りつこの読書と落語メモ

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第六回 柳家さん助の楽屋半帖

 10/7(月)、駒込落語会で行われた「第六回 柳家さん助の楽屋半帖」に行ってきた。


・さん助「金明竹
~仲入り~
・さん助「十徳」~「或るロシア人伯爵の手記」(「「黄瀬戸」「吸血鬼」「東京タワー」の三題噺)
・さん助「妾馬(通し)」

 

さん助師匠「金明竹
もしかして久しぶりだったのかな?と思ったら、三題噺の時に「1席目にやった金明竹、久しぶりにやったらひどいことになっちゃった」と言っていたので、そうだったらしい(笑)。

与太郎はすごくチャーミングで面白いんだけど、おかみさんがなんかこう…気がない感じ?おかみさんがもっと存在感が出てきたらすごーく面白くなる気がする。ってえらそーーー。すすすびばせん。

 

さん助師匠「十徳」~「或るロシア人伯爵の手記」(「「黄瀬戸」「吸血鬼」「東京タワー」)
やはり三題噺に入る前に一席やるパターン。
「かたびらのねんねこ」って何度聞いてもかわいいな、はっつぁん。
そして「なんで十徳を十徳っていうかそのわけを聞かせてくれ」と言われたご隠居が「それは知らないよ」とあっさり言うとはっつぁんが「それはだめだよ、ご隠居はそんなことじゃ。おれじゃねぇんですから。だめですよ。わけを言わないと」と食らいつくおかしさ。
ご隠居が「そう言われても、知らない」「わけなどない」とにべもないのもおかしい。あんまりはっつぁんがしつこいんで無理やりこじつけると、それにはっつぁんが異様に感心するのもばかばかしい。楽しい~。

「十徳」のサゲを言って頭を下げて、「よし、終わった」。

神保町の会も終わったから久しぶりに歩いてみるかな。神保町も随分変わっちゃったな。でも好きなんだよ、古本屋。珍しい本や古い本を買うのが俺の趣味だからな。
神保町と言えばこの映画館。いいよね。古い映画やってて。
俺、若尾文子が好きなんだよ。いいんだよ若尾文子は。もう何の役をやってもいい。お前いくつなんだよ?と言われそうだけど…やっぱり若尾文子だよ。なんともいえない色気があって品があって…。最近の女優…わからないからな。米倉涼子も4年前にやっとわかったぐらいだからな。

昼はカレーがいいな。神保町はカレー屋も多いんだよね。ええと…ボンベイで食べるか。ボ、ボンベイ?え?…あ、ボンディか。名前間違えちゃった。嫌いなんだよあの店。
昔行ったとき俺財布忘れちゃってて…あ、お金がないってなって…どうしよう…出世払いってことにしてもらおうかと思ったけど、絶対俺のこと知らないもんなぁと思ってさ。
だから、エチオピアにしよう。エチオピア。あーでも学生の頃はなかなかエチオピアでは食べられなかったよ。あそこで食べるのはセレブだったよ。
よく行ったのは店の名前は忘れたけど300円で天ぷら…これは具を選べるんだ…いもかキスかごぼう…海老は別に300円かかったから海老を頼むことはなかった…それにご飯に味噌汁。ご飯は大盛にもしてもらえて。どの天ぷらにするかがあの頃俺の毎日のメインイベントだった。
あと喫茶店、ブラジル。ブラジルも高いから学生時代は行けなかったけど、噺家になってから行ったな。それでケーキセット。ケーキはサンマルクっていうケーキ。どういうケーキかっていうとこう…そうこういう…層に…だめだ、説明できない。
行ってくれ。今もあるから。ブラジル。サンマルクって言ってもサンマルクカフェじゃないよ。ケーキの名前。

あー大学だよ。明治大学。ここに通ってたんだ。お茶の水から。
お茶の水っていうのがよくないよな。ギター屋!しかも中古の!っていうイメージだもんな。三田にある慶応とは大違いだ。
だいたい明治大学ってここを第一志望にしてきたやつはめったにいなくて、たいてい慶応とか早稲田に落ちて来たやつが多くて、だからなんか屈折してたな。暗かった。校舎も暗かったけど。でも今はもうこんなにきれいになっちゃって…もう昔の面影はまるでなくなっちゃったな。
俺が通ってた頃は木が鬱蒼と茂っててそこにボロボロの木造校舎。雨漏りがするような…。
入学したら「安保反対」とか立て看板だらけでマスクしてサングラスして青いヘルメットしてるやつらがいて…タイムスリップしたのかと思ったよ。
7階はそういう学生に占拠されててバリケードみたいのに覆われてて入れらなかったんだ。それでもって入学した時、みんなはオシャレな…文芸部とかのチラシを渡されてたけど、俺には全然そういうの渡されなくて…唯一渡されたのが社会主義を学ぶ会のチラシで、渡してくれた女の子がちょっとかわいかったから俺入ろうかと一瞬思ったけどやっぱり怖くてやめたんだよな。

あーそんなことはどうでもいいんだ。本屋だよ本屋。本屋に入ろう。あーいいねぇ…。あ、これはなんだ?「黄瀬戸?」…(と本を手にして)「なんだこら。つまらねぇや!!」(ぽいっ)。
あーロシア文学が並んでるな。俺好きなんだよ、ロシア文学。なんたって第二外国語にロシア語取ってたからな。ロシア語とってるの5人しかいなくてそのうち2人が途中で脱落して3人になったんだけど、この二人が明らかに付き合ってていちゃいちゃしててでも付き合ってないよっていうフリをしていて…くやしかったなぁ。2人がいちゃいちゃするのを見るためにいるみたいで。

お、ウラジミール・ナボコフの「ロリータ」がある。いいよ、「ロリータ」は傑作だよ。大好きなんだよ。でもこれを言うと変な目で見られちゃうから言えないんだよ。
でもロシア文学の教授に「ロリータ」が好きなんです、と話したら、教授も「私も好きだ」って言ってたよ。でも教授もそれは表立っては言えないって言ってたからな。
ドストエフスキー…いいよね「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」、トルストイ戦争と平和」…読んだなー中学生の時に。長いんだやたらと。頑張って読んだけどなんにも覚えてない…覚えてるのは戦争と平和が出てきたな、ってことだけだ。
あとええと…ん?これはなんだ?知らない作家だな…ちょっと見てみよう…えらい古い本だな…読みにくい…ええと?なんだ?「私は伯爵である」それで?ああ、この伯爵の独白なのか…この人の名前は…キセト・シュトラビッチ(?だったか?)…ああ、キセト(黄瀬戸)…ん?なんだこれ?

…本に顔を近づけていると、「あーーーーーーー」といきなり激しいアクション。そして、どん!!とどこかへ落ちて、「うわっ、なんだここは!ささささむい!!」
やたらと寒がるさん助。
なんだここは?あ、城?馬車?馬車から降りて来たのは…あれは…ロシアの女の人だ!なんだこう…こういう服を着て…こういう…説明ができないけど…こういうかたいやつ…あーだめだ、説明できない。
それにしても寒い。だって俺、着物でロシアに来ちゃってるんだもん。寒いわけだよ。
え?神保町を歩いてるときは普段着じゃなかった?そんなこたぁどうでもいいんだよ。

さん助がぶつぶつ言ってると「あなたぁーどうしましたかーー」と話しかけてきた男。「あー私日本から来た噺家です」
「はなしかー?それはなんですか?」
「ええと…扇子と手ぬぐいを持って正座してこう…」と言って、お蕎麦を食べるしぐさ。
「…下手すぎるだろ!!」

その男に「私の主人はとても慈悲深い方です。どうぞ屋敷に。その格好じゃお寒いでしょう」と誘われてついていくさん助。
この屋敷の主に会いたいと言うさん助に、主人は病に伏していてあと何日もつかという状態なので会うことはできません、と男。
そこをなんとか…と頼み込むとそれならば…と伯爵のいる部屋に通される。
さん助が伯爵の姿を探すのだがいない…あれ?どちらにいらっしゃいますか?どちらですか?と探していると…後ろから伯爵が「ぐぁーーーーおーーーー」。(出た!)

「俺は吸血鬼なんだー。お前が来るのを待っていたーー。珍しい日本の血--血が吸いたいーーー」襲い掛かってくる伯爵。
さん助が「お前はだれだ?」と聞くと「私の名前はキセト・シュトラビッチだ」
え?聞いたことがある名前!あ、神保町で見ていた本の中に出ていた名前!本を開くと「それは俺の本だー」。
「え?そうなの?」「そうだーー」なんていうやりとりをしているうちに本を手にした二人が、あーーーーーーーーーー!

どん!!!と落ちたのが、もといた古本屋。
「暑いーーー暑いーーー」激しく暑がる伯爵。そんな伯爵を見て「よし!鎮痛剤(沈痛したらだめでしょ?!麻酔?)を打ってやろう」ともくろむさん助は「伯爵、これ…どうですか?日本のビールです!」
「おれはーーウォッカしか飲まないんだー」
「いやこれ…プレミアムモルツですから。文蔵の薄いビールじゃなくて神田のプロントで買って来たやつ…ハッピーアワーに…」(なんでハッピーアワー?!)
「そうかーー」と飲み始める伯爵。
最初はジョッキを持つしぐさだったけど「あ、プロントはこれだ」とグラスを持つしぐさに。「こういうところが芸の細かいところ」(わはははは!)「さ、もう一杯」渡されたビールを飲むと酔っ払ってきた伯爵。今だ!と伯爵に麻酔?を打つさん助。とたんに気を失う伯爵。

そして「あれ。あとお題はなんだっけ」と振り向いて「あ、東京タワー…。忘れてた!」(わははは!)。
「そうだ、この伯爵を東京タワーの蝋人形館に売りつけよう。本物の吸血鬼だから高く売れるぞ!」伯爵を背負って東京タワーへ向かうさん助。怪しいやつが来た!とすぐに警備員に囲まれる。「私はこの吸血鬼を蝋人形館に売りに来ました」とさん助が言うと、「蝋人形館は4年前に閉鎖されたよ」。
「えええ?」そしてサゲ…(サゲ忘れた…)。

 

あー面白かった。何がって、さん助師匠の大学時代が垣間見られたのが面白かったなぁ。なかなかそういう話をまくらとかでもしないから、ロシア語を専攻してたとかサークルとか神保町の古本屋巡りとか…。おしゃれなサークルで文芸部っていうのも笑ったなー。普通おしゃれなサークルで例をあげるならテニサーとかじゃないの?それが文芸部。ぶわはは。
黄瀬戸なんていう嫌がらせのようなお題。最初はほんのタイトルで見つけて「つまらないや!」って投げつけて(笑)、次は名前にしちゃったのも秀逸だったなー。

吸血鬼はロシアじゃなくてルーマニアだよね、とか、吸血鬼もパンダも「がーーーおーーー」なんすね?とか、がーおーーーやりながら話考えてますね?とか、ツッコミどころはいろいろあったけど、新作派じゃないさん助師匠がこういう試みをするの、とっても面白いなぁと思う。

 

さん助師匠「妾馬(通し)」
三題噺が終わるとほっとするんだろうけど、「妾馬」を通しでやっちゃうっていうのがすごいわ。
初めて見た時は獣のようだったさん助師匠の「妾馬」だけど、見るたびに変わっていってさん助師匠らしい世界になってきている。

最初は高貴な方だからというので直接お目にかかることなく一人次の間でお膳の支度がされる、というのも自然な気がするし、最初ははっつぁんがカチカチなのも自然。お酒を飲むうちにだんだん普段の地が出てくるのもいいな、と思う。

特に好きなのが三太夫とのやりとり。「大声を発しないように」とはっつぁんに言い続ける三太夫が、はっつぁんが「おふくろが赤ん坊に会いたがってた」「なんで妹とその赤ん坊に会うこともできないんだ」と涙ぐむと「声が小さいですぞ」。

今回はお殿様に気に入られて出世した、の後の部分も。母親と二人お屋敷に住むようになった二人。そろそろ長屋の連中に侍になった自分の姿を見せてきたい、と八五郎。大家さんが口をつぐんでいるものだから長屋では八五郎は夜逃げしたとか、妹を妾に売った、とか噂になってる。そこにはっつぁんがやってきて…というところから、馬に乗る場面まで。
ここまでやってタイトルの意味がわかるのだなー。

久しぶりに通しで聞けてうれしかった!