りつこの読書と落語メモ

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第七回 柳家さん助の楽屋半帖

11/11(月)、駒込落語会で行われた「第七回 柳家さん助の楽屋半帖」に行ってきた。
 
・さん助「磯の鮑」
~仲入り~
・さん助「入鹿に乗った少年」(イルカに乗った少年、煙草、月夜)
・さん助「鴻池の犬」
 
さん助師匠「磯の鮑」
「この間夜の0時頃、知らない人からメールが来まして」とさん助師匠。
メールには「師匠、〇〇病院に入院することになりました」と書いてあった。
え?師匠が入院?!でも兄弟弟子のアドレスは登録してあるから名前が出るはずなのに、出ないってどういうこと?誰?
あ、もしかして入ったばかりの前座さんが付き添い?
これは一大事!と思ったけど、時間も時間だからとりあえず連絡するのは翌朝にすることに。
次の日の朝になって一番優しくて穏やかな兄弟子(!) に電話して聞いてみると「え?そんなこと聞いてないよ」。
兄弟子に連絡が来てないってことはなんか違うのかも。
あ、もしかして他の師匠の弟子が慌ててメールして自分に送って来ちゃったとか?
それだったら困ってるかもしれないと思い、メールに返信。「私、柳家さん助と申します。失礼ですがあなたはどなたですか?」。
返事が返ってくると、これが知り合いの人!
どうやらこの「師匠」というのは、私に対する呼びかけだったみたいです。
あーー危なかった。師匠宅に慌てて電話したりしたら、リアル松曳きになるところだった…。
 
…リアル 松曳き、面白すぎる!
でもちゃんと一呼吸置いたの、エライぞう!(←褒めること自体が失礼)
あー笑った笑った。面白いなぁ、さん助師匠。生きざまが落語(笑)。
 
そんなまくらから「磯の鮑」。
この間にぎわい座で聞いた時とガラッと変わっていたからびっくりした。
 
最初は町内の若い連中のわいわいがやがや。
「お前最近、中に行きっぱなしっていう噂じゃねぇか」
「お?聞いてる?そうなんだよ。もう吉原の方が家みたいになっちゃって」
なんて会話をしていると、その男が「あ、そういえばお前の相方の手こずるから手紙を預かってるよ」。
「え?俺に手紙?いやぁ~まいったなぁ。惚れられちゃうとこうやって手紙が来ちゃうからなぁ。寂しがってるんだなぁ。いやぁ~まいるなぁ」
せっかくだからその手紙、みんなの前で読み上げようということになり、「じゃ俺が読むよ!」と手を挙げた男。「なんたって俺は吉原に行き慣れてるから!遊びってもんを知り尽くしてるから!」
読み始めると案の定しどろもどろ。この誤読っぷりがすごくおかしい。読み間違えていちいち「ええええ?〇〇ーー?」と驚くのがおかしくておかしくて。
 
そんなところへ与太郎が入ってきて「みなさんまた吉原の話ですか」とにこにこ。
吉原ってそんなに楽しいところなんですか、何がそんなに楽しいんですか、と聞いた後に「吉原行くと儲かりますか?」。
そこでいたずらっ気を起こしたくまさんたちが「 蔵前に女郎買いの師匠がいる」と教える。
そこからの展開はにぎわい座の時と一緒なんだけど、あの時よりずっと面白かった~。
なんだろう。さん助師匠の与太郎ってバカっていうよりは無垢な子どもっぽくて「師匠」に教えてもらっていちいち感心したり、繰り返したりするのがなんともチャーミング。
師匠も教えているうちにだんだんノリノリになってくるのも楽しい
 
吉原に行ってからの若い衆とのやりとりもバカバカしくて楽しいし、なによりも花魁が優しくて色っぽくてとってもいい。なんかさん助師匠で珍しい気がする。色っぽくて優しい女性って。
すごく楽しい「磯の鮑」だった。
 
 
さん助師匠「入鹿に乗った少年」(イルカに乗った少年、煙草、月夜)
頭を下げるなり、いきなり「あーー”煙草好き”、教わりてぇなぁ」。
 
おおお、ついに1席やらずにいきなり三題噺に入るというニューパターン。
お題取りの時に「煙草」という題が出た時にさん助師匠が「”煙草好き”っていう噺があるんですよ。今やる人はいないですけど。三代目小さんがやってたらしいんですけど」と言っていたんだけど、なんとそれをいきなり落語に取り入れたのか!
 
「やりたいんだよ。”煙草好き”。それも3代目小さんから教わった人に教わりたいんだよ、燕弥くん」
「ええ?それは難しくない?だって3代目小さんが亡くなって何年になるんだ?さすがに存命の人はいないんじゃないか。速記でやればいいじゃない。いつも速記でしょ。兄さんは。」
「いつも速記じゃないよ!ちゃんと教わってるよ!」
「速記でいいじゃない。速記で」
「速記速記言うなよ!教わりたいんだよ」
二人で話していると今度は喬志郎が「あーそういえば…3代目小さんの弟子が今130歳ぐらいになって八甲田山に住んでるって聞いたことがあるなぁ」(←似てねぇものまね)
「え?なに、その話?喬志郎兄貴が言うことなら間違いないな…。よし!じゃ行ってみよう。それで教わるんだ、直接。」
 
そう言い残してさん助は八甲田山へ。
ふもとで会った老人に訪ねると「ああ、そういえば山の頂上近くに炭小屋のような小さな小屋があってそこに老人が住んでいて一人で何やらぶつぶつ言ってるという話を聞いたことがあるな」
「一人でぶつぶつ?」
「ああ。こんちはーご隠居さん。おや誰かと思ったらはっつぁんじゃないか。…とか、日本橋の浜町に黒板塀に見越しの松…とか」
「間違いない…そこだ!」
 
それから八甲田山を登り始めるさん助。「あーなんで俺はいつも着物なんだよ」と嘆きながら。
最初のうちは景色を眺める余裕もあり、空を見上げて「あーーきれいな月夜だなぁ。」(拍手!)「これが見れただけでも来た甲斐があったってもんだな」。
しかし上へ上へと行くうちにどんどん山は険しく、天候は厳しくなってくる。
雨がものすごい勢いで降りしきる中、「がぉーーーー」といううめき声。
なにか?!と思うと、虎!(八甲田山に!)
襲い掛かろうとする虎にさん助が扇子を刀に見立てて「えいっ!!」とやると、虎は慌てて逃げ出す。
「こ、これが芸の力…」
そうやって現れる獣を芸の力で追い払ったさん助だったが最後に現れたヒヒにはこれが通用せず。もはやここまで!と思ったところで雷が落ち、ヒヒは真っ二つ。どうにか難を逃れ、ようやくその伝説の噺家の小屋へたどり着く。
 
さん助を小屋の中に入れた落涙師匠は「あなた…わざわざここまで来たということは…噺家さんかな?」。
私はあなたに噺を教えていただきたくてここまでやってまいりました」
「なるほど。それで、なんの噺を?」
「煙草好きをお願いしたいのです」
「ああ…煙草好き。それはお家芸だからだめです」
「えええ?ここまで来たのに?お家芸って…もう誰もやる人がいないじゃないですか!!」
しつこく食い下がるさん助に最後は「わかりました。教えましょう」と落涙師匠。
ようやく念願の稽古をつけてもらえることになり、ほっとしたさん助。
小屋の中を見渡して「それにしても…本がたくさんありますね…〇〇に××に…」
「ああ、私は歴史を研究しています」と言って蘇我入鹿の蘊蓄を語る師匠。その中で「イルカに乗った少年」が使われる(拍手!)。
そして、どうしてヒヒが真っ二つになったのでしょうというさん助の問いに師匠は「ヒヒ」が二つで「火」「火」、でサゲ。(えええ?)
 
…いろいろツッコミどころはあったけど(八甲田山に虎?!とか、山を登る時に見に付けるのはザイルじゃなくてハーネス、とか)、まさか「イルカに乗った少年」が「蘇我入鹿」になるとは…。ほんとさん助師匠の発想って常人の枠を超えてる(笑)。
面白かった。
 
さん助師匠「鴻池の犬」
まだ時間があるので…と 「鴻池の犬」。
普通の噺家さんが人情噺としてやる「妾馬」とかが全然人情噺っぽくないのに、「鴻池の犬」がこってりと人情噺になっているのが、さん助師匠らしくて面白い。
三題噺のあとでお疲れだったのかちょっとわちゃわちゃっとした印象はあったけれど、おかげ犬との別れの場面は悲しくて涙…。
再会できたクロの優しさに、ああ…これでもうシロは大丈夫…という安心感とともに、おひらき。