
せっかく家の前まで来てくれているのにチラチラ見るだけで通り過ぎて行ってしまう。
目が合ってるのに「入れよ」と声をかけてくれない。
そんな苛立ちも「入りづらいんだろう。だったら入りやすくしてやろう」と気づいたことで溶けていく。

いいなぁ。
サゲの部分を少し変えて、より分かりやすく…伝えたいというさん喬師匠の想いが伝わってきた。
良かった。

 

口上(司会:さん助師匠、小志ん師匠、さん喬師匠、喬之助師匠)
見るからに緊張しているさん助師匠に見ているこちらもドキドキだったけど、大きな声でちゃんと立派にやりきった!(←母親目線)

さん助師匠:
小志ん師匠が見習いで入って来た時、自分は二ツ目になってお礼奉公中。丸1年を一緒に過ごしたけれど、彼はほんとによく気が付いて器用なので…私がめんどくさいなぁと思ってると「兄さんいいですよ、僕がやっておきます」。私が眠たいなぁと思ってると「兄さん、寝ててください。僕がやっておきます」。私がだるいなぁ…と思っていると…

「お前、何もやってないじゃないか!!」さん喬師匠の声が飛んで、大笑い。

(気を取り直して…)
それから彼の真打昇進が決まった頃に池袋演芸場だったか…袖で落語を聞いてたんですけど…ちょうどその時彼は「転宅」をやっていて…そうしたら彼の姿が消えて泥棒とお妾さんの姿が浮かんできたんですね…器用な彼がこうやって落語に取り組んで…彼の姿が消えて登場人物だけになって…器用なんだけど姿が消えて…

「何が言いたいんだよ!」今度は喬之助師匠の声が飛んできて笑ったー。

 

喬之助師匠:
ほんとはこの会は2月にやるはずだったんですがコロナ禍で延期になってこんな時期になりました。もう新しい真打も出てきていて「いつまで披露目をやってるんだよ!」と思われるかもしれませんが、そういう事情なので…。そしてこういう中、こうして足を運んで小志んの昇進を祝っていただいてありがとうございます。
よく我々「真打になるまで頑張ってね」とお客様に言われることがあるんですけど、真打というのは我々にとってゴールではなくスタート地点。
これからも小志んの名前を見たら寄席に入っていただいて拍手をあげてください。
良くない高座の時は「ふん!」でも構いません。それも応援になりますから。

…口上に上がる人数が少ないせいか、とてもまじめで心のこもった口上。じーん…。

 

さん喬師匠:
開口一番「さん助に司会をさせるんじゃなかった」に大笑い。
小志ん師匠が自分の鈴本のトリの芝居の時に「弟子にしてください」と通ってきたときの話。
断っても断っても毎日通ってきて幟のあたりで待っていて…その時はもうお弟子さんもたくさんいたし断っていたんだけど情にほだされてしまった。

彼に限らず最近の若い子は口調が全く落語の口調と違うのでそこから教えないといけない。
はっつぁんがご隠居に向かって「こんにちは」という…その「こんにちは」が全然落語にならないので苦労しました。
でも彼が偉いのはとにかくいろんなところに自分から出向いて行って「ここで落語させてください」とお願いして小さな会を幾つもやってきたところ。
そうやって繰り返し会をやる中で徐々に落語もよくなるし、お客様もついてくださる。

…さん喬師匠がそう言っているあたりで、小志ん師匠の涙腺が崩壊。
どなたか二ツ目さんが小志ん兄さんは師匠の口上で必ず泣く、それも泣く場所がいつも一緒って言ってたけど、きっと「ここ」だな(笑)。

撮影タイムもあってこじんまりしていたけど心のこもったいい口上だったー。

 

和助さん 太神楽
一人で登場の和助さん。私はこの方の太神楽が一番うまいと思う。
五階茶碗もやっぱりちゃんとできるんだね(笑)。抜扇の時、抜いた扇子が落ちてちょっとドキドキした!
土瓶の曲芸も見事。
それから和助さんらしく「太神楽やれると暮らしに役立つシリーズ」のバカバカしさもよかった。

自分の師匠である和楽師匠が小志んさんのことを気に入っていて「小志んを継いでくれたらいいなぁ」と語っていたというエピソードも。

 

小志ん師匠「千両みかん」
おっちょこちょいな番頭さんがドタバタするところ、若旦那が徹頭徹尾鷹揚なところが結構ちゃんとしていて説得力があった。

さんざん駆けずり回ってみかんを見つけて、みかんのために大旦那がポンと千両を出すところを目の当たりにして、自分との立場の違いをまざまざと見せつけられた番頭さん。
このサゲ、落語らしくて楽しいなぁと思う。

 

f:id:mritu47:20200712154314j:plain

f:id:mritu47:20200712154355j:plain



 

あれも凌鶴、これも凌鶴

7/11(土)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴、これも凌鶴」に行ってきた。
久しぶりの凌鶴先生の道楽亭の会。
「こんなさなかに来ていただいて本当にありがとうございます」という凌鶴先生の言葉に心がこもっていてちょっと泣きそうになった。

 

・凌鶴「安宅郷右衛門 道場の賭試合」
・一記「意見の釜割」
・凌鶴「後藤又兵衛大坂入城」
~仲入り~
・一記「探幽の屏風」
・凌鶴「八十三歳の女子高生球児」

 

凌鶴先生「安宅郷右衛門 道場の賭試合」
自粛の間、家にいてテレビの情報番組をずっと見ていたという凌鶴先生。
あとは新聞を隅々まで読んで…あと何故か普段は読まない情報誌も読んでいた、と。
それを新作を作ったり稽古をする時間に充てれば良かったんでしょうけど…でも私のような過ごし方をしていた芸人は多いと思います。
やっぱり我々は披露する場があってこそ、そこに向けて作ったり稽古をしたりするのが日常なので、いつ会ができるかわからない中、作ったり稽古をしたりするのはなかなか難しい…。

 

…わかるような気がする。
先が見えない中で精神がなんか普段とは違う状態になっているから、それを鎮めるためにひたすら情報を追い求めたり逆に情報を遮断したり…普段と違うことをすることで精神の安定をはかるようなところが私にもあった。
私はラジオの深夜放送をradikoのタイムフリーで昼間に流したり、マスクを作ったり、youtubeで昔のラジオやお笑いを見たり…。
普段貪るように読んでいる本が読めなくなって、落語の配信にもそれほど興味をそそられなかったもんなぁ…。

そんなまくらから「道場の賭試合」。
多分こういう時節だから、すかっとする物語を選んでくれたんだろうなぁ。
前にも聞いたことがあるけれど、安宅郷右衛門のキャラクターがいい。
一流の腕前を持っているのにめんどくさがり屋で朝からお酒ばかり飲んでいて門弟にお金をせびる郷右衛門。
酩酊した状態で道場を賭けた試合に挑みあっさり負けて去っていく。
勝った方が意気揚々と道場をきれいに作り直し道具も揃え門弟が百人になったくらいの時にまたふらりと現れて賭け試合を申し込む…。

スカっとして楽しかった!

 

凌鶴先生「後藤又兵衛大坂入城」
初めて聴く話だった。
若いころから頭脳と手腕を買われた又兵衛は、その活躍により主君の黒田の名前を上げたほどだったのだが主君との折り合いが悪く、ある時黒田家を出奔し浪人する。
細川家を始め、そうそうたる大名が「ぜひうちに来てくれ」と頼んでくるのだが…。

組織や権力に屈することなく自由に振舞う又兵衛に、少し元気をもらえた。
歴史に疎いので全然知識がないのだが、小説などがあったら読んでみたいと思える人物像だった。

 

凌鶴先生「八十三歳の女子高生球児」
あれ、これも聞いたことがあるはずなんだけど、自分のブログを検索しても出てこなかった。んん?書き忘れたか??

戦争や貧しさからまともに学校に通えなかったチエさんがある時バスの中で聞いた会話(中学を卒業できなかった人は定時制の中学に入ることができる)に「英語を勉強したい」という夢をかなえるために、76歳で定時制の中学に入学。
もっと勉強したくて高校に進み、そこで夜間高校の野球部に誘われて入部。
生徒や先生と心を通わせて、野球部の試合にも出た、という話。

前向きで人が良くて頼まれると嫌と言えないチエさん。
チエさんも生徒たちに励まされ、頑張り屋の彼女の姿に生徒たちも元気をもらっていることが分かる。

侍や剣術の先生じゃなくても…普通の人たちの中にも凄い人はたくさんいるしお互いに力を得たり与えたりすることができる。
元気が出る3席を聞かせてもらって私も元気が出た!楽しかった。

ギター・ブギー・シャッフル

 

★★★★

朝鮮戦争の傷跡が色濃く残る1960年代初頭のソウル。戦争で孤児となった主人公キム・ヒョンの心の友は、米軍のラジオ局から流れてくる最新のポップスだった。どん底の生活を続けていたヒョンは偶然の積み重ねで、憧れの龍山米軍基地内のクラブステージにギタリストとして立つことに―。新世代の実力派作家がK‐POPのルーツである60年代音楽シーンの熱気と混沌を鮮やかに描く。

朝鮮戦争で孤児になった主人公・キム・ヒョンが偶然昔の工場仲間と再会したことから、米軍基地内のクラブステージに立つようになる。

夢を追いかけ小さな成功を手にし恋をして、そしてそれらを失って…。

舞台は韓国なのに既視感があるのは、米軍基地を舞台にしているからなのだろうか。「ベルリンは晴れているか」や「オウリィと呼ばれたころ」と同じような空気を感じる。

彼自身は音楽の才能に恵まれていたわけではなかったのかもしれないけれど、地獄のような暮らしから抜け出して自立できたこと、友情に恵まれたこと、憧れの仕事ができたことの喜びが彼のその後の人生を輝かせていることが伝わってくる。

よかった。

 

勧之助の会

7/8(水)、らくごカフェで行われた「勧之助の会」に行ってきた。

 
・ 勧之助「夏泥」
・ 勧之助「やかんなめ」
~仲入り~
・ 勧之助「ちりとてちん
 
勧之助師匠「夏泥」
今日こそ江戸前に3席やりますよ、と勧之助師匠 。
そう言われても、勘之助師匠はトークがとっても楽しいのでこの師匠の場合はトークが長くなりすぎて落語の時間が短くなっても全然OKという気持ち。多分来ているお客さんはみんな同じ気持ち。その空気を察したのか「とはいうものの、今日はトークだけで終わっても許してもらえそうな雰囲気ですね」に笑う。
 
一門でzoom飲み会をした話。師匠が新しもの好きなのでお中元で一門全員集まるのはやめにした代わりに一門zoom飲みをしよう、と。
そんなん面白いんかい!と思っていたけど、師匠の言葉には逆らえない。
スマホにアプリを入れて使い方を弟弟子に教わって…師匠から送られてきたidとパスワードを入れてどうにか参加。
しかし参加人数が12名と多かったのと、PC画面ならわりと大勢を画面に移すこともできるらしいんだけどスマホだと基本発言している人しか見られない。
そうなると会を回している師匠と指名された人しか映らず…。もともと無口なおさん師匠なんか一度も映らない。
師匠が気を使って一人一人に近況を聞いてくれたんだけど、その時にようやく映ったおさん師匠。それが窓の前に座っているんだけど思いっきり逆光なので本人が真っ黒いシルエット…。お前…なんでシルエットなんや!!と思ったらおかしくてしょうがなかった、と。
 
…ああ、逆光になってるおさん師匠が目に浮かんでくる…。そして時々発する声がおさん師匠にそっくりで大笑い。
 なんだろう。トークも自由に話しているようでいてちゃんと落語になっているのがすごい。計算して作ってるっていうわけじゃないんだろうけどすごいな。この方、ラジオに向いてる気がする。  
 
そんなまくらから「夏泥」。
家にいる男のふてぶてしさ。ワルっぽい感じ。
泥棒は気弱でまじめ。
会話をしているうちにどんどんお金を出しちゃう。
「おれ…おかず食いなんだよ」と言われた時は「そうだよね。おかずも食べないとね」。
軽くてバカバカしくて楽しかった。
 
勧之助師匠「やかんなめ」
教わったものの自分には合わないわと思って寝かせていた噺とのこと。
癪のあい薬のまくらで「男の下帯」と言った後に「これってプレイでしょ?プレイですよね?男のふんどしできりりと締め付けると癪が治まるって。たまたま男のSと女のMが一致したってことですよね?」
おかみさんのあい薬が「やかん」には「いや…ないっしょ!!やかんをなめると癪が治まるって。ありえないっしょ。この噺、前提がそもそもファンタジーっしょ!」
 
…ぶわはははは。
自分で稽古していてどうしてもその突込みが出てきてしまって「この噺…合わない」と思ったのかな。
いやしかしこれがとっても楽しかったのだ。
侍に威厳があって…でも優しさと人柄の良さがにじみ出ていてチャーミング。
あと女中二人が女らしくて女主人を思う優しさと純朴さがあって。
合う合わないでいうととても合う噺のように感じた。
やっぱりこれって品がないとなんか見ていられないんだよね…。  
 
勧之助師匠「ちりとてちん
ちりとてちんを食べようとしてあまりの臭さにうわっと皿を遠ざけたときに「これが基本の形」と言ったのがツボにはまって大爆笑。  
こういう噺はきっと好きなんだろうなー。
もうやっていて楽しい~!というのが伝わってきた。面白かった。

サンセット・パーク

 

サンセット・パーク

サンセット・パーク

 

 ★★★★★

彼は28歳で、自ら知る限り何の野心もない。大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれの苦悩を抱えた男女4人は、見捨てられたこの小さな家から、不確かな未来へと歩み出す。不安の時代をシェアする若者たちのリアルを描く愛と葛藤と再生の物語。 

オースターは、内省的な作品よりこういう視点が変わって動きのある作品の方が好み。
という私はオースターの正しい読者ではないのかもしれないが。

主人公のマイルズは、ある出来事に対する罪の意識から家族の元を離れ連絡を絶ち、ブルックリンで死んだように生きていたのだが、ある時出会ったピラールという少女に恋をして彼女との将来を考えるようになる。

経済的に常に逼迫し将来に希望が持てずそれぞれの悩みや過去を抱えて生きている若者4人が、サンセットパークの霊園そばの廃墟に不法居住しどうにか人生を立て直そうとするのだが…。

2010年に書かれた作品だが今読んでもこの閉塞感は続いているどころかコロナ禍でさらに八方塞りになっていて、この世界でどうすれば羽を広げることができるのか、どんな未来を描けばいいのか…頭を抱えてしまう。

マイルズが最後に呟く言葉が胸に突き刺さるが、それでも生きていくしかないし、今を生きるためにはどうしたって希望は必要なのだ。
築き始めた小さな未来を自分で壊しても他人に壊されてもまた築いていくしかないように思う。

オースター作品の中でかなり好きな作品。(一番好きなのは「ブルックリン・フォリーズ」)

かわいい夫

 

かわいい夫

かわいい夫

 

 ★★★★

日々の暮らし。父との死別。流産。ふたたびの妊娠。さまざまな出来事をとおして、浮かび上がってくる、あたらしい結婚の形。変化していく、作家のこころ。毎日、少しずつ読みたくなる、結婚エッセイ集。 

 夫のことを「かわいい」と言うの、面白いなと思う。
ナオコーラさんが旦那さんと一緒に文豪のお墓参りに行くエッセイを前に読んでいたので、ああ、こういう感じなのか(このご夫婦は)とちょっと納得。

旦那さんはきっとデリケートで自分の弱さもよく知っている方なんだろうなと思う。
ナオコーラさん自身もそれほど強い人ではないと思うけれど、お互いに足りないところを補い合い、いいパートナーなんだろうなということが伝わってくる。

旦那さんの帰りを最寄りの駅のカフェで待つエピソードが好き。自分の「パートナー」を待つ安定した気持ちと、自分と相手の気持ち、二人の関係性がずっとこのままではないだろうという少しの不安。

お子さんが2人できて二人はどんな関係になっているのか気になる。

池袋演芸場7月上席昼の部

7/4(土)、池袋演芸場7月上席昼の部に行ってきた。
久しぶりの池袋演芸場。テケツが奥まったところじゃなくなっていてチケット買う時に検温&消毒。中で飲食ができなくなってしまっていたのは残念だけど仕方ない。


・空治「真田小僧
・吉好「反対俥」
・一矢 漫談
・昇りん「ブーケの行方」
・傳枝「壺算」
・真理 漫談
・米多朗「たがや」
・寿輔「親子酒」
~仲入り~
東京ボーイズ 歌謡漫談
・南なん「不動坊」
・蝠丸「弥次郎」
・正二郎 太神楽
・圓輔「船徳

 

昇りんさん「ブーケの行方」
二ツ目に昇進したばかりの昇りんさん。新作。
男同士話をしている。どうやら片方が花屋で片方が明日結婚する新郎。新婦のひまわりちゃんが花好きなので会場にひまわりの花をたくさん飾り、ブーケは薔薇の花束。
「明日は来てくれないのか?」という新郎に「申し訳ないが、おふくろが病気で入院中で」。
「それじゃ仕方ないな。おふくろさんによろしく」
そう言って新郎が去っていくと、元気なおばさんが入ってくる。それが男の母親。
その二人の会話で明らかになる事実。そして男の未練がもたらしたおっちょこちょいな展開…。

分かりやすくて面白かった。無駄に(笑)おっちょこちょいで元気な母親がいい味を出してた。

 

寿輔師匠「親子酒」
いつものように客をいじりつつ…前列の女性が落語本をチェックしながら落語を見ていることをいじりながら、何が聴きたいかと尋ねると、彼女が「師匠の古典が聴きたいです」。

それをうけての「親子酒」。
旦那のお酒の飲み方がとにかく美味しそうでちょっと卑しくて思わずごくり。
またお酒の催促の仕方がふわふわっとしているんだけど絶対断れないわこれ…っていう…小さな声だしふわふわしてるんだけど絶妙に威圧感があっていかにも寿輔師匠らしくて笑ってしまう。

帰って来た若旦那はべろべろで大笑い。
すごく楽しい「親子酒」だったー。「古典が聴きたい」とリクエストした彼女に感謝。

 

東京ボーイズ 歌謡漫談
いつもと違う内容でなんかとっても得した気分。
明らかに即興の「高崎は今日も雨だった」。歌詞に大笑い。あーー楽しい。

 

蝠丸師匠「弥次郎」
噂には聞いていたけどフツウじゃない蝠丸師匠の「弥次郎」。
行った先は北海道じゃなくてハワイ。医者である叔父さんのパーティに呼ばれて。
病院ベスト10は微妙(笑)と思ったんだけど、フルーツベスト10に大爆笑。ということは病院はフリだったのか。
山越えしようとして出会うのはイノシシじゃなくて白クマ。
え?ハワイで白クマ?いやいや白クマじゃなくて白い熊。
ばかばかしさと、時々入る蝠丸師匠のぼやきで大笑いだった。

 

圓輔師匠「船徳
居候のまくらから「船徳」。
若旦那がいかにも若旦那らしく、色気があって甘ちゃんな感じ。「船頭にでもなろうと思うんだ」。
親方に言われて船頭たちを呼びに行く女中がいかにも人を食った感じでおかしい。
ドキッとしたのは、船頭たちを呼ぶ声の大きさ。その声で船頭たちが遠くの方にいる絵が浮かんでくる。奥行きが出るっていうことなんだな。すごい。

親方に小言をくらう覚悟で集まって船頭たちがぎゅっと集まっている絵も浮かんできたのはなんでなんだろう。きっとちょっとしたところ…視線のやり方とか声の大小とかそういうところ?

舟に乗ってからの展開もちょっといいなりをしたお客二人と最初はかっこつける余裕のある徳の絵が浮かんでくる。
船の中から知り合いを見つけて呼ぶ場面もその距離感がしっかり伝わってきて絵が浮かんでくる。

88歳とはとても思えない素敵な「船徳」だったー。かっこよかったー。