りつこの読書と落語メモ

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アサイラム・ピース

 

アサイラム・ピース (ちくま文庫)

アサイラム・ピース (ちくま文庫)

 

 ★★★★

城の地下牢に囚われた女、名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵、いつ終わるとも知れぬ裁判、頭の中の機械、精神療養所のテラスで人形劇じみた場面を演じる人々…。自身の入院体験にもとづく表題作をはじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた世界を先鋭的なスタイルで描き、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げた最初の傑作。 

 名前も顔も理由も知らないがこの世界のどこかにいて常に「私」を監視している敵。繰り返される孤独の叫びと無力感に読んでいる私も、体の力が抜けていくようになる。
閉じ込められたクリニックから抜け出せる日は来ないのか。中に入れられた者が異常で外にいる者は正しいのか。読んでいると分からなくなってくる。

作者はおそらくかなり病んでいる。
でもそういう自分を客観的に見る視点があり、またなによりも描写が美しい。
書くことで自分を追い詰めていた面もあるだろうが、それ以上に救いになっていたような気がする。