りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

トリニティ

 

トリニティ

トリニティ

 

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「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたら――。どんなに強欲と謗られようと、三つとも手に入れたかった――。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? かつてなく深くまで抉り出す、現代日本の半世紀を生き抜いた女たちの欲望と祈りの行方。平成掉尾を飾る傑作! 

年代的にここに描かれる女性はちょうど私の親ぐらいの世代にあたるのか。
女が仕事をしようと思ったら他のことは犠牲にしなければならなかった時代。事務職は「腰掛け」で「寿退社」が花道。
あさま山荘事件学生運動、三島の切腹、平成になってバブルがあって阪神大震災があって…。時代の流れとともにそれぞれの道を歩く女たち。

全てを手に入れようとした妙子が自分は何も手に入れられなかったと酒に溺れていくのが辛いが、最終的に息子が分かってくれていたことが救いだ。
悲惨な末路にしか見えなかった登紀子もきっと奈帆に救われたのだと思う。

長いこと生きていけばある時点から下降線をたどることは避けがたいことで、特に妙子や登紀子のように仕事に全てを掛けて走り続けていると、いつからか若い人たちに煙たがられ追い抜かれていくことは致し方のないところでもある。
それでもある時代を作ったことは間違いないし、全てが切り捨てるべきものではない。若い人たちがそこから学ぶことはたくさんある。

自信を失い道を失っていた奈帆が登紀子から話しを聞きそれを原稿にまとめ登紀子に添削してもらったことでライターとしての一歩を踏み出すことになる。
次世代に繋いでいくことって大事なんだな。

面白かった。