りつこの読書と落語メモ

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第五回 柳家さん助の楽屋半帖

9/23(月)、駒込落語会で行われた「第五回 柳家さん助の楽屋半帖」に行ってきた。

・さん助「富士詣り」
~仲入り~
・さん助「動物園」~「地獄演芸場」(三題噺「死ぬなら今」「温泉」「おはぎ」)
・さん助「宮戸川(通し)」


さん助師匠「富士詣り」
まくらなしで「富士詣り」。こちらの会では一席目にまくらがないことが多い。ドッポも昼八ツも立ったままの「挨拶」があるので、ちょっと新鮮。三題噺が控えているから緊張してるのかな。

歩けない疲れた休みたいと言われた先達さんがそういう時は「六根清浄」と歌えばいい、とやって見せるんだけど、それがすごい素っ頓狂でめちゃくちゃおかしい。
そう言われて「こうですか」とやって見せるのが「ろろろろろ…ろっこ…」って息が抜けてるのもおかしいんだけど、お手本の先達さんが素っ頓狂って。わははははは。

休憩しているとお天気が急に変わってきて、罪の告白のし合い。
邪淫戒を犯したというはっつぁんの告白がニヤニヤにやけてて嬉しそうなのが、気持ち悪いやらおかしいやら。
楽しかった!


さん助師匠「動物園」~「地獄演芸場」(三題噺「死ぬなら今」「温泉」「おはぎ」)
今まではお題を紙に書いて集めてそこからランダムに選んでいたんだけど、それだと題がかぶりがちなので、今回はお客さんを指して題をボードに書いてそこから選ぶ方式。いろいろ試行錯誤してるねぇー。
で、いきなり「死ぬなら今」というお題が出たんだけど、こういうセンス…素晴らしいなぁ。私はほんとにこういうのがダメで。ありきたりなつまらない題しか思い浮かばないんだよなぁ。
お題を決めたあとに、20分仲入りをはさんでその間に噺を考えるさん助師匠。これってすごい難易度が高いと思うんだけど…新作派でもないのにこのスタイルでやり続けているのが、エライというか男らしいというか無謀というか(笑)。

で、仲入りの後、固い表情で出て来たさん助師匠、高座に座るなり「あーーー、仕事クビになっちゃったよー」。おおっ、この間昼ハツ落語会で見た「動物園」だー!
園長がライオンの歩き方をレクチャーするところがなくて「まぁあなたやってごらんなさい」と言われて男がやるんだけど…相変わらず下手(笑)!いや…この間よりは幾分良くなってたけど、なんか変!それを見て園長が「どうしようもないほどヘタクソですな!」と言った後に「普通ここで中手が入ることもあるぐらいなのに昔から下手なんだよ!でもこれ地方でやるとウケるんだよ。だから地方ではやるけど都内でやると驚くほどスベるんだ!だから都内でやりたくないんだ!」。
ぶわはははは!!!おかしい!!
そしてサゲを言い終わったところで、「ではこの後お待ちかねの歌謡ショーです」。おお、三題噺に入った!

あーーもういやだ、〇〇温泉のホテルの仕事。歌謡ショーの前に落語なんて。誰も聞いちゃいないよ。だからやなんだよ。しかも地方だとウケるはずの「動物園」でスベるっていったいどうしてなんだよ。耳の肥えた客だったんだな。さては。草津温泉から来たのか。…って芸協じゃなきゃわからねぇよ!
あーーーやだやだ。温泉の仕事なんて。もうやりたくない。来年は絶対断ろう。あーー寄席でトリがとりてぇなぁ。そこでたっぷり1時間半ぐらいかけて「文七」やりてー。

ぶつぶつ言っているところへ「さん助師匠、お疲れさまでした」と主催者。「それでまた来年もお願いしたいんですが」「喜んでっ!!よろしくお願いいたします!」

あーーやりたくねぇって言ってたのに「喜んで」って言っちゃったよ、おれ。ほんとにもう。ま、でもありがたいからな。さ、温泉でも入ってくるか。それだけが楽しみだからな、ここの仕事の。

で、お風呂に入ってゆっくりしていると、石鹸で滑って「あーーーーー」。はっと目を覚ましたさん助。
「え?ここはどこ?」目の前にいる男が「ここは地獄の一丁目ですぞ」「え?地獄?ってことはあたし死んだんですか?」
「死んだっていうか…死にかけてるんですな」
「うわっ、そうなのか。っていうか、地獄?天国じゃなくて地獄?」
「地獄に決まってるでしょう。あなたが行くとしたら」
「…だろうな。あはははは。」
「で、どうします?」
「え?どうしよう。まぁもう俺なんか生きててもしょうがねぇからなぁ。…あーーーでもまだトリとってないし。文七やってないし。やっぱり死にたくないなぁ」
「そういうことでしたら地獄にも寄席はありますよ」
「え?あるんですか?」
「ええ、あります。地獄に落ちてからも落語は見たいっていう人は多いですから。日本人のDNAに組み込まれてるんですな。ちょっと見学してみますか。あ、それから、おはぎをどうぞ。」
「ありがとうございます。地獄にもおはぎあるんですね」
「ええ…。すっかり忘れてたので唐突に入れてみました」(わはははは!)

連れて行かれたのが地獄の寄席。その名も地獄演芸場。
地獄演芸場では客は針の筵に座った状態で落語を聴かなければならず、落語は15分におさめないといけなくて、さらに滑稽話しか、しちゃいけない。
「ええ?文七はできないんですか?」
「文七がかかるのは極楽の寄席です。あちらはお客さんも大変朗らかでよく笑うゲラのお客様。地獄の客はめったなことでは笑いません」
そしてこの寄席に出ていたのが〇志師匠。(物まねあり)
その後に出てきたのが先代の志ん五師匠。(物まねあり→にてなさ過ぎて誰にもわからない(笑))
「え?なんで志ん五師匠が?だってあの人はとってもいい人で悪いことなんかしてなさそうな…」
「そうなんですよ。本来は極楽と決まってたんですが、〇志師匠のお気に入りってことで呼ばれちゃったんです」
「そんなことがあるんですね…」
「で、今地獄演芸場で若手の噺家が不足しているんですね。それで〇志師匠も、若手が入ってきたらその人にトリをとらせると言ってます」
「え?そうなんですか。じゃ…死ぬなら今」

…おおおお!!すごくよくできてる噺じゃないか!!これって地獄八景さん助バージョン。
とっても面白かった。それもこれもお題がよかったからだよなぁ。何か私もお題で貢献したいけれど…どういうのがいいのか。うーむ。

 

さん助師匠「宮戸川(通し)」
いったん引っ込んでから(汗だく?!)、「まだ時間があるので」と「宮戸川」。
よく寄席で前半だけをかける人がたくさんいるけど、さん助師匠の場合多分通しだよね…。ぬおおお。これから宮戸川を通しで?この狭い空間で?ひぃーーー。と思っているとやはり通しなのだった。

普通の噺家さんとさん助師匠が違うのは、宮戸川の前半がほとんど笑えない(笑)。後半のための前振り的な感じ?なのかな。だったらいっそ淡々とあらすじだけ…でもいいような気が…?でも確かに通しでやることを考えると前半をユーモアたっぷりにやってしまうとギャップがありすぎてしまうから、難しいところなのかも。

後半、ならず者二人が現れるところ。声が大きくて御しがたい暴力性が垣間見えて迫力がある。
遅れてやってきた定吉がおかみさんを呼んでいると現れるのがおこもさん。ならず者がおかみさんをかどわかしていった、という言葉に「なんで助けてくれなかった?」と定吉が言うと「この通り腰が立たない」。

1年後、半七が船に乗ると、そこに「俺も乗せてくれ」と無理やり乗り込んできた男。
若旦那に酒をすすめられ「もてるでしょう?」みたいなことを言われて自慢話…。
ここでこの男がお花を船頭と二人でかどわかしたこと、それからお花の実家の船宿に昔勤めていたことが明かされる。お花に名前を呼ばれ、けたけた笑われたので、かっとなって殺してしまった、と。
この男、自慢話としていい気になってしたわけではなく、それ以来頭にこびりついて離れないこの出来事を話すことで自分の内から出そうとしたのかもしれない、と思った。

あーーーいやな話。でも前半より後半の方がずっとさん助師匠には合ってる、というのが面白いな。