りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場8月下席夜の部(3日目)

8/23(金)、鈴本演芸場8月下席夜の部(3日目)に行ってきた。

・琴調「浅妻船」
・扇辰「一眼国」
・扇遊「夢の酒」
・さん助「もう半分」


扇遊師匠「夢の酒」
奥さんがどんどんカリカリしてきているのに気づかずに、「女中があなたが常日頃から恋焦がれている若旦那と言った」とか「びっくりするようないい女」とか鼻の下を伸ばして話す若旦那の能天気ぶりがとっても素敵。
「怒らない?じゃ話すけどさ」ってもう奥さん怒ってますから(笑)。
そして騒ぎを聞いて止めに入った大旦那。
「なんだ、夢の話か。お花、夢なんだから許してあげなよ」と言うと、お花が「私はやきもちを焼いているわけじゃないんです。若旦那は普段からそういことが起こればいいなと思ってるからそういう夢を見るんです。きっとその女には亭主がいるんです。それで亭主が出てきて…なんてことになったらお店の暖簾に傷がつきます」
それを聞いた大旦那が「…はい。」っていうのが、間といい言い方といい、たまらなくおかしくて大笑い。
夢を見てその女の家にあげてもらった大旦那が、お酒が飲みたくて飲みたくてお燗がつくのが待ちきれなくて何度も「まだですか」と尋ねるおかしさ。
それだけにサゲの言葉に実感がこもっていて大笑い。
陽気で楽しい「夢の酒」、よかったーー。


さん助師匠「もう半分」
せっかくの夏なんで怖い話をします、とさん助師匠。
昔の映画で見たんですが、ある家に強盗が入り強盗は夫婦を縛り上げ、その二人の前に狂犬病にかかった犬をつないだ。縄の上にはギロチンがあり、そのギロチンは縄で上げられていてその近くに蝋燭。
蝋燭の炎が縄に移ったら縄が焼けてギロチンが落ちてきて犬をつないでいる鎖の上に落ちる。それで鎖が切れれば獰猛な犬が夫婦に襲い掛かる、というわけ。
いやこの話のオチが最高におかしくて最高にかわいい。
以前、南なん師匠で聞いたことがあったけど、とってもチャーミングな小噺だなぁ。笑った笑った。

これでどかん!と笑わせたあとに、なんと「もう半分」。
「もう半分」と言って飲み続けるおじいさん。
痩せこけて身なりも汚くてどこか不気味だけれど相当な酒好きでご機嫌で飲んでいる。
まわりの客に「私のようなむさい爺が飲んでいると嫌でしょうが」と愛想を振りまき「そもそもむさいという言葉はどこから来てるかというと」とあれこれ蘊蓄のようなでたらめを言うのがおかしい。
芋の煮っころがしをおじいさんが食べるシーンもなんともいえず汚いような不気味なようなユーモラスなような…。

おじいさんが帰ってようやく店じまいをしようとしておじいさんの残した風呂敷包に気が付く亭主。中に五十両入っているとわかったとたん、女房はなんのためらいもなく「この金はもらっちまおう」と言い出す。
亭主の方は「お前何を言い出すんだ」「あんなみすぼらしい爺さんが持ってる金だ。理由のある金に違いない」「じいさんがかわいそうだ」と言うのだけれど、女房は「何を言ってるんだ。世の中はどうせ誰かがかわいそうな目にあうんだ」と動じない。この女房の理屈…こういう風に考える人は今もいるし自分だってそうならないとも限らないと思うとたまらなく怖い。
最初は返さないとだめだと言っていた亭主も女房に押し切られ、やってきたおじいさんに「今日はもう帰ってくれ」と繰り返す。

おじいさんが死んでからの展開は、噺を知っていてもどんどん引き込まれていって、会場中がしーん…。会場の空気が変わっていることを肌で感じてぞくぞくした。

堂々とした高座にびっくり。
さん助師匠がトリで怪談をやるとは思わなんだ。
あーでもこれには「西海屋騒動」が生かされているんだな、と思った。
あんなどうしようもない噺だけど(←ひどい言いよう)あれで陰惨な場面を幾度となくやっているから、大きな声を出さなくても十分に怖い「もう半分」になったのかも。
いやーすごかった。もうほんとに今席のさん助師匠からは何が飛び出すかわからない。
楽しみ!