りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第三回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

5/30(土)、第三回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)に参加した。

 

さん助師匠「青菜」
今回は前半にトークはなく、高座が映るとそこには着物姿のさん助師匠。
まくらからすぐに「青菜」だと分かる。

さん助師匠の「青菜」は何回か見ていてその時はお屋敷の旦那もちょっと変人っぽい印象があったんだけど、今回は品のいいちゃんとした旦那だった。やっぱりお客さんがいないとテンションが上がらないのかな…。ってがっかりするのもどうかと思うが。

お酒を勧められて恐縮しながら縁側に座って「やなぎかげ」をいただいて「鯉のあらい」をごちそうになって…。
このやりとりがあっさりしすぎていてちょっと寂しい。
小三治師匠ぐらいたっぷりやってほしい(笑)。

お屋敷をあとにして家に向かいながらやたらと感心しているくまさんがお屋敷での出来事を振り返るところで、「これや」と旦那が声をかけるとふすまがすっと開いて奥様が三つ指ついて「旦那様?」と言うところは、すでにちょっと乞食っぽくておかしい。

家に帰ってからおかみさんに「今日はお屋敷で感心しちゃった」と話すところもあっさり。
ここもくまさんの自慢をことごとくへし折るおかみさんを見たかったな。

建具屋のはん公を家に呼び入れてからの展開もはん公があっさりしていてちょっと肩透かし感。
もっと二人の激しいやりとりが見たい。
なんかとてもあっさりした「青菜」で、それはそれで風流?かもしれないけど、やっぱり私はもっとさん助師匠らしい異常な「青菜」が見たかったかな。

 

さん助師匠 トーク
この日はトークに入った途端、カメラトラブル?
unaさんは相当焦ったと思うんだけど、それ以上にさん助師匠が慌てて、そのわりに今おそらく手いっぱいのunaさんに向かって「コーヒー飲まないんですか?」とか言って「今カメラを手に持ってるので!(怒)」と言われてるのがおかしい。ぶわはははは。
ねぎらいの気持ちで言った?のかもしれないけど、今それどころじゃないのが見ていてわからない?!という状況が目に浮かぶ。

そのコーヒーもケーキも自分が買ってきたのだ、というさん助師匠。
「普通は主催者の方が用意してくれると思うんですけど、こちらの会では演者自らが買ってこないと出てこない…」「コーヒーもケーキも成城石井で買ってきました」。

それからずっと見ていたという「あしたのジョー」。
自分は誤解していて「あしたのジョー」の最終回はジョーがリングの上でたてなくなってしまうところで終わるのかと思っていたらそうではなく、ジョーがドヤ街を出るところで終わりなのだとか。
で、続編の「あしたのジョー2」というのがあるらしいのだが、これは「あしたのジョー」と随分テイストが違うらしい。
「2の方はテンションが高くて…ジョーのトレーナー役の…あの片目の人も…なんていうか普通でも×××!!!みたいなテンションで…」。

…例によって説明が下手でよくわからなかったのだが、想像するに「あしたのジョー」の方はわりと暗めでそこが好きだったから「あしたのジョー2」のハイテンションは受け入れがたいものがある?ということを言いたかったのか。

「もう何を楽しみに生活したらいいのか…」ってあなた…。何か…見つけてください(笑)。

 

6月から寄席が始まることなどにも触れて、徐々に普通に戻ればいいな…とつぶやく師匠に激しく同意しつつ。

次回は6/13(土)16:00開演 とのこと。

師いわく: 不惑・一之輔のゆるゆる人生相談

 

 ★★★★★

不惑を迎えた落語家・春風亭一之輔が、迷える読者のお悩みにゆる~く答える人生放談!聞き手は写真家・キッチンミノル。オフビートな問答の向こうに、人気噺家の人柄も見えてくる…ついに単行本化!! 

 一之輔師匠が寄せられた相談に回答するという内容。

聞き手であるキッチンミノルさんとの掛け合いは漫才のよう。回答の前に二人のやりとりがあるのが落語に入る前のまくらのようで程が良い。

師匠の回答が基本的にはふざけているようでいて核心をついていてバカバカしいのに励まされる。そして時々どきっとするような名言が飛び出すので気を抜けない。

この本の出版記念のトークショー&落語会にも行ったんだけど、あの時も会場にいたお客さんからの悩みに答える師匠の瞬発力と洞察力にびっくりした。

いったんは笑える回答で突き放しておいて振り向いて具体的なアドバイスをする感じ。一之輔師匠ってジャイアンのび太が同居してる。そこがとっても面白い。

ジョイ・ラック・クラブ

 

 ★★★★★

1949年、サンフランシスコ。過去の影に引かれるように4人の中国人女性が集まり、マージャンの卓をかこみ、点心を食べ、昔話をする会を開く。彼女らはその集まりを“ジョイ・ラック・クラブ”と名づけた。それからほぼ40年が経って、メンバーの一人が亡くなった。その娘があとを引き継ぎ、母親の長年の希いと悲劇的な秘密を初めて知らされる。それをきっかけに、“ジョイ・ラック・クラブ”の女たちは各々の過去をたどり、記憶にとどめ、物語りたい衝動にかられていく。

18年ぶりに再読。

さまざまな事情で中国を脱出しアメリカに渡った女4人。結婚し娘を持つがアメリカで生まれ育った娘たちと母たちはお互いに分かり合うことができない。

母の期待に応えられない自分と過剰な期待をかけてくる母へ反発する娘たちの物語は今の自分とも地続きでリアルに感じられるが、一方で母たちの物語は信じられないほど過酷だ。

時代や国の違いから理解できなかった母親を、死後にようやく理解する…。
親子だからこそ分かってくれないことへの恨みや苛立ちが募るのだが、親子だからこそ許し合うことができる。
親から子へ、引き継がれていくもの、いかないもの。お互いに全てを受け止め合うことはできなくても守られている、思いをつないでくれる、そんなかすかな希望を感じることができた。

当時も読み終わって「大好きだ」と思ったのだが、今回もやっぱり大好きだと思った。

アイネクライネナハトムジーク

 

 ★★★★★

ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL…。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。 

 映画を先に見ているので、映画が原作のエキスを正確に表現していたことと、映画の軸になっていたストーリーがこの中にないことに驚きと感動があった。今泉監督ってすごい。

登場人物がそれぞれに個性的で生き生きとしているのでその求心力で物語の中に引き込まれる。
人物もいいけどセリフがいい。

「俺と彼女の関係は…ベリーベリーストロングになったわけだからさ」は痺れるセリフ。

シッピング・ニュース

 

港湾ニュース

港湾ニュース

 

 

シッピング・ニュース (集英社文庫)

シッピング・ニュース (集英社文庫)

 

★★★★★

クオイルは無器用な三十男。大学を中退、三流新聞に拾われるが解雇されてしまう。初めて出会った女に夢中になり結婚するが、浮気をし放題の性悪女で挙句に事故で死んでしまう。父と母も借金を抱え自殺。残されたのは二人の娘だけ。彼は人生をやり直すために娘達と唯一の血縁の叔母を伴い、父祖の地ニューファンドランドへ渡る。そこには一族の名前が付いた岬があり、叔母が数十年前に捨てた家があった。クオイルは地元の新聞に船の情報―港湾ニュースを書く記者として雇われ、島の生活を始める…。全米図書賞&ピュリッツァー賞をW受賞。ハートランド賞、アイリッシュタイムズ賞など各賞を総ナメし、PW誌1位に輝いた感動の小説。

最近本当に本が読めなくなってきているので、以前読んで好きだった本を少しずつ再読することに。

虐待されて育った主人公のクオイルはコンプレックスの塊のような男。
妻に裏切られた彼は二人の娘と叔母と一緒に父祖の地へ渡り、地元の新聞社に港湾ニュースを書く記者として雇われる。

茫然自失のような状態で生きてきたクオイルが、記事を書く中で島の人たちと心を通わせ、徐々に自分の人生を生き始めていく。

過酷な出来事も悲惨な事件も全て生活の一部で、日々の暮らしを生きることが人生そのものなのかもしれない。
地味な物語なんだけど、読み終わった時ほんの少し元気をもらえる。
現実がディストピア小説のようになってきた今こそ読むべき物語だったのかもしれない。

よかった。

第二回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

5/9(土)、「第二回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)」に参加した。


・さん助師匠「銀嶺のコロナ」

第一回はさん助師匠とunaさんが並んでトークだったけど、今回はそういう始まり方ではなく。
unaさんが一人で開演前の注意事項などを話し終わると「じゃそろそろ…始めます」。

そのちょっと前からなんかバンバン叩くような?音がしていて、え?誰か気づかずになんか音を出しちゃってる?落語聞いてる後ろで奥さんがたたき作ってるとか?んん?

ちょっとするとカメラが切り替わり高座。
そこに映ったのはさん助師匠。着物じゃなくて白いTシャツ姿。ん?
しかも高座の上で扇子をバンバン打ち付けながら悶えてる…。さっきからのバンバンいう音はこの音だったのか。


「あーーくっそー。すごい吹雪だ。ピレネー(コメントで教えていただきました。ありがとうございます!)はさすがに…ぜいぜい…」「落語協会からの依頼で、ピレネーの…銀嶺に…コロナ菌の総本山があるからそこで落語をやってきてくれっていう仕事だったけど…交通費別で三万円…俺…なんでこんな仕事を…ぜいぜい…受けちゃったんだろう…」。
「銀嶺に…コロナの親玉がいるって…そいつを倒すには…時そばを聞かせればいいって言われたんだけど…時そば…なんでその大役が俺に…」
「さっきから銀嶺銀嶺って…ただその単語を使いたかっただけじゃねぇかって噂もあるけど…説明しないと場所も状況も伝わらないから連呼するけど…この吹雪の中…銀嶺を…ぜいぜい…この先にコロナがいるって…ぜいぜい…」
「あ!あそこか!なんか光が…あそこなのか!」

さん助が近づいていくとそこにいたのがまさにコロナの親玉が。
「あーーどうも」
「え?お前がコロナ?なんか噺家っぽいけど…」
「私がコロナ亭ゴールドです」
「コロナ亭ゴールドって…三遊亭なにがしみたいな発音で言うけど…何者だお前は?」

「コロナ亭ゴールドというのは名跡で…私はこの度二代目を名乗ることになっていてその披露興行も始まるところなんですよ」
「なんだとー。そんなことはさせない。今からお前の前で時そばを…やってやる!」
「え?時そば?…時そばといえば五代目小さんが絶品…。あと三代目三木助江戸前の芸で…私はそういう名人の時そばを聞いてきたんだ!」
「え?そんな名人…いや…俺だって負けない」

…というと、たどたどしく(笑)「時そば」をやり始めるさん助。
「そーばーーーうーーー」
「おい、そばやさん。何ができる?花巻にしっぽく?じゃしっぽくを熱くしてもらおうか」
「あ、はい」

…あーーなんか…やりづれぇな。ちくしょー。そうだ。とにかくそばを食うしぐさだ。得意の俺のそばを食う仕草を食らえ!

そういって、ずずーーずずーっとそばを食べる仕草。
「そばだぞ。これはそばだぞ。ずずーー」

するとコロナ亭ゴールドが「うぉーーー」と苦しみだす。
「あ、光が薄れてきてる!ここが踏ん張りどころだ!」
さらにそばを食べる仕草を繰り返すさん助。
「下手…下手すぎるーーーー。こんなのは…見たことがない…!」

さん助のあまりに下手な「時そば」にコロナ亭ゴールドは滅び、この世界に再び平和が訪れたのであった。(完)

 

…ぶわははははは!なんじゃこりゃ!!
前に駒込落語会で似たようなシチュエーションの三題噺を聞いた気がするんだけど、それのコロナ版?!いったい何を見せられたんだ、私たちは。おかしすぎる…。


…しばらくするとカメラが切り替わって、喫茶店のバーチャル背景にさん助師匠一人。「いやあの…なんか…この中で…着物を着て古典をやるのもなんか違うかなとちょっと思いまして…」

…チャレンジャーや(笑)。ほんとに毎回いろいろ試行錯誤して生身のさん助をぶつけてくれてありがとうとしか言いようがない。

それからはunaさんとのトーク

5月末に行われる予定だったuna galleryでの夜の九時落語を中止にすることを発表。

「なにせこちらは三密になっちゃいますから…具体的に三密が何を指してるのかぼんやりとしかわかってないんですが。でもこれで緊急事態宣言が解除されたからといって、すぐに元通りというわけにはいかないですよね。みなさんもあれこれ気にしながら落語に来るのも嫌ですよね…」と。

また、特にお年寄りはこの事態で本当に怯えて外出を全くしなくなっている、と。
「また実はそういう方々が落語家を結構支えてくださっていたんですよね」と。

だからそういう方々が安心して来られるようになるまではなかなか落語会も普通には行うことができないだろうし、そういう人たちに支えられていた自分たちも分岐点に来ているのかもしれない。

落語協会噺家youtubeチャンネルを紹介するページができたことなどにも触れ「落語会の形態も変わってくるかもしれないですね」と。

 

それから前回見ていると言っていた「明日のジョー」。今も見続けているというさん助師匠。
ついに力石とジョーが闘って、力石が死んでしまったところまで見たらしい。
なんでも力石はジョーと闘うために過激な減量をし、そのために死んでしまったのだとか。

力石というのはものすごい人気のキャラクターで亡くなった時にはリアルでお葬式が開かれたんですよ、などというマメ知識も披露。

なんてことを話しながらさん助師匠が明日のジョーの世界に入ってしまったのか「生きてるって言ってみろ…」と言い始め「生きてるって言ってみろ…生きてるって言ってみろ…生きてるって言ってみろ」と大声を出したところで終了。

ぶわはははは。シュールかよ!

 

私は正直、配信で落語を見ても面白いと思えなくてほとんど何も見ていない。
もちろん配信やオンライン落語会をやってる噺家さんを否定する気持ちはないんだけど、見ると「ああ、生で見たいなぁ」という気持ちになってしまうので、見る気がしないのだ。

でもこの間twitterでとある噺家さんが「今オンラインで落語会をやってる噺家でお金のためにやっている人はほとんどいない。噺家は人前で落語をやってこそ噺家だから、みんな噺家であろうとしてやっている」というようなことをつぶやいていて、ああ…そうなんだろうな、と思った。

さん助師匠なんかオンラインと最も遠いところにいる人で、たぶん通常であれば「お客さんがいないところで落語をやるなんて恥ずかしいからありえないよ」と一蹴するところなんだろうけれど、今はこうやってリモートであっても人前で落語をしたり話をする機会を無駄にしたくないと思って、やっているんだろうと思う。

自分で環境を用意したりできないところを、unaさんに「やりましょうよ」と言ってもらってあれこれ試行錯誤しながらチャレンジしてる。
それを他のお客さんと一緒に見届けることができるというのも、幸せなことなのかもしれない。

なんてことを思いつつ…。次回は5/30(土)とのこと。

本人伝説

 

 

本人伝説

本人伝説

  • 作者:南 伸坊
  • 発売日: 2012/09/07
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

顔全体で本人になりきる。それが重要。

管直人から浅田真央松田聖子から橋下徹まで近年の有名人になりきる「本人術」。なりきれば真実が見えてくる?!爆笑必須の一冊

 

とにかくバカバカしいものが読みたくて積んでいたこれを。

すごく感じ出てる~というものから、違う!これは違う!というものまで、出来不出来にばらつきがあるのがまた楽しい。

何度見ても爆笑なのがスティーブ・ジョブズワンチュク国王、吉本隆明茂木健一郎
似ていなさ過ぎて笑ったのが由紀さおり澤穂希

読みながら何度も何度も「馬鹿だなぁ…」ってつぶやいてた。最高。

プルーストを読む生活1 第一篇スワンからゴモラまで

プルーストを読む生活1 第一篇スワンからゴモラまで」(柿内 正午)

★★★★★

神保町でプルーストの「失われた時を求めて」を全10巻を買った作者が毎日少しずつプルーストを読みながら読書とそれ以外のことをつづった日記。

本屋さんのイベントで店主さんから勧められて購入していたのを読書がすすまない今こそ読み時なのではと思い読んでみた。

面白い!と何もそこまでいろいろ考えなくても(めんどくさ!)と私もこういうのやってみたい!の間をぐるぐるしながら楽しく読んだ。

こんな時だからこそ読んで楽しかったし励まされもした。
本を読むことは孤独な行為だけど扉が開いて視界が開ける楽しさは格別。
知識を得るために本を読むということはしないけれど、自分以外の誰かの言葉、自分の知らない世界を知ることができることはなんて贅沢で幸せなことなんだろう。

そんな気持ちになった。

いま、幸せかい? 「寅さん」からの言葉

 

いま、幸せかい? 「寅さん」からの言葉 (文春新書)
 

 ★★★★★

「困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ」心に沁みる154のメッセージ。 

 寅さんファンの滝口悠生さんが映画の中からやりとりの妙を味わえる「場面」を中心に選んだセリフ集。
私もまだ全作品を見られていないのだけれど、なぜ自分が今寅さんにハマったのか、どんなところにぐっときたのか、それが言語化されていて「そうそう!」と読んでいてとても気持ちよかった。

寅さんの傷つきやすくて純粋でわがままな子どもみたいな面と人の辛さにそっと寄りそう優しさ。
そんな寅さんに振り回されながらもいつも待っててくれる柴又の人たち。

「人情」という言葉では表し尽くせない。
寅さんは思ってるよりめちゃくちゃだし矛盾だらけだし弱いしカッコ悪い。
だけどそのダメ人間ぶりがなんとも人間らしくて愛おしくて寂しくていいんだ。

いいセリフが沢山あってじーんとくる。
寅さんにはまって寅さん本をあれこれ読んでるけど、これはほんとによかったー。

第一回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

4/29(水)、「第一回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)」に参加した。


・さん助師匠&unaさま トーク
・さん助師匠「五月幟


さん助師匠&unaさま トーク 
前回同様15時半開場、16時開演の予定で、unaさまが前回の反省を生かして注意事項を画面共有してくれたり、画面のピン留めの説明など。
「音聞こえてるよー」などのコール&レスポンスなどしていると、画面上でunaさんが「え?出る?え?この間は頑なに時間まで映らなかったのに?え?」。
なんとここでさん助師匠登場。

今回は海外のカフェのバーチャル背景。これはどうやらさん助師匠がこだわったらしい。
「una cafe」だけどさん助師匠としてはカフェではなく純喫茶でいきたかったのかな? 
バーチャル背景で二人が画面に並ぶと時々「人」が消えるのは、AIが処理しきれないのか。
自分もバーチャル背景にしてるんだけど肩のあたりが一瞬消えたりして、なんとなく「電波少年」を思い出したり。

4月2日に池袋演芸場でやって以来、人前で一度も落語をやっていないというさん助師匠。
おそらく4月に入ってからは大小問わず落語会は一つも開催されてないのではないか。

戦時中でも寄席は開いていて空襲警報が鳴ると防空壕へ避難したというくらいだからまさに前代未聞の事態。
でも調べたら百年前に日本でもスペイン風邪が流行って10万人が亡くなっていてその時には寄席は休みになった、と。
その時に噺家はいったいどうやって過ごしていたのか、それが知りたい。
当時はネットなんかなかったわけだから今みたいにオンライン落語会とかできなかったはず。それでも落語はこうして今まで残ったんだから…。
いやでも今回のことで落語のあり様も変わらざるをえないかもしれません。
オンライン配信とか距離を保つとか…。

…そうだよなぁ。いったいこの状態がいつ収まるのか分からないけど、でも今までみたいに会場に入れられるだけ客を入れて…とか、そういうのは減るのかもしれない。ウィルスが完全にゼロになることはないだろうから。

そんな話からunaさまが「最近何をやってるんですか」と質問。
「ええと…あしたのジョー見てます」
「は?」
あしたのジョーが…期間限定で無料で見られるんです」
「え?あしたのジョー…」
あしたのジョーってどういうイメージ持ってますか?」
「イメージって言われても…”立つんだジョー!”…ぐらいですかね」
「根性!って思ってません?」
「は?」
「根性物っていうイメージじゃないですか」
「あ、ああ…そうですね」
「違うんですよ、これが意外と。なにせ10回目まではジョーはボクサーじゃないんです。それが刑務所で力石と出会ってボクシングをやることになるんです」
「力石?いましたね、そういうひと。力石は最初からボクサーなんですか」
「そうです。力石はボクサー。ジョーは不良で…盗みをやって刑務所に入るんです。そこで力石と出会って…。ああ…なんか面白いですね。こうやって話してると…(画面を見て)お客さんがどんどん引いていってるのがわかります…」

…ぶわははは。そんなことないよ。面白い。でもなにせさん助師匠が説明下手で(笑)。

じゃそろそろ落語を…ということで高座へ移動。
高座になるとバーチャル背景はやめて…いつものuna gallery。おお、ここでやっていたのか。なるほど。

さん助師匠「五月幟
酔っぱらって帰って来たくまさん。
「またお前さんそんなに飲んで」
「いやまぁそう言うなよ」
「あのね、今年は坊の初節句なんだよ。それなのにお前さんはお酒ばっかり飲んで。坊にお祝いもしてやれないじゃないか。それでおじさんが可哀そうに思って”これで坊に人形を買ってやれ”ってお金をくれたんだよ。だからあたしは今から買いに行ってくる」
おかみさんからそう言われたくまさん。
「人形は俺が買いに行くよ」
「いやだよ。お前さんにお金を渡したらまた飲んで来ちゃうじゃないか」
「いくら俺だって坊に買う人形のお金で飲んだりしないよ。こういう買い物は女が行くと足元を見られるから男の俺が行ってくる」

力強く言って出て行ったくまさん。
しかし近所の店から弟分が「ああ、兄い、いいところに来てくれた。頼むよ上がってくれよ」と声をかけられる。
断り切れずに上がるとそこには若い連中が大勢。
つられて酒を飲むとすっかり気が大きくなり「ここは俺のおごりだ」と言って人形を買うお金を全部使い果たしてしまう。

酔っぱらって帰ったくまさんにおかみさんは「ほらやっぱりお前さんったら」と怒り沸騰。
くまさんは二階に上がって寝てしまう。
そこにおじさんが訪ねてきてくまさんに説教をするのだが、おじさんの言葉にいちいち洒落で返すくまさん。
おじさんも思わず「お前、うまいな」と笑ってしまう。

そこへ先ほどの若い連中が訪ねてきて「さっきは兄いにたかるようなことをしてすまなかった」と謝る。
家に帰ってそれぞれのおかみさんに「その金は坊の人形を買うお金だったんだよ」と言われ、みんなでお金を出し合って人形を買ってきた、と。それがサゲにつながっていて、面白かった!

…前にもさん助師匠で聴いたことがある!と思っていたら、その後のトークで「これは春風亭柳枝師匠がやられていた噺で…今はほとんど誰もやらないんじゃないですかね」とさん助師匠。
さん助師匠は柳枝師匠の元お弟子さん(?と言ってたような)から承諾を得てやっている、とのこと。
さらに、本当はおじさんとの洒落合戦で終わりなんだけど、それじゃあまりにも可哀そうだと思って、近所の連中が人形を買って持ってくる、というのを付け足した、と。

「余計なこと…だったかもしれないんですが、このままだとあまりにも可哀そうで」。

…そうだなー。この展開の方が後味がよくていいよ!

オンライン落語はどこを見ていいかわからなくて…とおっしゃっていたさん助師匠だったけど、全然大丈夫だったのでその調子その調子(←何様)。
次回は5/9とのこと。わーい。

ひみつのしつもん

 

 

ひみつのしつもん (単行本)

ひみつのしつもん (単行本)

 

 ★★★★★

奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、みたび開幕!ちくま好評連載エッセイ、いよいよ快調な第三弾! 

日常と異次元が地続きでぼんやりしていると別の場所に連れて行かれてしまう岸本ワールド。

言い回しや言葉のリズム、韻の踏み方が絶妙で気持ちいい。だからこの方の翻訳した作品は面白いのかな。

なんでもまずはにおいを嗅いでしまうとか、重たい腰がいつまでたっても上がらないとか、記憶が全然ないとか、同じことを話しても全然信じてもらえないとか、どこにいてもたいてい一番下に位置付けられてしまうとか、わかるわかるの連続で「これは私?」と思ってしまう。

楽しかった。

鉄の門

 

鉄の門 (創元推理文庫)

鉄の門 (創元推理文庫)

 

 ★★★★

十六年前に死亡した親友ミルドレッドの夫である医師アンドルー・モローと再婚したルシールは、一見平穏なその生活の裏側で継子や義妹との関係に悩み続けていた。ある冬の日、謎の小箱を受け取ったルシールは何も言い残さず姿を消した。日常の微かなひびの向こうに広がる荒涼とした心理の内奥を描いて、ミステリに新風を吹き込んだ巧手ミラーの初期を代表する傑作、新訳で復活。 

冒頭では冷静沈着、計算高い女に思えたルシールが、怪しげな小男が届けた小箱を受け取ったとたん叫び声を発して失踪してしまう。
家族が彼女を見つけ出した時にはルシールは元の彼女ではなくなっていた…。

正気と狂気の境界は曖昧でぐるぐる回る思考は以前は見えなかったもの、見たくなかったものを次々見せていく。
いったいこれはどういうことなのだ、何が起こっているのだと目を見張っているうちに、次々人が死んでいく…。

今どきのミステリーにあるようなスピード感やサービス精神はないけれど、心理描写が巧みで読ませるなぁ。夢中で読んだ。

柳家さん助 zoomで実験落語会

4/18(土)、「柳家さん助 zoomで実験落語会」に参加してみた。

実験的にやってみますという落語会。
さん助師匠がzoomアプリを入れることができるの?自分でスマホの位置を調整して配信とか無理なのでは?という不安があったのだが、UNA galleryに高座を用意して配信はUna様がやるという形。よ、よかった…(笑)。

参加する側もzoomアプリを入れて準備。
そうか。観客も顔を映した方が良いのだろうな。ということは化粧しなきゃ。何日かぶりに。生活感あふれる部屋が映るのは恥ずかしいから背景も設定して。ビデオを起動してみると、ぎゃーーーひどい顔ーー。せめて光が当たって顔がぼやけるように…と日当たりのいい場所に移動してみたり電気をつけて見たり。
誰もあたしの顔なんかたいして見やしないよと思いつつ少しでも被害を小さくしようとする女心よ、よよよ…。

15:30から開場(!)ということで参加。
音の聞こえ具合や高座の見え方などをチェック。なんか自分も一緒に作ってる気分で楽しいぞ。
その間、一度も映ることのないさん助師匠。画面に映らない位置に茫然と立ってる姿が目に浮かぶよう…。

16時、いよいよ開演。カメラが高座を映すと、そこにはちょこんと座ったさん助師匠の姿が。
あれ?動かない?静止画像に切り替わった?そんなことある?と思って見ていると「お願いします」とuna様の声。
頭を下げるさん助師匠。静止画像だったわけでも回線が固まっていたわけでもなくて、さん助師匠が固まってたんだ!ぶわはははは!

 

さん助師匠「蒟蒻問答」
こんな事態になりまして…みなさん、お元気でしょうか、とさん助師匠。
私はこの通り、元気でおります。
この間、歯医者へ行ったんですが…いつものように入ろうとするとまずは熱を測らせてくださいと言われまして。
みなさんご存じですかね。今の体温計って脇に挟まなくてもいいんですね。なんかピッて遠くの方から赤外線かなんかで測れるんですね。
手首とおでこを測られたんですが、手首はすぐに測れたんですがおでこが…最初反応しなくて…看護師さんが体温計をこうずらしていって…この辺り(頭頂より少し下あたり)でようやくピッて反応。
どうやらここが私のおでこのようです。

 

…ぶわはははは。なんかおかしいぞ。
今回実験で一席目は見ている我々もマイクをONにしていたんだけど、そうすると制御が大きな声を出した方に移ってしまうので、ちょっと笑い声を抑えたりして。

そんなまくらから「蒟蒻問答」。
ああ、さん助師匠の「蒟蒻問答」といえば、真打昇進披露興行の時に鈴本で見たんだった。なんか泣きそうだ。

偽坊主の八も蒟蒻屋の六兵衛も揃って柄が悪い(笑)。
お経なんか読めませんよと言う八に六兵衛が「いろはにほへと」とやればいい。コツはすぐに「いろはに」を言わないこと。こんな風に…とやるのがなんか妙におどろおどろしくておかしい。
あとは「金魚赤いよ黄色いよ」だったか?聞いたことがないフレーズなんだけどバカバカしくて笑ってしまう。

旅の僧が問答を願い出て、八はここにあるものをバッタに売ってずらかろう、と考えるんだけど、「いや待てよ。それじゃ親分に申し訳が立たない」と言って、まずは親分に相談しようと六兵衛を訪ねていく、というのは初めて聞く展開。
話を聞いた六兵衛が「そうかいよいよ来たか。そろそろ来るんじゃねぇかと思ってた」。

いざとなったら殺しちゃおう。埋めるところはたくさんある、のセリフもこの親分だと信ぴょう性が(笑)。
あっかんべーもかわいくて、楽しい「蒟蒻問答」だった。

 

さん助師匠「十徳」
2席目はもう少し短い噺をと「十徳」。
最初にご隠居を訪ねてくるところが、なんかわやっとなったのはなんだったんだ?
なんかやっぱりお客さんがいないと調子狂うのかな、と思いつつ。
はっつぁんを迎えるご隠居のノリがいいのがさん助師匠らしくて楽しい。

十徳の説明を聞いてはっつぁんが妙に感心したことに気を良くしたご隠居が「じゃ、これも教えちゃおうかな」と次々橋のいわれを説明して、はっつぁんがいちいちそれに感心するおかしさ。
この二人、ほんとに仲がいいんだなぁ。

勇んで床屋に戻って友だちに橋のいわれを説明しようとするんだけど、全部先に言われてしまい、「お前…物知りだな…」に笑う。

「5と5」が出てこないで間違えまくってるうちに変なテンションになっていくのがさん助師匠らしくておかしかった。

 

お客さんの反応が直接ないとやっぱり少しやりにくいんだろうな、ということは感じたけど、でも大好きなさん助師匠の落語をこうして聞けて嬉しかった。
またやってほしいな。そして今度はちゃんと有料でやってほしい。

初めてオンライン落語会参加したけど、楽しかった。

背高泡立草

 

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

  • 作者:古川 真人
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

草は刈らねばならない。そこに埋もれているもは、納屋だけではないから―。長崎の島に暮らし、時に海から来る者を受け入れてきた一族の、歴史と記憶の物語。第162回芥川賞受賞作。

母親の実家がある離島に草むしりにかり出された主人公。母、その姉、姉の娘、母の兄の5人で島へ向かいながら賑やかに続くとりとめのない会話中心に進む平和そのものの現代パートと、主人公が目を止めた「古か家」「土間」「鯨捕りの網」「カヌー」にまつわる過去のパート。そちらはドラマチックな物語が展開していくのだが最後までは語られずぷつっと終わる。

え?どういうつながりが?とちょっと煙に巻かれた感じなのだが、読み終わってみると古い家や土地には誰にも語られることがない物語があり人間が去った後に残るのは雑草なのだな、と感じる。
家は人が住まなくなると荒れ果てて隙間を埋めるように雑草が生える。
彼らはいろんなことを知っているのかもしれないが、何か教えてくれることはない。

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

 

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)

  • 作者:イ・ギホ
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ★★★★★

ネット古書店エゴサをしていたら、サイン入り自作が売りに出されていることに気づいた作家「イ・ギホ」。しかも他の作家の本より格安、酷評のコメント付きだった。悶々として眠れぬ彼は、出品者に直接会おうとはるばるでかけるのだが…。(「チェ・ミジンはどこへ」)。「あるべき正しい姿」と「現実の自分」のはざまで揺れ、引き裂かれるふつうの人々を、ユーモアと限りない愛情とともに描く傑作物語集。 

 在宅勤務が始まったらすっかり本が読めなくなってしまった。

通勤と一人のランチタイムに読むことが多かったせいもあるけれど、それ以上にちょっと気持ち的に参っていたのかもしれない。自分の中に本を読むスペースがなくなってしまっているような感じ。

図書館から届いた人気本を開いては1ページも読めずに閉じる…を繰り返していたんだけど、内容によっては読めるかもしれないとこの本を手にして正解だった。
毛羽立った心が少し慰められたような気がする。

全編通じて描かれているのは「恥、羞恥」とあとがきにあり、なるほど…と思ったのだが、根底には「正しくありたい」という道徳心があるように感じる。
ダメなところや弱いところもあるけどそれが人間らしさだよね、と全面的に受け入れる姿勢はなくて、そのダメさを冷徹に見つめている。
ユーモアもたっぷりで軽い筆致で描かれているけど、あはは…と笑えない。

「恥」の意識は日本人にも馴染みのあるものだけに、チクチクと胸を刺す痛みを感じた。

善良な人の行動に感じる苛立ち。邪悪さを警戒して逃げてしまう弱さ。苦いけれどとても面白かった。
好きだな。イ・ギホ。
「原州通信」も読んでみよう。