りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

雲助の会

1/30(木)、赤坂会館で行われた「雲助の会」に行ってきた。
 
・ぐんま「権助魚」
・雲助「徳ちゃん」
~仲入り~
・雲助「品川心中」
 
ぐんまさん「権助魚」
出囃子が鳴って間違った扉から出てくるぐんまさんに大笑い。
高座に上がって「わかります。わかってますよ。みなさんの気持ちは伝わってきますよ。”え?ぐんま?大丈夫なの?”…よっぽど他の前座がいなかったんでしょうか(笑)。でも大丈夫です。私だってわきまえてますから。古典やります。まさかここで新作なんてやりません」
インフルエンザに気を付けてくださいと言った後に「あと一つみなさまに気を付けていただきたいことが」と、銭湯に行ってタイガージェットシーン似のインド人に気に入られてしまった、という話。
これがもうおかしくておかしくて大爆笑。
雲さまファンのお客さんの心もがっちり掴んですばらしい~。いやでも雲さまのお客さんって「おれはめったなことじゃ笑わねぇよ」というような雰囲気じゃないんだよな。なんかとっても明るくて面白好きな雰囲気。居心地がいい。
 
まくらから噺に入ったんだけど、なんかぎくしゃくしていて笑いが起きると、「あれ?へんだな?あれ?…新作に頭を侵されてて古典のまくらの入り方がわからなくなっちゃった」。
…ぶわははは。
権助魚」、おかみさんが無駄に色っぽくて(笑)面白い。なんとなく会話はぎくしゃくした感じもちょっとあったけど、でもちゃんと古典。
でも時々「群馬ネタ」を入れてくるのがおかしい。
あとまくらで喋っていたインド人の歌と踊りが盛り込まれてたのも面白かった。

雲助師匠「徳ちゃん」
お客様から時々言われることがあります。「雲助さんが吉原に行ってた時はどうでした?」
私が10歳の時に吉原はなくなりましたからどんなませたガキだったからといってさすがに行ってません。
でも私が噺家になったばかりの頃は今みたいにソープランドばかりじゃなく、昔の建物をそのまま「旅館」として使ってるお店もあって、まだ風情も残ってました。
勉強のために通いましたが…と言ってそのころの思い出をあれこれ。これがとっても楽しい。
噺家だということがいつからかバレて、通りかかると「噺家!今日も泊っていきなよ!」と声をかけられるように。
「今日は金がねぇんだよ」と言うと「いいよ。あるだけで」。
おお、これが「なじみ」になるっていうことか、とちょっと嬉しくなって上がると、普通の部屋じゃなくて布団や座布団なんかが置いてある部屋に通された。そこではおかみが座布団カバーにアイロンをかけていて「これやってくれたら今日はタダでいいよ」。
さすがにアイロンは断りました、に大笑い。
そんなまくらから「徳ちゃん」。雲助師匠の「徳ちゃん」は初めて!うれしい~。大好きな噺。
 
笑ったのは花魁を見立てる時に最初「その真ん中にある白いの!」「これは…白い瀬戸物ですよ、お客さんいやだなぁ。花魁はこの奥にある黒い方ですよ」「え?そこでわだかまってるのが花魁?」。
わだかまってる…ぶわはははは!!最高。
花魁が芋をかじりながらやってきて、それをぺっ!と吐き出したり、「おめぇ芸人け?おら、芸人好きだ。やわらけぇ手ぇして…ええなぁ」と言って、ぶちゅっ。それを「うわっ!」と手で押さえるしぐさのおかしさ。
言葉の選び方や細部がおかしくて最高だった。笑った笑った。
 
雲助師匠「品川心中」
花魁が色っぽくてでもちゃっかりしていて、善さんがおまぬけでお人好しで、二人の様子や品川の海が目に浮かんでくる。
海から上がった善さんに犬が吠えかかってくるところがすごくおかしくて(雲助師匠の顔!)大爆笑。
夜中に訪ねて行った親分の家のドタバタにも大笑い。
後半の仕返し部分も好きなので通しで聴けて嬉しかった~。
 

中央駅

 

中央駅

中央駅

 

 ★★★★★

韓国文壇界、新進気鋭の若手作家による長編小説!

日経新聞に書評掲載など、 国内でも反響の大きかった
『娘について』の著者、キム・ヘジンが、
絶望の淵に立つ男女の愛を描き出す…本邦初訳!

これがどん底だと思ってるでしょ。
違うよ。底なんてない。
底まで来たと思った瞬間、
さらに下へと転げ落ちるの―― (本文より)

路上生活者となった若い男、同じく路上で暮らしながら、
毎晩、際限なく酒をあおる病気持ちの女。
ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、
二人の運命は交錯する。『娘について』
(亜紀書房刊)を著したキム・ヘジンによる、
どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説。

主人公は若い男のホームレス。彼がどういう人間で、なぜそうなってしまったのかという事情は一切語られない。

ある晩ふらっと現れて彼の隣で眠り、翌朝全財産が入っている彼のスーツケースを盗んで消えていった女。彼女を探しだして半殺しにしてやると息巻くが、いざ彼女を見つけると離れることができなくなる。
毎晩身体をかわすようになり、男はほんのわずかな希望を抱いてはまた落ち…を繰り返す。
これは愛なのだろうかと男は何度も自問するが、間違いなく愛だったのだとも思えるし、彼が捨て去ったつもりの未来を夢見る道具だったのかもしれないとも思える。

とてもヘヴィな物語で読んでいて何度も目を逸らしたくなったけれど、物語の吸引力が凄くて引きずり込まれるようにして読んだ。キム・ヘジン…凄い作家だ。

紀伊国屋寄席

1/29(水)、紀伊国屋寄席に行ってきた。
 
・歌つを「たらちね」
・一花「黄金の大黒」
・さん助「今戸の狐」
・金馬「試し酒」
~仲入り~
・正楽 紙切り
・一朝「藪入り」
 
さん助師匠「今戸の狐」
今から申し上げる「今戸の狐」という噺は三大噺。
三大噺っていうのはとても難しくて、お題をねじこむだけじゃだめで、どれか一つをサゲに使わないといけない。大変な力量が必要です。
実は私も…小さな落語会で毎月三大噺にチャレンジしているんですが、これがとても大変で。
この間もそちらの会でお客さんから出されたお題が「初雪」「赤羽」「麒麟がくる」。
もう困り果てまして…。
 
…うおおお。この間の駒込の会の時の話してる!なんか珍しい!
というか、三題噺だったの?これ?へー。
 
そんなまくらから「今戸の狐」。
駒込で見た時よりすっきりしたかな、という印象はありつつも、やっぱり少しわかりにくい噺なのかなぁ、という感じは否めず…。
でも良助のキャラクターがなんかさん助師匠にぴったりだし、あと妙に色っぽい小間物屋の女房も面白いし、私は好きだなー。
前座の大変さをあれこれ語りながらも良助自身は「お前は年だから」と師匠に免除してもらってるっていうの、面白い。
あとやくざ者と良助の会話がまるでかみ合ってないのに、良助が得意になって自分の狐を見せるところも好き。
楽しかった。
 
金馬師匠「試し酒」
この間寄席で見た時は座ることが出来なくて立って話をされていたけど、今日はいったん幕が下がって釈台を前にしての高座。
以前に比べると少し喋りにくそうなところもあるけれど、矍鑠としていてほんとに素晴らしい。
お酒を飲みながらほんとに顔がどんどん赤くなってくるのはなぜ?
豪快で楽しい「試し酒」。よかったー!
 
正楽師匠 紙切り
この日出たお題が「豆まき」「志ん生師匠」「金馬師匠」「つかこうへい」「チコちゃんに叱られる」「同窓会」。
金馬師匠はまさに「試し酒」をやっている金馬師匠。釈台があって扇子を大きく広げてお酒を飲んでるところ。
「同窓会」のお題には「同窓会っていってもいろんなのがありますよね。卒業してすぐの同窓会もあれば何十年も経ってからの同窓会も…。何十年も、の方ですね?そうだと思いました」と言って、老人たちが楽しそうに立食で飲んだり喋ったりしているところ。(ほんとに楽しそうな様子がうかがえたのすごい!)
 
「つかこうへい」のお題には「え?つかこうへい?ああ…このホールでいろんなお芝居をね…されてましたもんね…どうしよう…ほんとにわからない…でも初めてのお題って…ワクワクする…わくわく…できないとは言わないんです、切るんだ…俺は切るんだ!」
出来上がった作品も素晴らしくて感動ーー。素晴らしかった。
 
一朝師匠「藪入り」
くまさんのチャーミングなこと!
「なぁおっかぁ」と何度も何度も話しかけておかみさんが「もううるさいよ!」という、この二人の会話がとても自然であったかい。
帰って来たかめちゃんもきちんとはしているけどとても子供らしくてかわいい。
かめちゃんの顔を見ることもできずやくざ者みたいな言葉になるくまさんもチャーミング。
おかみさんがお金を見つけてくまさんに言って、くまさんが「あのやろう」となるところ、そういう性格がわかるから、見ていて不自然な感じがないし、真相がわかってけろっと謝るところもいいなぁ。
手紙のところ、かめちゃんとの会話で涙涙。
とても素敵な「藪入り」だった。私の中でベストかもしれない。

柳家小三治独演会

1/28(火)、習志野文化ホールで行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。
 
・小八「道灌」
~仲入り~
・三之助「替り目」
小三治「長短」
 
小三治師匠「初天神
まくらなしで「初天神」。
おとっつぁんが「あの時かかぁが羽織をすぐに出せばよかったんだ」と何度もぶつくさ言うのがなんか小三治師匠らしくて好き。
子どもはちゃっかりしていて生意気を言うけどとても子供らしくていやらしさがない。
おっかさんの言うのをまねして「新しい羽織を買ったからってすぐに着たがって」とか「(お仕事に行く?)うーそだー。おいら、顔見ればわかるもん」と言うのも、すがすがしい。
二人で歩いていて、子どもはあっちこっちに目が行って目がキラキラ、おとっつぁんは人の多さにうんざり…というのも見ていると浮かんでくる。
「ごほうびになんか買って」と言った後に「後の励みにならねぇよ」っていうのも好き。
凧をねだられて買うときもぶうぶうのおとっつぁんが凧が上がったとたんに、それまでの暗いトーンからぱーっと明るくなるのもいいなぁ。
広い空に高く上がる凧が目に浮かんでくる。素敵。
この日の高座、屏風の上に凧が飾られていて、この噺にぴったり。しかも私、最前列のど真ん中という神席だったので、表情や小さなしぐさなどよく見えて至福だった~。
 
小三治師匠「長短」
この頃冬になると歌う歌があります。と「公園の手品師」の話。
小三治師匠が語るフランク永井さんのエピソード。
売れっ子でスターで豪邸に住んでいてジャガーに乗っていて。
一緒にゴルフにも行ったけど、あの人のゴルフときたら…球がまっすく飛ばないで、隣のホールの方まで曲がっていって、そこから戻ってきてグリーンに乗る。実にけしからんゴルフでしたよ、に大笑い。悪く言ってもリスペクトと好意が伝わってくる。

そんなエピソードの後に「公園の手品師」。これがもう低音で素敵なんだ…。音程とかビブラートとかっていううまさもそうだけど、いわゆる歌の上手い人にありがちな「どや」がなくて…歌も静かで耳をすませて聴く感じ。素敵。
 
友だちのまくらから「長短」。
小三治師匠の長短はいつも短さんに目がいくんだけど、今日は長さんに心奪われた。
のんびりしていて穏やかな長さん。短さんにガミガミ言われるたびに「わかったよぅ」と言うのがなんともいえずかわいい。
あと「教わることはきらい」と言い切った短さんが「俺がおせぇてもか?」と言われて「お前は別だよ!」と言うところにも二人の長いつきあい、関係性が出ていて好き。
こんなにかわいい80歳って…どういうこと…。
大雨の中やっぱり行ってよかった。 

かわいい見聞録

 

かわいい見聞録

かわいい見聞録

 

 ★★

猫のしっぽ、ソフトクリーム、シジミ、毛玉…?あれもかわいい、これもかわいい。王道&意外な30の「かわいい」そのヒミツを探るコミック&エッセイ。日常のなかの「かわいい」探しの旅、始まります!

やはり私はこの人の漫画が好きなんだな…。
漫画だと余韻が深いっていうか細かいニュアンスみたいなのが伝わってくるんだけど、文章だとそれが薄まってしまう気が…。

私的にはちょっと残念でしたわ。

楽屋半帖

1/27(月)、駒込落語会で行われた「楽屋半帖」に行ってきた。

 
・さん助「猫の茶碗」
~仲入り~
・さん助「大河は八時」(「初雪」「麒麟がくる」「赤羽」)
・さん助「今戸の狐」
 
さん助師匠「猫の茶碗」
最も古い落語家「三笑亭可楽」の話から文晁と蜀山人のエピソードなどあれこれ。
こういうまくらってとても楽しい。
聞いたことがある話もあれば(文晁が朱を塗った河骨花を蜀山人が見て「珍しい」と言って欲しがるので文晁が渋々譲ってやったのだが、家に帰って水をかけたら普通の黄色い花に戻ってしまった)、聞いたこともない話も。
寄席のようなものが出来た時には武士も町人も席を同じくして聞いたり自分が話したりした、というのは面白いな。
これはいったいどんな噺につながっていくんだろうと思っていたら、なんとこれが「猫の皿」だった。
 
噺に入ってからも、茶店の親父と道具やがずいぶん長い間世間話。
昔江戸にいたという主人に「いつまでいたのか」と聞くと、あの上野の戦の時まで、と。
あれはほんとに酷い戦だった。最初の内は彰義隊だ、官軍だと言って戦っていたが、最後はもう誰が誰だかわからないぐらい入り乱れての殺し合い。あれですっかりいやになってこちらまでやって来た、と店の主人。
嫁さんをもらって子どもも生まれたが嫁は亡くなり子どもたちは東京へ行き、今はこうして一人暮らしをしている、と。
長話の末にお茶を入れに行く時に「こら、小僧。そんなところにいちゃだめじゃないか」と猫に声をかける。
それで道具屋が猫と茶碗に気が付く、という展開。
 
「猫の皿」って季節を感じさせる風景とか田舎の描写がいいな、と思うんだけど、そういうのはあまりなかったかな。
でも二人のいつ終わるとも知れない会話はなんか面白かった。
そこからの展開はわりとポンポンとスピーディ。
ちょっと笑っちゃったのが、道具屋が猫を抱くんだけど、あまり猫に見えない(笑)。なんか妙にでかい…そして触るのもいかにも慣れてない感じ。
「所作!」と心の中で突っ込み(笑)。
 
さん助師匠「大河は八時」(「初雪」「麒麟がくる」「赤羽」)
頭を上げるなり「雑排」に入ったさん助師匠。おお、またこのパターン。
なんか「雑排」久しぶり~と喜んでいたら、「初雪や~」のくだりをいくつかやっていきなり終了。
「いきなり終わったな。唐突だったかな。ここにあんまり時間かけられないからな」(ぶわははは)
で、「あー終わった終わった」とさん助。
「この会もあと少しだ。三題噺の地獄からもようやく逃れられる。はぁー」と言いながら電車へ。
駒込なぁ。これ一駅なんだけど田端で乗り換えないといけないんだよな。これがめんどくさいな。一度田端まで歩いてみたけど、一駅っていってもすごい遠くて30分ぐらいかかっちゃってさ。あれはひどい目にあったな。さ、乗り換え乗り換え。よし、あとはこれで一本。あーー赤羽か。(パチパチ!)」
なんて言っていたさん助。「川口」と聞いて「あと一駅だ。あーなんでかあと一駅って思うと眠くなっちゃうんだな。なんでだろうな。ぐーーーぐーーー」。
眠り始めたさん助。そこへアナウンス。「次はナイロビーーナイロビーーー!」

「え?なんで?さっき川口だったのになんでナイロビ?うわっあつっ!あっついなぁ。(と羽織を脱ぐ)なんだよどういうことだよ。なんでナイロビ?はっ、気づいたら周りは顔の黒いやつばかりだ。ってことはほんとにここはナイロビ?」
慌てていると「あなたーどうしましたー」
いきなり日本語で話しかけられる。
「わ、日本人がいた!」
「ええ、ここで日本人に会うのは珍しいことです。あなたはどうしてここへ?」
「いやわからないんです。京浜東北線に乗ってたはずで川口っていうアナウンスは聞いたんですけど、はっと気づいたらナイロビって」
「ああ、そういうこと、時々ありますね」
「あるんですか?!」
「ええ、あります。ところであなたは何をやってる人ですか」
「私は落語家です」
「ああ、自称」
「自称じゃないですよ!落語で食べてるんです」
「へー」
「あなたは?」
「私はマサイラマ保護区に勤めてます」
「というと?」
「いろんな動物を保護しているんです」
 
というわけで、その人について行くことにしたさん 助 。一緒にパトロールを手伝うことに。
動物を殺して儲けようとするハンターがいるのでこうして毎日パトロールが欠かせないのだという。
ハンターと動物におびえながら男について行くさん助。
「ぱおーーん」
「あ、象だ。こわいっ!」
「ええ、やつら結構獰猛ですから。足でつぶされたらひとたまりもない。」
「あ、バッファローだ!」
 
…いろんな動物が出てくるんだけど、出てくる動物がやたらと吠えて狂暴に暴れまわる。中にはペンギンもいて、これもまた変な所作。
これはこの展開は…と思っているとついに…「近頃はキリンをねらうハンターも多いです。でもキリンはああいうかわいらしい顔をしてるけどすごく危険です。象なら一思いに殺してくれるからいいけど、キリンは少し急所を外していたぶりながら…」
「ああ、やめてください」
そしてハンターも銃で一撃ちではなくナイフで喉を切り裂いてくるので痛い時間が長く続くらしい。
というわけでさん助の怯えもピークに。
「今何時ですか?」
「六時です。」
「ハンターは?」
「まだ出ません」
「今何時ですか?」
「七時です。そろそろ…」
なんて言ってると、出たー。ハンター。そして銃で撃たれて走ってくる象!
また別の動物も走って来た!
「あれはもしかしてキリン?キリンですか?」
「いや。麒麟がくる、は、八時」
 
…ぶわははははは。
しっちゃかめっちゃかでめちゃくちゃな噺だったけどサゲだけ妙にきれいに決まった。
ばかだー(ほめてます)。
 
さん助師匠「今戸の狐」
今戸焼のまくら。
浅草には今戸焼の狐やねずみなどを売ってる店があるとか。
狐の顔を描いたりする内職が昔はあった、というまくらから「今戸の狐」。
 
名人可楽の弟子で前座の良助。
なにやらこそこそ何かをやっているところにご近所の 小間物屋の女房が訪ねて来る。
良助の部屋をのぞき見して今戸焼の彩色の内職をやっていることを知り自分もやりたいという。
この女房が元は千住で女郎をやっていたらしく、「コツのサイ」と呼ばれているんだけど、シナを作って早口でああだこうだというのがすごくおかしい。
前座は大変なんだといろいろ言い訳をする良助だけど、実は前座働きも通いも師匠から免除されていて家賃も払ってもらっていて、「どんだけなまぬるいの!」と言われるのがおかしい。
 
一方、師匠の家に住み込んでいる前座たちは毎日寄席で働き、唯一の楽しみは仲入りの時に売るくじのお金。これだけはそのまま小遣いになるので今日はいくら儲けた!と大盛り上がり。
それを通りかかったやくざな男がばくちをやってると勘違いし、師匠を強請って金を巻き上げようと乗り込んでいく。
ばくち用語で「コツ」「狐」などと言うので前座たちは良助が作っている狐を欲しがってるのかと思い、良助宅を紹介。
男が勇んで出かけて行って良助に掛け合うと、良助も今戸焼の狐を買いに来たのだと思って…。
 
…一度だけ白酒師匠で聞いたことがあったけど、その時は多分噺の内容を把握できてなかった。
ちょっと込み入ってるよなー。でも面白-い。
びくびくしている良助がさん助師匠にピッタリでおかしかった。

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

 

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

 

 ★★★★★

本書は2018年6月3日に「レンタルなんもしない人」というサービスがスタートした時から、2019年1月31日「スッキリ」(日本テレビ)出演まで、半年間におこった出来事をほぼ時系列で(だいたい)紹介するノンフィクション・エッセイです。本当になんもしてないのに次々に起こるちょっと不思議でこころ温まるエピソードの数々。 

 twitterでは見てるけどこうしてまとめられるとなんとなくこの方のやりたかったことが少しだけわかるような気がする。
実験して観察して考察する、いかにも理系な感じ。これがもう少し文学的というか情緒的になると長続きしないんだろうな、と思う。

人として線の細いところと太いところがあってそのバランスが絶妙。面白い人だなと思うけど、面白すぎないところもいいのかも。
あとやっぱり面白いことが好きなんだろうな。読んでいて何度か声を出して笑ってしまった。
なんもしないにこだわって時にはちょっと頑張って「なんもしないをしている」ところが垣間見れたのも面白かったな。

それにしてもいろんな人がいるなぁ。人間って面白い生き物だな。

あれも凌鶴これも凌鶴

1/26(日)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴これも凌鶴」に行ってきた。

・凌鶴「蘇生奇談」
・凌天「吉岡治太夫
・凌鶴「近衛秀麿
~仲入り~
・凌天「矢取勘左衛門」
・凌鶴「前座ポスト」

 
凌鶴先生「蘇生奇談」
健康の秘訣は腹八分目、というようなまくらから「 蘇生奇談」。
初めて聴く話。
植木屋の五兵衛がお得意様の造り酒屋に仕事に行くと主人にせんべいを勧められる。
自分は大食いなのでちょっと食べるくらいだと逆に腹が空いてしまうので要りません、と言うとならば何枚食べられる?と賭けになる。
50枚食べてお金をもらった五兵衛。
次の日は鍋に入った汁粉。
その次の日は焼酎。
酒にそれほど強くない五兵衛がべろべろで家に帰り、女房に引っ張られた拍子に倒れ、胸を打ちつけて気を失ってしまう。
医者が診て死んだと言われ棺に入れられて埋められるが、実は気を失っていただけだったので目覚めて起きだす。
途中で会った巡査も一緒に家に帰ってみると…。
 
こんな講談もあるんだ!なんか落語みたいだ。
五兵衛さんがのんきで優しくていいな。楽しかった。
 
凌鶴先生「近衛秀麿
日本のオーケストラの祖、 近衛秀麿の一代記。
なんという劇的な人生なんだろうと思うけれど、それもこれも戦争があったせいなのだよな。
軍国主義になって戦争に負けて今度はそちら側の人は戦犯になる。
巻き込まれて命を落とす人たちが本当に哀れだ。
秀麿は家柄も良くて大臣の兄を持って…恵まれていたんだろうけど、それだけに危険と隣り合わせだったともいえる。
ネルソンとのエピソードには涙が出た。
ユダヤ人の音楽家を大勢救ったのは勇気ある行動だったなぁ、と思う。
いろいろ感じるところが多い話だった。
 
凌鶴先生「前座ポスト」
この世界、師匠に「破門だ」と言われてしまうともういることができなくなる。これは実に残念なこと、と 凌鶴先生。
落語家だと協会を変えて別の師匠に入門しなおす人もいるみたいだけど、それでもその時はまた前座からやり直し。それもなんかもったいないような気がします。
自分は、結婚式の時に母親から強いリクエストがあったので師匠である一鶴先生に来てもらった。
そこで師匠が披露してくれた講談が妖怪軍団修羅場。結婚式で妖怪かい…と思ったけど、そういう常識外れのところが魅力の師匠だった。
母親が師匠と話をしていた時も「〇〇くん(弟弟子)がいい感じに育ってきていてねぇ。彼は売れますよ!実にいい!」と 凌鶴先生のことには触れず弟弟子をべた褒め。
まぁ母親が「〇〇くんがいるから一門も安心ね」と納得していたから最終的にはよかったけど…。
そんなまくらから、「前座ポスト」。入門して8年目ぐらいの時に作った話だとか。
 
久しぶりに一鶴先生の旅の仕事のおともに呼ばれた凌鶴。
普段は師匠がグリーン車、自分は自由席なのに、この日はどういうわけか師匠の隣の席。
そして師匠が「このお弁当、君が食べていいよ」「肩でも揉もうか」とやたらと親切にしてくれる。
なんかおかしいなと思いながらも楽しく過ごしていると師匠が「あのね…実は…今日君にきてもらったのは仕事じゃないんだよ」
「え?」
「君…最近前座ポストというのができたのは知ってるかい?」
「ああ、なんか聞いたことあります」
 
いらなくなった前座を破門にするのではなく前座ポストに入れることで、逆に弟子が欲しい師匠や相性のいい師匠が見つかるかもしれない、という画期的なシステムがこの度導入されることになり、新しもの好きの一鶴先生がなんと 凌鶴を前座ポストに入れることに…!
「え、だって私…前座じゃありませんよ。二ツ目ですし。言っちゃなんですけど私よりダメな弟子もいるじゃないですか!」
「そうなんだよ。でもほんとにダメな人をポストに入れても拾ってもらえないじゃない。その点君はほら…ちゃんとしてるから…」
 
…ぶわはははは!
この後の展開もすごくおかしくて…あと細部がたまらないんだ…面白くて。
凌鶴先生ってなんか…勇気がある(笑)。
最高に面白かったから、戦記物や張扇をこれ見よがしにバンバン叩くような講談はちょっと…という人は 凌鶴先生の新作を聴くといいと思うよ!まじでまじで。

短篇集ダブル サイドB

 

短篇集ダブル サイドB (単行本)

短篇集ダブル サイドB (単行本)

 

 ★★★★★

 老境を描いた詩情豊かな作品「昼寝」。息もつかせぬ「ルディ」。兵役を控えた若者たちを描いた「ビーチボーイズ」。奇天烈な宇宙SF「ディルドがわが家を守ってくれました」。暗示的な「膝」。全8篇どこから読んでも傑作!日本の読者へのメッセージも!

サイド Aからあまり間をおけずに読めてよかった。

「昼寝」に描かれるどうしようもない絶望と小さな希望にヒリヒリする。
子どもがいたっていなくたって行きつく先は不自由な体と死ぬのを待つだけの日々なのだろうか。それでも認知症を患った初恋の人の手を握るシーンは美しい。

「ルディ」自分の価値観や善悪が吹き飛ぶような暴力。積み上げてきたつもりのものが失われていく無力感。お互いを憎みあいながらももうお互い無しでは生きていけないような…私とルディはいったい誰と誰なのだろう。

アスピリン」は理解も納得もしていないけど慣れるのだけが上手な彼らが他人とは思えなかった。

「ティルドがわが家を守ってくれました」は「銀河ヒッチコックガイド」にも共通するユーモアがあって好きだ。八方塞がりの現実、もう逃げ道は宇宙にしかないのかも。

描かれているのは絶望的な状況ばかりなのに少し笑える。このユーモアがたまらなく好きだ。
とてもよかった!

五街道雲助独演会「お直し」を聴く

1/25(土)、社会教育会館で行われた「五街道雲助独演会『お直し』を聴く」に行ってきた。


・あられ「まんじゅうこわい
・雲助「身投げや」
・雲助「初天神
~仲入り~
・雲助「お直し」


雲助師匠「身投げや」
何度見ても面白い。
身投げを止めてくれた人を頭から足の先までじっくり見て値段を決めるのがおかしいし、「こいつは金持ちだ」と見込んで言った額の半分しか持ってないと聞いて「値切るとはあんまりじゃぁねぇか」と言うのにも笑ってしまう。
後から出てくる父子がどこをどう見ても怪しいのもおかしくて、楽しい~。

話し終わったあとにいったん引っ込むと思ったのか音楽が鳴ったのを止めて、そのまま二席目…というのもなんか贅沢で嬉しい。


雲助師匠「初天神
今日は1月25日。今日「初天神」をやらないでいつやるんだ、と言いながらの「初天神」。うわ、雲助師匠で「初天神」ってなんかとっても珍しい気が。
金ちゃんがちゃっかりしているけど、父子のやりとりがしつこくないのがとても雲助師匠らしくて好き!
飴買っておくれよと言われて「買わないって約束だろ」と言うんだけど「そんなに高いもんじゃねえよ」と言われると「ま、それもそうだな」。
飴を舐めながら選ぶところもあっさりしているから、「ああ、ついやっちゃったんだな」感。
だんご屋に声をかけると「いらっしゃーい」と地の底から湧き出たような暗い声。
「お前なんだ客商売のくせにそのやる気のない声は。みつちょうだい。え?そんなするの?」と受け取って「あーみつが垂れるじゃねぇか」と舐めはじめて、なめながらだんご屋に小言。ああ、これも自然に舐め切っちゃった(笑)。

凧をねだられた時はもうおとっつぁんめんどくさくなちゃって言いなり(笑)。
「大きい凧は売らねぇんだよな?」と凧屋に聞くと「いいえ、売りますよ!」。
そう言われて「てめぇら、グルだな」。

凧を上げ始めるとすっかり楽しくなっちゃって隣の子どもに「じゃまだからどけ。え?どかない?やるのか?」と言って凧で喧嘩。「ほーら、糸が切れて飛んでいっちまいやがった。ざまぁみろ!」。

子どものような父親がとてもチャーミングな「初天神」だった。なによりくどくなくていい!


雲助師匠「お直し」
売れなくなってきて落ち込んでいるところに優しい言葉をかけられてほろっとなる花魁。
店の主人のお慈悲で二人でそのまま働けるようになって徐々に家財道具も揃って働くことに張りが出てくる女に反して、遊ぶようになる亭主。
すっからかんで帰って来た亭主に「けころ」をやろうと言われ、渋々ながら承知。
出る前に化粧をする姿の色っぽさ…。そして声を掛けていい客かどうかを見定める手慣れた様子に、この女が若いころに相当な地獄を見て来たことをうかがわせる。

入って来た客は気のいい酔っ払いの職人で、このやりとりの部分が明るくて楽しくて和得るところが好き。
亭主の焼きもちで「直してもらいなよ」と言われても「ずいぶん直しがはやいな」と言いながら言いなりになってほくほく金を出すのが可愛らしい。

それだけに二人になってからの会話に涙涙。
とてもよかった。雲助師匠の「お直し」はほんとに絶品だなぁ。

末廣亭1月下席夜の部

1/24(金)、末廣亭1月下席夜の部に行ってきた。

・夢花「魚根問い」
・マグナム小林 バイオリン漫談
・歌蔵「真田小僧
・蝠丸「八百屋お七
~仲入り~
・小助六「紋三郎稲荷」
・ニュースペーパー コント
・談幸「短命」
・遊吉「うなぎや」
・正二郎 太神楽
・小文治「七段目」


蝠丸師匠「八百屋お七
久しぶりの蝠丸師匠。会いたかったよーうぉーーん。
「正座ができないもんですからちょっとずるしてます」とおっしゃっていたけど、全然わからなかった。
「今日は珍しい噺を」と言って「八百屋お七」。
ゆるゆるっとしているからこちらもゆるゆるっと聞いているんだけど、脱線もお客さん参加もほどがよくて本当に楽しい。
今年は蝠丸師匠の高座、たくさん見られますように!


助六師匠「紋三郎稲荷」
うーん。かっこいい。
ふわっと出てきて楽しそう~にまくら話してゆるゆるっと珍しい噺。
乗せた客が「お狐様だ」とおびえる駕籠屋もおかしいし、村の人たちが一目でいいから拝ませてほしいとやってきてると聞いて賽銭箱を用意させるのも楽しい。
さすが地元(松戸)!こういうこともあったのかもね、と思わせる楽しい「紋三郎稲荷」だった。


談幸師匠「短命」
見るたびに談幸師匠がかる~くなっている気がする。芸協らしくなってきてる?(笑)
お決まりの噺だけどとっても楽しい。隠居の匂わせ方も「ほら、わかるだろ」みたいな目配せで、その繰り返しがおかしい。
ようやく合点がいったはっつぁんが家に帰って来たときのおかみさんのドスの聞いた「おかぇりぃー」に大爆笑。
テンポがよくて明るくて軽くて楽しかった~。


遊吉師匠「うなぎや」
遊吉師匠も久しぶり。早口だけどすごく聞きやすい。言葉数を調べたらおそらくものすごい上位にくるのではないかしらん。
「うなぎや」もたいてい前半がダレちゃうんだけど、とにかくスピードが速いからダレる暇なし(笑)。
主人が鰻をつかみながら店を出ていくスピードも心なしか速く感じておかしかった~。


小文治師匠「七段目」
若旦那が芝居をやりながら店に帰ってきて、見物人が大勢付いてきちゃってるっていうのがおかしい。
歌舞伎のしぐさがとても堂に入っていてきれいで、思わず見とれてしまう。きれいな師匠だなぁ…。
定吉と二人で芝居をやる場面がしつこくないのもよかった。

久しぶりの定席。楽しかった~。いい番組だった。

靴ひも

 

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

老夫婦が夏のヴァカンスから自宅に戻ると、留守宅が何者かに荒らされていた。家具は倒され、あらゆるものが散乱し、猫が姿を消している。困惑する夫が目にしたのは、40年前、夫が家を出たことをなじる妻からの手紙の束。決して癒えることのなかった過去の傷跡が、次第に浮き彫りにされてゆく。家族はどこへ向かうのか―。ジュンパ・ラヒリによって英訳され、「ニューヨーク・タイムズ」2017年“注目の本”に選ばれた話題沸騰のイタリア小説。 

面白かった!!夫婦や家族のありかたについて考えさせられる。

夫、妻、子どもたち、それぞれに言い分があってどれも分かる。勝手だなぁ…と思うけれど、でも分かる。

夫婦がいがみ合っていたらその犠牲になるのは子どもだけれど、子どもだっていつまでも子どもでいるわけじゃない。
そう考えると親だって最初から大人なわけじゃなく子どもが大きくなっただけのことなのだ。

第一部を鬱々とした気持ちで読んだけれど二部、三部とすすむにつれ、爽快感すら。

欲望と罪悪感、裏切りと報復。
夫が一時的に家族を棄てたことを決して夫を許さない妻。そんな妻の顔色だけを窺う夫。それでも「子どものため」と言って別れることができない。子どもたちはそんな両親の関係を見て育ち、両親への嫌悪を募らせていく。

人間は愚かだなぁ…。でも愚かなりに生きていくしかないんだよな。
壊したところから何が始まるのか、ちょっと見てみたい気がする。

秘密

 

秘密

秘密

 

 ★★★★★

結婚する機会があったのに結婚を選ばなかった、あるいは選べなかった女性の物語が4話。
自分の生い立ち故に結婚はしないと決める女性の頑なさ。その一方で押し切られたり断りきれなくて別の相手と結婚してしまう男たち。

「毀れた絵具箱」「遠い華燭」は何ともいえず嫌な感触が残る物語(でも嫌いじゃない)。

「雑踏」「秘密」は苦さもあるけれどふわっと笑ってしまうようなところがあってとても好きだ。

面白い作家さんだなぁ。誰とも似ていない味わいがあって次々読んでみたくなる。
ほとんど絶版になってしまっているのがもったいない。こうして読めるのは図書館のおかげ。感謝。

小燕枝落語手帳

1/22(水)、湯島天神参集殿で行われた「小燕枝落語手帳」に行ってきた。
 
・ 小燕枝「意地比べ」
・ 小燕枝「替り目」
~仲入り~
・プレゼントコーナー
・ 小燕枝「御慶」
 
小燕枝師匠「意地比べ」
昨年は自分も奥さん( 小燕枝師匠、自分の奥さんのこと「化けベソ」って呼ぶんだよね…)も風邪をこじらせて大変だった。
医者に通って薬を飲んでも全然良くならない。最後は「気管支炎」になって咳が止まらず苦しかった。
ようやく自分も奥さんも良くなってきたと思ったら、今度は猫がご飯を食べなくなっちゃった。どんどん痩せてきて心配になって病院に連れて行ったら、 猫の食欲を増進させる薬があるっていうんだけどこれが人間の躁うつ病の薬と同じ成分らしい。
もらってきて飲ませたら効果てきめん。
ご飯をばくばく食べるようになって、ああよかったと思ったら、今度は食べた後30分ぐらいして「ご飯くれ」。
夜ご飯食べさせても夜中に「ご飯くれ」って催促に来る。
最初は奥さんのところに行って催促してるんだけど奥さんは一度寝ると決して起きないから「こりゃだめだ」と諦めると私の所に来る。最初は布団を引っ張ったりしてるんだけど、そのうち前足で頭をガリガリやってくるので、とても寝ていられない。
しょうがないから起きてご飯をやって、やれやれと布団に戻って眠ると、またやってきて「ご飯くれ」。
次に病院に行った時は「あの薬、やめさせてください」とお願いしました。
 
…ぶわははは。おかしくておかしくてもう大笑い。
最高だ。
 
江戸っ子のまくらから「 意地比べ」。
江戸っ子の意地の張り合いの噺だけど、最初から最後まで楽しくて大笑いだった。
「意地比べ」とか「三方一両損」とか「大工調べ」とか江戸っ子の噺ってあんまり好きじゃないんだけど、 小燕枝師匠のは楽しい!
はっつぁんがどこで相手を「かちん」とさせたかが、とっても分かりやすくて笑っちゃう。
意地を張り合ってるのに仲良しのまま、というのもなんともいえずいいなぁ。
面白かった。
 
小燕枝師匠「替り目」
お酒は飲めないという 小燕枝師匠がどうしてこんなに酔っ払いがうまいんだろう。
ぐずぐずになっためんどくさい酔っ払いぶりがおかしいおかしい。
ああだこうだといちいちうるさいのもおかみさんへの小言ものろけも、とってもチャーミング。
「替り目」通しで聴くのも久しぶりだったな。
 
小燕枝師匠「御慶」
落語が好きで通っているとお客様も同じ噺に当たることが多くなると思います。
その時に「なんだよお前この前と同じ噺じゃねぇか」とはおっしゃらないでいただきたい。
同じ落語家の同じ噺に当たったということはそれだけ何度も来られている、健康だという証拠ですから、そう受け止めていただきたい。
これが我々とお客様との申し送りです。
 
…うわーー。耳が痛い!
そうですよね…はい…すすすびばせん。
 
富くじのまくらから「御慶」。
八五郎のキャラクターがはっきりしていてチャーミングなので、最初におかみさんの半纏を無理矢理引っ剥がすところも、ほしい番号が売れてしまっていてがっかりするところも、易者に声をかけられて相談するところも、生き生きと姿が浮かんできて楽しい。
おかみさんに「離縁する」と脅されたことも相当効いているのもおかしい。
当たって大喜びして話が全然かみ合わなかったり、家に帰ると「また外れたんだろ。いい加減離縁状を書いておくれ」と文句を言うおかみさんに小判を見せるところもおかしいし、おかみさんの態度がころっと変わるのもそれを八五郎がけろっと許すのも、さっぱりした二人の性格が出ていていいなぁ。
ぎょけいっ!のおたけびもなんともユーモラス。

楽しかった~。最初から最後までとても楽しい「御慶」だった。
やっぱりこの噺って結構難しいんだな。 

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

 

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

  • 作者:塙 宣之
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 新書
 

 ★★★★★

二〇一八年、M‐1審査員に抜擢された芸人が漫才を徹底解剖。M‐1チャンピオンになれなかった塙だからこそ分かる歴代王者のストロングポイント、M‐1必勝法とは?「ツッコミ全盛時代」「関東芸人の強み」「フリートーク」などのトピックから「ヤホー漫才」誕生秘話まで、“絶対漫才感”の持ち主が存分に吠える。どうしてウケるのかだけを四〇年以上考え続けてきた、「笑い脳」に侵された男がたどり着いた現代漫才論とは?漫才師の聖典とも呼ばれるDVD『紳竜の研究』に続く令和時代の漫才バイブル、ここに誕生! 

面白かった!

芸協の寄席に行ってナイツに当たるとすごい得した気分。それは二人がリラックスしているけどいつも本気で面白いことをやろうとしてくれているから。

これを読むと塙さんがどれほど漫才を愛していてM1をどういう目で見ているのかがよくわかる。
M1は一時期、毎年楽しみに見ていたので、ああ…あの年はそうだったとかあのコンビはそうだったのかと、とても興味深かった。

この本の中でも言われていたことだけど、本当に好きなことを語る人を見るのはとても楽しいし幸せな気持ちになるなぁ。よい!