りつこの読書と落語メモ

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外は夏

 

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

 

★★★★★

汚れた壁紙を張り替えよう、と妻が深夜に言う。幼い息子を事故で亡くして以来、凍りついたままだった二人の時間が、かすかに動き出す(「立冬」)。いつのまにか失われた恋人への思い、愛犬との別れ、消えゆく千の言語を収めた奇妙な博物館など、韓国文学のトップランナーが描く、悲しみと喪失の七つの光景。韓国「李箱文学賞」「若い作家賞」受賞作を収録。 

喪失感や身の置き場のなさが身につまされる物語たち。
ずっと続くと思った幸せな日常が壊れた時、いったいどうやって立ち直って行けばいいのだろう。受け止めて、いつの日か人のことも自分のことも赦して、いつかは忘れることができるのだろうか。

「ノ・チャンソンとエヴァン」
お金も愛情もほんのわずかしか与えられていない少年が棄てられた犬を拾い、初めて心を通わせる喜びを知るが、犬が衰えていき…。
目を背けたくなるようなしんどい物語で涙が出た。彼が成長すること、生き延びることだけにわずかばかりの希望を感じる。

安易に結論を出したり救いを与えたりはしないけれど、生きていくことにほんのわずかの光を映し出す。素晴らしい短編集だった。