りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

2019年・年間ベスト

2019年、読んだ本が154冊、行った演芸が196回。
昨年が読んだ本が129冊、行った演芸が249回だったので、本が増えて演芸が減ったな。って196回も落語(講談、活弁浪曲含め)行ってるのかー。
昨年から始めた誰の高座を何回見てるか、まとめ。


1位 さん助 96回
2位 小三治 23回
3位 雲助 21回
4位 圓馬 19回
4位 凌鶴 19回
5位 小んぶ 16回
6位 圓橘 15回
7位 頼光 14回
8位 はん治 13回
8位 夏丸 13回
9位 琴調 12回
9位 きく麿 12回
9位 さん喬 12回
10位 小はぜ 11回 

ちょっ…。さん助96回って…。2018年が65回でそれにも驚いたのにさらに増えたのがすごすぎる。「楽屋半帖」が毎回3、4席と高座数が多いことと、鈴本のトリに通ったことが勝因(勝ったのか?)。
でも今年はもう少し減りそうだなー。ドッポも終わっちゃったし、「楽屋半帖」もあと何回かで終わるし。

2位が小三治師匠で、だいたい毎年これぐらいの高座を見ているんだけど、それって結構すごいこと。というのは小三治師匠の会はチケット取るのが大変なのだ。逆に言うとチケット取るために頑張ってるのは小三治師匠ぐらい、かな。

雲助師匠は落語を見始めたときから大好きな師匠だけど、やっぱり会に行かないと!という気持ちを新たにまた見に行き始め、行ってがっかりすることがまったくなかったので今年も積極的に見に行きたい。

講談、活弁を見に行くようになって、また世界が広がったなー。今年もいろいろ見に行こう!おー!

で、年間ベスト。まずは海外編。

 

1位 フィフティ・ピープル (チョン・セラン)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)

 

年間ベスト、毎回順位を付けるのが大変。
こうして読んだ本の感想を律儀にアップしているけど基本的に私の場合「面白い!」「好き!」「ん?なんかよくわかんない」というような、ざっくりした読み方。
で、1年間の「面白い!」「好き!」の中から順位を付けているんだけど、「面白い」にもいろんな種類の「面白い」があって、それに順位を付けるというのも意味があるようなないような。
順不同でもいいんだけどそれじゃつまらないという思いもあり。

2019年も韓国文学をたくさん読んでどれもすばらしい作品だったんだけど、特にどれが好きだったかなと考えると、これかな。
韓国の首都圏の大学病院の周辺に住む51人の物語。どの人もいろんな問題を抱えながら、一生懸命日々を暮らしていて、ああ…同じだなぁと思う。人種とか国とかそういうの…私たちには関係ないよ。国同士いざこざがあってもそこに住んで暮らしている人たちはわれわれと同じ、優しくされれば嬉しいし蔑まれれば悲しい…同じ感情を持った人たち。
なによりも作者の視線が優しくてユーモアがあって好きだったなぁ。
図書館で借りて読んでいてすぐに「これすき!」となって昼休みに本屋さんに駆け込んで、同じ本を2冊抱えて帰ったのも、いい思い出(笑)。


2位 ブッチャーズ・クロッシング(ジョン・ウィリアムズ)

ブッチャーズ・クロッシング

ブッチャーズ・クロッシング

 

 ジョン・ウィリアムズはいい。
人間では全く太刀打ちできない自然の凄まじさ。希望や野望が絶望に変わる瞬間を静かなタッチで描きながら、それでも生きていかなければいけない人間の弱さと強さ。
ストーナー」とは全く違った物語だけれど、やぱり同じようにずどん!と心にくるものがあって、寡作だけどすごい作家だなぁと思う。

 

3位 掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

 

これはきっと今年のtwitter文学賞で1位間違いなしだろうと思うから私は安心して3位に。
作者自身がアル中のシングルマザーという破滅的な面もあるのだけれど、それ以上に直に心臓に触れてくるような…ここに書いてあるのは私のことだ!と言いたくなるような…独特の切実さがあって、たまらなく良かった。
翻訳家さんが惚れ込んで訳した本を読める幸せ。ありがとうありがとう。

 

4位 回復する人間 (ハン・ガン)

回復する人間 (エクス・リブリス)

回復する人間 (エクス・リブリス)

 

これもいい短編集だった。
自分が負った傷や打撃からうずくまり立ち直ることができない人たち。まわりから人がいなくなっていって独りぼっちになっていくのがリアルだけど、時間が薬。新たな痛みを感じたときが「回復」なのかもしれない。
ハン・ガンは以前「菜食主義者」を読んだけれど、それよりも好みだったなぁ。


5位 ある一生(ローベルト・ゼーターラー)

ある一生 (新潮クレスト・ブックス)

ある一生 (新潮クレスト・ブックス)

 

読むものに迷ったら新潮クレストを読め、は2019年も。
幼くして母を失い、母の義兄に育てられたエッガー。アルプスの厳しい自然と時代の荒波に揉まれ幸せとは程遠いように思える人生を送るが、エッガーが老人になってからいたる境地には驚きと感動があった。
読み終わって時間が経ってもその感動が薄れるどころか、じわじわと増していくような作品。


6位 何があってもおかしくない(エリザベス・ストラウト)

何があってもおかしくない

何があってもおかしくない

 

「私のなまえはルーシー・バートン」の続編のような作品だったが、断然こちらのほうが好きだった。
思い出すのも辛い過去や目を背けたくなるような現在を生きている人たちが、それでも時々立ち寄ったり差し伸べられる手に、ほんの一瞬でもほっとして肩の力が抜ける瞬間。わずかな希望に救われる想い。

エリザベス・ストラウトの連作短編はほんとにいいなぁ。

 

7位  なにかが首のまわりに(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

なにかが首のまわりに (河出文庫)

なにかが首のまわりに (河出文庫)

 

風習や常識が違う国に住む人々の暮らしや感情の動きを読むことができるのが海外文学を読む楽しさなのかもしれない。
きっと私がこの先行くことはないであろう国。でもそこに暮らす人たちの感情の揺れは私となんら変わるところはない。
越えられない壁をみずみずしく描いた表題作、すばらしかったなぁ。

 

8位 娘について(キム・ヘジン)

娘について (となりの国のものがたり2)

娘について (となりの国のものがたり2)

 

普通の「善い人」として生きてきた母親が、娘の同性愛を恥ずかしく思い、育て方を間違ったのか教育を与えたことがかえって悪かったのかと悩む。
しかしそんな彼女自身、職場で上司の不興を買うような行動をとってしまい、職を失ってしまう。
普通ってなんなんだろう。世間の「常識」が本当に正しいことなんだろうか。
そんなことを考えながらもやっぱりどうしても娘には「普通の幸せ」をつかんでほしいと願わずにいられない。
じんわりと心にしみこんでくるような作品でとてもよかった。

 

9位 SMALL GREAT THINGS :小さくても偉大なこと(ジョディ・ピコー)

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

 

 一時期、出たら必ず読んでたジョディ・ピコー。久しぶりに読んだけど、相変わらずのリーダビリティ。でもとても重い内容だった。
白人が人種差別を描くのはとても難しいことなのだろうと思う。反発もあるだろうし批判も間逃れられない。でもそこにあえて挑んだ作者の気概を感じる。
「無知もまた特権」という言葉は重い。

 

10位 愛なんてセックスの書き間違い (ハーラン・エリスン)

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)

 

なんていかしたタイトル。これは最後の二編の中に出てくる台詞。
暴力的な話が多かったけど切実な寂しさが際立って好きだったなぁ。
図書館で借りて読んだ本だったけど、神保町のブックフェスティバルの時に国書刊行会のワゴンで見つけて購入。なにかと目の敵にされる図書館だけど、私の場合、図書館で借りて読んでよかったから買うというパターンが多いので許してほしいー。

後は順不同で良かった本。

ショウコの微笑(チェ・ウニョン)

ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)

ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)

  • 作者:チェ ウニョン
  • 出版社/メーカー: クオン
  • 発売日: 2018/12/25
  • メディア: 単行本
 

 
外は夏(キム・エラン)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

 

 

帰れない山(パオロ・コニェッティ) 

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

 

 
カササギ殺人事件(アンソニーホロヴィッツ)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

 
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

 

 
三つ編み(レティシア・コロンバニ)

三つ編み

三つ編み

 

 
波 (ソリーナ・デラニヤガラ)

波 (新潮クレスト・ブックス)

波 (新潮クレスト・ブックス)

 


マンハッタン・ビーチ(ジェニファー・イーガン)

 

マンハッタン・ビーチ

マンハッタン・ビーチ

 

 
パワー(ナオミ・オルダーマン)

パワー

パワー

 

 
ピュリティ(ジョナサン・フランゼン)

ピュリティ

ピュリティ

 

 
赤い髪の女(オルハン・パムク)

赤い髪の女

赤い髪の女

 

 

国内編。

1位 火宅の人(壇一雄) 

火宅の人(上) (新潮文庫)

火宅の人(上) (新潮文庫)

  • 作者:檀 一雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/07/28
  • メディア: 文庫
 
火宅の人 (下) (新潮文庫)

火宅の人 (下) (新潮文庫)

  • 作者:檀 一雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/07/28
  • メディア: 文庫
 

 2019年はなんといっても「火宅の人」!いつか読もうと思っていてようやく重い腰を上げて読んだんだけど、思っていたよりずっとずっと面白かった!勝手に毛嫌いして読んでいなかったことを後悔するけど、だからこそ今読んでこれだけ楽しめるんだからそれはそれでよかったのかも。

これがほぼ実話であるならば作者自身たいがいなクソ男だと思うけど、溢れんばかりの生命力と破滅的な生き方とそれらを俯瞰して見つめる冷徹さにクラクラした。
すばらしかった。


2位 檀(沢木耕太郎

檀 (新潮文庫)

檀 (新潮文庫)

  • 作者:沢木 耕太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/07/28
  • メディア: 文庫
 

 「火宅の人」を読んで、妻の側から見た物語も読んでみたいと思っていたら、あったのだ。妻ヨソ子さんが檀一雄が亡くなって17年経ってから檀一雄のことや結婚生活について語るという内容。

「火宅の人」ではかなりひどい言われようだった妻ヨソ子だけれど、怒りながらも作家として人間として壇一雄をそれでも尊敬し見放さなかったところに凄みを感じた。
天晴れとしか言いようがなかった。


3位 屋根屋(村田喜代子

屋根屋

屋根屋

 

読めば読むほど好きになる村田喜代子さん。
これはほんとにどこからどこまでも好みだった。

ふとした会話がきっかけで屋根屋職人と夢のなかの旅に出かけるようになる、というシチュエーションも最高だし、夢の中で待ち合わせして一緒に空のたびに出るというのがもうたまらない。
そして二人の分かりあえなさもロマンティックというかリアルというか。
あと、屋根屋の喋る九州弁がいだてんファンの私からすると萌えポイントだった。
ほんとにまだまだ自分好みの作家さんがいるんだなぁ、ということを知れた喜び。

 

4位 熱帯(森見登美彦

熱帯

熱帯

 

千一夜物語、物語の中の物語、繰り返しながら少しずつ変化していく世界…と、私の好きな要素がぎゅっと詰まった小説だった。

現実と幻想がらせん状になってぐるぐるぐるぐる繰り返す楽しさ。
モリミーを読むのは久しぶりだったけど、読んでる間ほんとにわくわくした。よかった!


5位 あちらにいる鬼(井上荒野)

あちらにいる鬼

あちらにいる鬼

 

井上光晴ドキュメンタリー映画を見たことがあったので、あれはいったいどういうことだったのか、また当事者やその家族はどう感じていたのか、そういう下世話な興味もあって読んだんだけど、恨みがましいところがひとつもなくすがすがしい作品ですばらしかった。
火の玉のような男を挟んだ女性二人の魅力的なこと。書くことと書かないこと。別れることと別れないこと。
これをモラルでどうこう言ったりするのはほんとにバカバカしい。天晴れじゃないか。こんな人生。

6位 飛族(村田喜代子)

飛族

飛族

 

国境沿いの島に住む二人の老女の魅力的なこと。
祈りとともにある暮らし。鳥踊りをする二人の姿がいつまでも目に焼きついている。
これから親もそうだし自分もどんどん年をとっていくけれど、年をとったからといって何もかもを諦めたくないし諦める必要もない。そんな希望も見えるところが素敵。

 

7位 夢見る帝国図書館中島京子

夢見る帝国図書館

夢見る帝国図書館

 

 物語の中で展開する「夢見る帝国図書館」という物語には、図書館を訪れる文豪や歴史に翻弄される図書館の歴史が語られるのだがこれがとても魅力的。
本好き、図書館好きにはたまらない内容だった。

8位 蜜蜂と遠雷(恩田陸)

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

買った本はなかなか読まずそのうち文庫版も出てしまう、というのがいつものパターンなんだけど、これもまさにそれ。
読もう読もうと思っているうちに何年もたち、あれ?また最近話題になってるのはなぜ?と思ったら、映画化されていたのだった。

音楽を表現する言葉がこんなにも豊かであることに驚いた。
そして音楽への圧倒的な信頼と尊敬の念に満たされた物語だった。


9位 愛が嫌い(町屋良平)

愛が嫌い

愛が嫌い

 

読書メーターで絶賛している人がいたので手に取ってみた本だったんだけど、とてもよかった。
人間をフラットに全く別の視点から見ようとしているような…でもそれが奇をてらっていなくて…自分にも覚えがある部分…身につまされるところがたくさんあって、心地よさと居心地の悪さ、両方がある読後感。
面白いなぁ。若い人にもまだまだ知らない面白い作家さんがいるんだなぁ。


10位 体温(多田尋子)

体温

体温

  • 作者:多田 尋子
  • 出版社/メーカー: 書肆汽水域
  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: 単行本
 

これはちょっと自分が貼り付けておいてなんなんだけど、実際に読んだのはこの本じゃなくて講談社で出ていた方で、収められている短編も共通するのは「体温」だけなので、書影に偽りあり、なのだけれど。ものすごくよかったので。

男女の描き方が今ではちょっと「古い」と言われてしまいそうな気もするんだけど、ここに描かれている女性はみな凛としていて強い。
とても揺さぶられたし魅力を感じたので、この書影に出ている本はすぐに買って読もうと思う。


後は順不同で良かった本。

 

私小説―from left to right(水村美苗

私小説―from left to right (ちくま文庫)

私小説―from left to right (ちくま文庫)

 

 

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)(東畑開人)

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

 

ある男(平野啓一郎

ある男

ある男

 

 

不意撃ち(辻原登)

不意撃ち

不意撃ち

 

 

 とめどなく囁く(桐野夏生

とめどなく囁く

とめどなく囁く

 

 

圓朝(奥山景布子)

圓朝

圓朝

 

 

文豪お墓まいり記(山崎ナオコーラ)

文豪お墓まいり記

文豪お墓まいり記

 

 

居た場所(高山羽根子)

居た場所

居た場所

 

 

死にがいを求めて生きているの(朝井リョウ

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 昔より読むスピードは遅くなってきているし、なかなか頭に入らない、なんてこともあるけど、やっぱり本はいい。今年もたくさん読めますように。