りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

露新軽口噺

10/11(金)、らくごカフェで行われた「露新軽口噺」に行ってきた。

・新治&新幸 ご挨拶
・新幸「東の旅」(発端)
・新幸「手紙無筆」
・新治「仔猫」
~仲入り~
・新治「野ざらし
・新幸「狼講釈」

新治師匠&新幸師匠 ご挨拶
平日の昼にもかかわらず満員御礼。かくいう私も有休をとっての参加。
「今日は開場の前にこちらに来たんですが、階段の方に何名かの方がすでに来ていらして私の姿に気が付いたら、”師匠、お写真を撮らせていただいてもいいですか?”と声をかけてくださいました」と新治師匠。
東京のお客様は関西とは違いますなぁ。我々芸人を「噺家さん」と呼んで持ち上げてくださってリスペクトしてくださる。写真を撮らせていただいていいですか?なんて。
大阪ではこうは行きません。
「ちょっとあんた、写真撮って」。自分たちを撮らせますから。


…わはははは。
新治師匠をこんな小さい箱でこんな目の前で見られるなんてうれしい~。
と思っているのは私だけじゃないみたいで、前の方の席から埋まって行って、みんな師匠が登場するとニコニコ笑顔。
そんな客席を本当に嬉しそうに笑顔で見つめる新治師匠と新幸さん。とってもいい雰囲気。

それから新治師匠が新幸さんに「お前、関西の若手落語家の代表として、今若手の間でこれが熱い!ちゅう話をせぇや」。
うおおお、無茶ぶり?!と思ったんだけど、新幸さん、繫昌亭がリニューアルオープンした話やしくじりの多い前座さんが「また」師匠から破門になりかけた、という話。
この前座さん、天然というか大物というか…ある時師匠から「魚を買うてきて、あとこのハガキをポストに入れてきて」と頼まれたら、魚をポストに投函しハガキを持って帰って来たらしい。
そんな具合なので今回もとんでもないしくじりの結果破門を言い渡されたらしいのだが、楽屋の師匠方が「あいつを破門?やめてくれ。あいつがいるから楽屋に来るのが楽しみなんだから」とかベテランの三味線の師匠が「あの子がやめるなら私も…」とまで言い出して、破門されずに済んだらしい。

…そういえば落語協会でもネタ帳の誤字やネタの書き間違えがすさまじい前座さんがいて師匠方に大人気で市馬師匠が「お前はそのまんま大きくなれよ」と頭をなでなでした、なんていう話も聞くけど、愛されキャラっているんだね。

師匠の無茶ぶりにもちゃんと答えた新幸さん、なんと今回は新幸さんがトリとのこと。
5年目のお弟子さんが師匠の後に上がる?!とびっくりしたのだが、なんでもこの会、もとは新幸さんの働きで行われることになった会らしい。

新幸さん「東の旅」(発端)
これは以前、深川の会でも新治師匠が「上方ではこれを前座がお客さんが入り始める時間帯からやり始め、もうそろそろ開演にしてもええやろ、という時間までやります」とおっしゃって「その雰囲気を味わってもらいたい」と新幸さんにやらせたことがあったけれど、今回も。
結構わかりにくいというか難しい噺だけど、これを前座が一番最初にやるというの、面白いな。


新幸さん「手紙無筆」
自分はまだ5年目なのでこんな風にトリをつとめる…まして師匠の前に上がるなんていうのは初めて、と新幸さん。
普段師匠の会のお手伝いで東京に来る時は前座なのでまくらをふることはできないんですが、まくらをふれる機会があったら是非お話ししたいと思っていたことがあるんです、と。

夏の鈴本演芸場のさん喬・権太楼の会にいつもゲストで呼ばれている新治師匠。
10日のうち1日ぐらいはさん喬師匠を接待したい、と新治師匠がさん喬師匠をお誘いすると「ああ、今日はお客様と打ち上げに行くことになっているんです」とさん喬師匠。
それならそのお客様も一緒にいかがですか?と言うと、それならば…ということになった。
新幸さんがお店を予約して一人先に店に行って先に料理などを注文したんだけど、その時に「柳家といえば大食い」と本で読んだ知識を頼りにかなりの量の料理を注文しておいた。
ところがいざやってきてみると、師匠が連れてきたお客様はすでに夕飯を済ませたあとで、それを差し引いても料理の頼みすぎ。これはとんだしくじりだーーと青ざめているとさん喬師匠が大きな声で「おい!新幸!」。血の気がさーーっと引いた時にさん喬師匠が「いいね。私の師匠の小さんはテーブルいっぱい料理が並んでいるのが好きだったんだよ」。…もう涙が出るくらい嬉しかった。
それでも頼みすぎなのは明らかだったのでとにかく自分がなんとかしなくちゃと食べていると、同じ柳家の真打が「新幸さん、そんなに無理しなくてもいいよ。」と言った後に「俺たち柳家はこの後にラーメンが普通だぜ」。
…もうしびれました。かっこよすぎます。最高じゃないですか。「この後にラーメンが普通だぜ」って。

…この話を聞いたらなんかちょっと涙が出てしまった。うるうる。

そんなまくらから「手紙無筆」。
内容は一緒だけど関西弁だとまた印象が違う。より笑い成分が多くなる感じ。
新幸さん、間の取り方が絶妙なので、わかっていても爆笑してしまう。楽しかった~。

 

新治師匠「仔猫」
こちらの会の主催者さんから「東京であまりやったことのない噺を」というリクエストがありましたので、こちらを…と。

あるお店に口入やさんから紹介されたとやってきたおなべという女。これがかなりの不細工だったので番頭はなんのかんの言って帰そうとしたのだが、お店の主のおかみさんが「あたしが預かりましょう」と言っておなべと話をし、お給金が安くてもかまいませんと言うので雇うことになる。
言葉はぞんざいだが力持ちで働き者で気のいいおなべは奉公人の人気者。
あるとき、店の若い者が集まってバカ話をしている時に、おなべの噂になり「おれは〇〇(他の店で美人と評判の女中)よりおなべの方を嫁にしたい」と言い出す男もいて、みんなでやいやいやっていると、一人の奉公人が「お前…おなべにバカにご執心だけどおなべの本当の姿を知らないだろ」と言い出す。
本当の姿?と聞くと、ある晩外のはばかりに行った時、おなべが部屋を抜け出していくのが見えたのだが戻ってきたおなべがものすごい形相で帰ってくるのを見た、と。口は耳まで裂け、口のまわりは血だらけ、明らかに正気を失った目をしていた。

まさかそんなことが…と言うと、実は私もその姿を見たことがあると割って入って来たのが番頭。
その話を耳にした店の主人はおなべに暇を出した方がいいだろうと、おなべの留守中におなべの荷物を改めることに…。


…おお、これは前に一度だけ聞いたことがある!と思ったら、藤兵衛師匠だった

おなべの不細工ぶりをやいやい言いつのったり、おなべに悪癖があると聞いてだったらおなべの留守中に荷物を改めて何か証拠をつかもうとしたり、ちょっと嫌なところもある噺なんだけど、新治師匠に品があって軽いトーンなので嫌な感じはしない。
ひまを出されそうになったおなべが番頭に身の上話をするところでは音曲が入って(テープだと思うけど)怪談調で少し怖い。
でもサゲはあくまでも落語らしく、がははは!と笑っておしまい。

楽しい~!!こういう噺を聞けるのはほんとに嬉しいなぁ。


新治師匠「野ざらし
この噺は可朝師匠に教わりました、と新治師匠。
上方では「骨釣り」という噺ですが、可朝師匠は談志師匠から教わっているので、私がやるのは江戸版です、と。
それから可朝師匠の思い出話。いやぁこれが豪気というかスケールが大きくてすごい!びっくり。いまだったら×××というエピソードも多くて、おおらかな時代だったんだなと思ったり。

そんなまくらから「野ざらし」。
江戸版だけどやっぱり関西弁で(当たり前か(笑))、川は淀川。サゲも違うんだね!
釈台を前にしないで落語をする新治師匠も新鮮。
浮かれて歌うところもばかばかしくて楽しかった!

 

新幸さん「狼講釈」
初めて聴く噺。
無一文の旅の男が何か食べさせてもらおうと床屋を訪ねるのだが、そういうことは禁じられているとにべもなく断られる。
お坊さんや芸人なら食事を出して泊めてやれるのだが…と言われ、思わず「私は講釈師です」とうそをつく。
講釈師だったら庄屋さんが大の講釈好きだから紹介しましょうと連れていかれると、下へも置かないもてなしぶり。
この男、ごちそうを食べて風呂にも入りご祝儀ももらって講釈もしないで屋敷を逃げ出す。
あーー面白かった、懐もあったかくなったし、どこか宿へでも泊まろうと独り言ちていると、何者かが追ってくる。
何かと思ったらこれが狼の群れ。お前よくも庄屋さんを騙してくれたな!と狼にすごまれ、狼の前で講釈を披露することに…。


…狼を前にやる講釈がもうめちゃくちゃでとても面白い。
那須与一が出てきたと思えば赤穂浪士になったかとおもえば水戸黄門
やぶれかぶれの講釈が楽しくて大笑いだった。

あー楽しかった。
また第二弾もありますように。

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