居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)
居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 東畑開人
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2019/02/18
- メディア: 単行本
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★★★★★
「ただ居るだけ」と「それでいいのか?」をめぐる
感動のスペクタクル学術書!
京大出の心理学ハカセは悪戦苦闘の職探しの末、ようやく沖縄の精神科デイケア施設に職を得た。
しかし、「セラピーをするんだ!」と勇躍飛び込んだそこは、あらゆる価値が反転するふしぎの国だった――。
ケアとセラピーの価値について究極まで考え抜かれた本書は、同時に、人生の一時期を共に生きたメンバーさんやスタッフたちとの熱き友情物語でもあります。
一言でいえば、涙あり笑いあり出血(!)ありの、大感動スペクタクル学術書!
とても面白かった。
東大出の博士が沖縄のデイケアで働いた4年間のことを綴っているのだが、デイケアの意味、ケアが完ぺきであればあるほど価値に気付かれないことなど、そして「ただ居る」ということの意味など、いろいろ勉強になった。
この方の勤めていた職場で情熱的に仕事をしていた人たちが次々が辞めていく原因についてははっきりと書かれていないのだが、看過できない歪みがあるのだろうと感じた。
「居るのがつらい」と感じる場面は私にも多くある。
どちらかというと自分は人との調和をそれほど重んじているつもりではない方だと思っているのだが、それでも職場や学校などで「居るのがつらい」と感じることがあって、特に職場でそれを感じ始めるとあっという間に鬱状態に一直線。
効率や利益が何よりも大事な職場で目立った成果をあげること。そのプレッシャーは大きくて、そこから少しでも外れると、自分はここに居てはいけない人間なのだ、と感じてしまう。
仕事をしている人は多かれ少なかれこの重圧の中で生きていて、それが通勤電車の一触即発の雰囲気や子連れや専業主婦への暴言にも繋がっているような気がする。
職場だけではなくあらゆる場面で「ただ居るだけ」ということが否定されていることが、今の生きづらさに通じているのだろう。
ケアにおいて「ただ居ること」がどれほど大切なことなのか、ということがこの本を読んでいると伝わってくる。
それを誰かに説明することは難しい。でもこの本の中にはそれがある。
こういう場所がとても大事なのだということ。そしてそこで働いている人たちも決して万能でもなければ強靭でもないということ。お互いにケアしあっているということはこの本を読むまで知らなかった。
軽い文体で書かれているのでとても読みやすい。いろんな人に読んでほしい。