りつこの読書と落語メモ

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三遊亭金遊を偲ぶ会

10/25(金)、上野広小路亭で行われた「三遊亭金遊を偲ぶ会」に行ってきた。


・金かん「後生鰻」
・金の助「大工調べ」
・南なん「置き泥」
~仲入り~
・金かん「真田小僧(通し)」
・金の助「心眼」

 

金かんさん「後生鰻」
普段はまくらをふらない金かんさんが、今回は師匠を偲ぶ会ということでまくらをたっぷり。
私がうちの師匠を始めて見たのは4年前の浅草演芸ホールでした。
その時うちの師匠は「権助魚」をやったんだけど、やる気があるんだかないんだか…元気も覇気もなくて…その時お客さんも少なめだったんですけど…でも師匠は声は通るので…その少ないお客さんがみんなぐーっと噺に引き込まれていた。それを見て「なんか面白いなぁ」と妙に惹かれました。
入門してからその時の話を師匠にしたことがあったんですが、「権助魚」はめったにやらない噺なんです。だから師匠も覚えてました、その時の高座。
それで「あー、あの時はひどい風邪をひいてたんだよ」と。
あの元気のなさは風邪のせいだったのか…。

師匠が亡くなってから知り合いの人やお客様に師匠が載っている雑誌とか昔のかわら版とか見せていただく機会が増えたんですが、うちの師匠が二ツ目になりたてのインタビューがありまして。
その時のインタビューで師匠、「売れても売れなくてもどうでもいい。売れないで食えなくなって野垂れ死にするならそれでいい」と。
二ツ目になったばかりでそんなこと言う人いますか?

その後も師匠はよく「俺は野垂れ死にしたいんだ」と言ってました。
ほんとに野垂れ死にしたがる人だな、と思ってました。

兄さんが二ツ目になってその祝いの会を兄さんの地元でやることになって、師匠と3人で初めて一門会をやりました。
師匠はとっても喜んでた。
会のあとに、金の助兄さんのご両親も交えて飲んだんですが、師匠は珍しくたくさん飲んではしゃいでました。
その時に師匠が言ったんです。「俺は今までずっと野垂れ死にしたいと思ってたけど、考えが変わった。長生きしたいよ」。
それを聞いた時、「うわ、師匠、今すごいこと言ったよ!!」と思ったんです。なんかすごいこと聞いちゃった!って。
はっとして兄さんの方を見たら…お酒に弱い兄さんは寝かかってました。
起こしたかったんですけど私が兄さんを小突くわけにもいかないので、これはお父さんに起こしてもらおう!と思ってみたら、お父さんは机にうつ伏して寝てました…。

会はお開きになって、私と師匠はホテルに帰ったんですが、師匠が珍しく「おい、もう少し飲もう」と言って、二人で駅前の居酒屋で飲みなおしました。
師匠はいろんな話をしてくれて…。
それでももう遅いし明日もあるからと帰って部屋の前で別れたんです。それが生きてる師匠を見た最後でした。

あとうちの師匠は結構いろんな噺を持っていたんですけど、寄席でかける噺はそれほど多くなくて。結構絞ってました。
私、この噺は師匠に合ってるのになぁ…とか…とても生意気なんですけど、そんな気持ちがあって師匠に「この噺はやらないんですか?」「あれは?」とあれこれ聞いたことがあったんです。
すると師匠は「それは嫌いだ」「それも嫌い」と。私が名前を挙げた落語のほとんどを嫌いっていうんです。好きな噺がそれしかなかったらもはやそれは落語が好きではないのでは…(笑)。あと、師匠に「嫌い」と言われた噺はなんとなくやりづらくなってしまうので、これ以上聞くと自分のレパートリーが減ってしまう!と思って、途中で聞くのをやめました。

今日は師匠を偲ぶ会なのでみんなで師匠に教わったネタをやります。やってたってことは好きな噺だったはずなので、それで師匠も喜んでくれるんじゃないかな、と思います。

そんなまくらから「後生鰻」。
金遊師匠の「後生鰻」は聞いたことがなかったけど、ああ…確かに金遊師匠に合ってる。
いかにも落語らしくていいよなぁ。
金かんさんは前座さんなのに師匠譲りでとても落ち着いていて淡々としていて…でもひょいっと面白い。
いいなぁ。すごく好きだなぁ。前から好きだったけど、まくらもとってもよかったし、ますます好きになったよ。
二ツ目になるのが待ち遠しいな。


金の助さん「大工調べ」
金かんさんと違って金の助さんは明るくて元気でわりと前に出る印象があったんだけど、「大工調べ」…師匠を彷彿とさせるところがいくつもあって、ちょっとびっくりした。
まくらでは金かんさんと違って師匠のことは触れなかったんだけど、それもまたカラーが分かれていて面白いなと思った。
活舌がよくて江戸弁がきれいで気持ちのいい「大工調べ」だった。

 

南なん師匠「置き泥」
とても久しぶりの南なん師匠。
この噺は金遊師匠に教わった噺なのだとか。
噺も教わったし、マージャンにもよく誘ってもらいました。ずいぶん高い授業料を払わせられました。
あと、俳句の会も誘われて入りました。金遊師匠は俳句も随分うまくて我々よりもっと上級の会にも入ってやってましたけど、私はだめで…一生懸命作ってもよく先生に「それは俳句じゃなく川柳」と言われました。
いくつか自作の俳句を紹介してから「置き泥」。

久しぶりに見たけど、泥棒に入られる男がほんとに何もなくてすってんてんで途方に暮れていて…最初から泥棒に何かもらおうという気持ちはなかったんだけど、どんどん心がほどけてきて甘えが出てきたんだな、というのが見えて面白い。
「この先いいことがあると思う…よ?」というのも精いっぱいのお世辞なのかな。
楽しかった。


金かんさん「真田小僧
ああ、そうだ。金遊師匠の「真田小僧」見たことあった。そしてあの時も師匠は通しでやったんだった。
子どもが口が達者で困っしゃくれてるんだけど、なんかけろっとしていてかわいい。
ことさらしつこくやるわけでもないんだけど、やり込められる父親と妙に感心する母親の対比もくっきりしていて、楽しかった。

金の助さん「心眼」
ああ、金遊師匠の「心眼」見てみたかったな…。
いやしかし金の助さんの「心眼」もとてもよかった。特に目が開いてからのはしゃぎぶり、ちょっと酷いことを言ってしまうあたりの弱さがリアルでよかったなぁ。
こうしてみると、二人とも師匠の芸風や佇まいを受け継いでいるところがあって、いいなぁ…と思った。
とてもいい会だった。