りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

エシュティ・コルネール もう一人の私

 

エシュティ・コルネール もう一人の私

エシュティ・コルネール もう一人の私

 

 ★★★★

一九一四年、第一次世界大戦。一九一八年秋、社会民主政権誕生。一九一九年春、共産主義革命。一〇〇日余で崩壊、王政復古と国土分断。そして赤色テロ、白色テロ。この激動の時代…!作家の役割は、民衆に勇気と力を与え、権力と闘い、人々を導くことであるという伝統が、ハンガリーに生まれた。一九三三年、コストラーニが大批判に晒されながら示した最後の傑作長篇。 

独特のユーモア…ニヒリズム…不条理が香る作品群。連作短編とも違う、断片的な物語の集まり。
副題にもあるようにエシュティは作者のもう一つの顔。なれなかった自分、なりたかった自分のように感じた。

極端で気まぐれで時に残酷だけれども純粋で子どものまま大人になってしまったようなエシュティの視点で語られる物語と彼と対峙する人(作者?)の視点で語られる物語が入り混じっている。エシュティが旅で出会った人たちや出来事、自分の敬愛する人物について語る物語が面白かった。

今読むとそれほど不道徳にも思わないのだけれど、若いころから詩人として地位を確立していた作者が、自分に求められる社会的な立ち位置をひっくり返す覚悟を持って書いた作品のようだ。

読書メーターにもAmazonにもまだレビューなし。
私はどうしてこの本を手に取ったのか、記憶がないんだけど…表紙のインパクトはなかなかのもの。