りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

靴ひも

 

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

老夫婦が夏のヴァカンスから自宅に戻ると、留守宅が何者かに荒らされていた。家具は倒され、あらゆるものが散乱し、猫が姿を消している。困惑する夫が目にしたのは、40年前、夫が家を出たことをなじる妻からの手紙の束。決して癒えることのなかった過去の傷跡が、次第に浮き彫りにされてゆく。家族はどこへ向かうのか―。ジュンパ・ラヒリによって英訳され、「ニューヨーク・タイムズ」2017年“注目の本”に選ばれた話題沸騰のイタリア小説。 

面白かった!!夫婦や家族のありかたについて考えさせられる。

夫、妻、子どもたち、それぞれに言い分があってどれも分かる。勝手だなぁ…と思うけれど、でも分かる。

夫婦がいがみ合っていたらその犠牲になるのは子どもだけれど、子どもだっていつまでも子どもでいるわけじゃない。
そう考えると親だって最初から大人なわけじゃなく子どもが大きくなっただけのことなのだ。

第一部を鬱々とした気持ちで読んだけれど二部、三部とすすむにつれ、爽快感すら。

欲望と罪悪感、裏切りと報復。
夫が一時的に家族を棄てたことを決して夫を許さない妻。そんな妻の顔色だけを窺う夫。それでも「子どものため」と言って別れることができない。子どもたちはそんな両親の関係を見て育ち、両親への嫌悪を募らせていく。

人間は愚かだなぁ…。でも愚かなりに生きていくしかないんだよな。
壊したところから何が始まるのか、ちょっと見てみたい気がする。